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小高い山の上に登ると突然視界が開けて、森の奥の方にやっとそれらしき
ものを発見した。
いつか訪れてみたいと思っていたこの地。
森の中の空間にはどこかから運ばれたと思われる大小様々な石がたくさん
置かれていた。
それらはある規則性があるかのようにきれいに円形に配列されていた。
「ストーンサークル」
世界のあちこちに残されているというその史跡はここ北海道の地にも
いくつか存在する。
これは縄文時代後期、今から約3500年程前に北海道に生活していた
北方系縄文人によって作られたもの。
3500年前・・・。
それはどれほど以前のことなのか。
わずか数十年という時間しか与えられていない私達の生命からは想像しがたい
時の流れである。
今回訪れたストーンサークルは、かつてはなんらかの儀式や祭り跡という説も
あったというが、その後の調査によって人骨、土器片、飾玉、弓などが出土し、
現在は先住民の墓であると結論付けられている。
以前、別な土地で見たストーンサークルはこれほどまでにきれいな配列は
していなかったが、このストーンサークルは本当にきれいに円形状に配石され、
美しい状態で残されている。
辺りには直径5m程のサークルがいくつも点在していた。
岩の半分は地面に埋められ、地上に露出した部分は苔むしていて長い長い時の流れ
を感じさせるものだった。
深い山の中でどこか場違いなこのサークルは、ある意味この土地で初めて人間に
よって造られた人工物といってもよいだろう。しかしそれは気の遠くなるような長い
歳月の中で完全に自然の一部と化し、今も静かにそこに眠っっている。
夕刻、初秋を迎えた冷たい空気の中で僕は太陽が沈むまでここで過ごしていた。
森の中は徐々に光を失い、鳥や虫たちの声も止んで辺りが静まり始めた。
そろそろ山を下りようと腰を下ろして荷物をパッキングしていると、
驚いたことにサークルの岩の一部が赤く輝き始めていた。
太陽が水平線に沈む直前、木々の間から差し込んだ真っ赤な夕日がストーン
サークルを照らしていたのだった。
それは本当に美しい光景だったが、わずか一瞬の出来事だった。
夢中でシャッターを切った。
まるで古代の先人が再び息を吹き返し、皆で円を描いて座っているように見えた
のだ。
その後、急速に森が闇に包まれてゆく情景が、たった今見たストーンサークルの姿を
一層強烈な印象として僕に与えていた。
輝いた瞬間、なにか不思議な”力”といえば大げさだろうか・・・、でも自分自身
が不思議な心境に包まれたのは確かだった。
北海道の自然、動物達、人々。
太古から存在し続ける「生命の繋がり」には無数の不思議さ、美しさが隠されている。
ぼくはこれからもこの地に生きる生命を、そして時を超えて様々な生命の足跡を辿って
いきたいと考えている。