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地球の舳先から vol.359
屋久島編 vol.2
ひと月に35日雨が降る、といわれる屋久島。
噴火の花崗岩でできた島には土が少なく、岩や木に生えた苔のうえに草木が生まれる。
木というのは大地の中に深く根を張るものだという先入観からしたら、苔の上に木が生えるなんて、信じられない話。信じられない話が、目の前に転がっている。
だから屋久島の森は、地面まで、茶色じゃなくて緑なんだ。
湿度と霧がつくる雲の中のような森は、雨だからトレッキングをやめようかなと言ったわたしに「水が無いと、あまり綺麗じゃないというか、屋久島らしい景色じゃない」とホテルの人が言っていた通りの幻想的な光景。
ピーカンのお天気では、苔も閉じてカラカラに乾いてしまうらしい。
その苔は、600種類はあるという。
15時間もかかる登山だという縄文杉は諦め、やってきたのは「ヤクスギランド」。
名前は子どもだましのようだが、美しい屋久島の自然が体感できる場所で
高齢者でも少しだけ歩ける短い舗装コースから、登山道の山道まで
所要時間とレベル別にわかれ、非常によく練られていた。
15分程度で最短コースを案内するガイドさんの甲高い声が響く。
山に入るバスガイド。なんてワイルドなんだろう。
木のたくましさといったら、意志を持ったバケモノのようだった。
横向きに10メートル以上、大木の幹をのばしていくもの。
昔、岩をまるっと幹で包んで成長したらしい、中に空洞をもつもの。
大木の途中に苔が生え、そこから別の木が生まれたりする。
同じ種であれば、同化して1本になることすらあるそうだ。
大木の幹にからみつきながら地面に下に向かって根を伸ばしている木。
「なかなか着かないなー、って、思ってるでしょうねー」
手練のガイドさんが、のんびりと言う。
お願いして本当に正解。知らないことだらけだった。
ちなみに、屋久杉とは、樹齢1000年以上のものだけをいうらしい。
じゃ、それ以下は? と聞くと、返ってきた答えは「小杉」。
999年生きても、小杉。なぜかイラッとする。失礼じゃないか。
「東京の杉も500年くらい生きますよー」
そうか、勝手に切るのは人間で、本来の木の一生からいったら、それが妥当なネーミングなのかもしれなかった。
レインコートで視界をふさぐよりも、透明なビニール傘が重宝した。
畳めば急勾配で簡易ストック代わりになる。
土が少ないので、大雨でもグチャグチャのぬかるみなどはほとんどなく
木よりも岩の方が滑らないから、できるだけ岩の上を歩くように言われる。
苔を踏むなといわれるが、やつらの増殖スピードが速すぎて、それは無理な話。
標高1000mくらいのところにあるのだが、車道ではシカ、サルにも会った。
道路を飛び出してくるヤクシカはよく見る鹿よりひとまわり小さく、
おしりが白いハートの形。かわいい。でもあぶない。
当て逃げされることもあるらしい。「軽とかだとねー」凹むのか。
ヤクサルに至っては、団体家族で道の真ん中で毛づくろい。
クラクションを鳴らしても、「あぁ~ん?」みたいな感じで振り向くが
どく気はゼロ。クラクション、あぁ~ん?、クラクション、あぁ~ん?
どいたと思ったら前方から車が来て、バックで広いところまで戻る。
いろいろな意味で、なかなか前に進まない。
外周100キロある、離島としては大きな島だけれども、
島のほとんどが国有林で、人が住むところがあまりないのだそう。
岩の島は大雨が山に溜まらず、ガンガン流れていく。川へ。
そして、わたしの泳いだ海へ…
そういえば今年のOWS大会のキャッチコピーは
「神様の住む森から流れてきた水は、ウミガメと私が泳ぐ海になりました」。
最初、このコピーの意味が分からなかったけど。
自然はぜんぶ、つながってるんだなあ。