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2015/07/23

地球の舳先から vol.360
屋久島編 vol.3

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避けて通れない話。
今回の屋久島旅は、最初から雲行きが怪しかった。
文字通り、「雲行き」が。

最初に心配したのは台風である。
屋久島在住日高さんのコラムから、屋久島における「台風」が
我々の知っている「台風」とは別物なことは予習済。
例年よりはるかに早く台風の影が見え始めたが、持ちそうだった。
それを確認して、わたしは安心しきっていたのだ。

6時40分発のJALからまず鹿児島空港行き便の条件付運航の知らせが来る。
チェックイン時に再度、「悪天候時は羽田に引き返しもしくは福岡空港へ
行きます。いいですか」と迫られる。
全然よくないが、いいですと答えないと乗せてもらえないから仕方ない。
無事に経由地の鹿児島空港から屋久島までのフライトも飛んだのだが、
どうやら運が良かっただけらしい。

屋久島空港は着陸がレーダーではなくパイロットの目視らしく(驚愕)
滑走路も短いため、厚めの雲ですぐに着陸不能になるのだそうだ。
この日も、鹿児島から1日に5便飛ぶうち、3便が欠航。
福岡からの便は、屋久島上空で随分待機した後、断念して引き返した。
そしてわたしが大会で嵐の中泳いでいた日は5便中4便が欠航し、
最後の1便も偶然15分ほど雲のどいた時、瞬間着陸したらしい。

空港では、慣れきったグランドスタッフがプリントを手渡してくる。
そこには、鹿児島へ行く船便のタイムスケジュールと翌日の残席数、
鹿児島港から空港までのリムジンバスのスケジュール、
鹿児島空港からのJALの各地への乗り継ぎのタイムスケジュール
といった、必要な情報がびっしりと一覧になっていた。

貧乏人のわたしがもっていたのは、自己都合での変更ができない格安チケット。
「天候調査」と条件付きになった瞬間からしか変更が出来ないので
帰る日はなんにせよ1便の進捗を待つしかなさそうだった。
お金持ちの正規チケットを持った人たちは、翌日の観光を早々に諦め
1便目に変更をしておいて、順次、飛ぶものに乗るという。

ちなみに屋久島では、何便がただいま欠航になりました、とか、
港のコンディションが悪く●●港に変更になりました、とかが
島内放送でスピーカーから流れてくる。びっくりした。小学校みたい。

そしてみんな、いらいらしない。なるようにしかならないことを
身をもって知っているからだろう。

そして2日後の帰り便。
着陸より離陸の方がハードルが低いと踏んでいたのだが、そもそも鹿児島から来る機体で飛ぶ折り返し便なので、着陸してくれないことには乗る飛行機が無いという仕組み。
出発の1時間前から空港へ行き、空の雲と風を見上げていた。
欠航したらすぐに船便に切り替え、港ゆきの極少本数のバスに乗る必要がある。
朝からの土砂降りが、雨レベルの降り方になる。
雲は厚いが、流れも速い。すこし明るくなったのを見て、荷物を預ける。
保安検査場の先では、同じく乗客たちがガラス窓の外を見つめていた。

そのとき。パッと見たこともない光が刺した。
それが太陽だということが一瞬わからないくらい、この数日、太陽を見ていなかった。
視線の先の光景に、「うわぁ…」思わず声がもれたのは、わたしだけではなかった。
何ともドラマチックに、舞台の幕が上がるように左右にはけた雲間から
JACの機体が滑走路目がけて突っ込んでくる、その姿があった。
そこかしこで、小さな歓声と拍手があがる。

誰の晴れ女(男)力を借りたのか、自分の運を使い果たしたのかわからない。
握りしめていた、雨に濡れた船便のプリントを捨てた。
搭乗ゲートの隣には、天気を待つ旅人たちのためだろうか、
かごに入ったおせんべいが、たくさん置いてあった。

最後に、屋久島に梅雨時期へ行く人へ。
あちらの「梅雨」はしとしと雨とは無縁。
傘など役に立たないので、ごみ袋に穴をあけて頭からかぶるとよい。
わたしも、来年はそうする。

2015/07/23 07:40 | yuu | No Comments