« ひと段落 | Home | □佐藤達郎/Scene;2 »
南東アラスカのジュノーに降り立つ。
ジュノーはアラスカの州都であるが、人口はわずかに約3万人ほどで、
アラスカ本土の南端に位置しながらも市外へ通ずる道路や鉄道はない。
ここも水路と空路が重要な役割を担っている。
また、この辺りの海もほかの南東アラスカの地域と同様、周囲には大小
たくさんの島々が浮かんでいて、どの島も海岸線ぎりぎりまで森林が
迫り、複雑なフィヨルド地形となっていた。
町から遠く離れた海に浮かぶ島々はどれも無人島であったが、時折
島の森の中にポツンと小さなログハウスや人間の生活の痕跡を見る
ことがあった。
現在でもこうして時代に逆行するように、人目を避けるようにひっそり
と暮らしている人達がいると思うとなんだか不思議に思えた。
彼らは一体どのような生活を送っているのだろうか・・・。
船の上からの眺めは目に映るものすべてが新しくて興味の尽きること
がなかった。
ジュノーでは朝から晩まで小さなボートに乗って鯨の姿を求めた。
これまでカナダからアラスカへ向かう船の上で本当にたくさんのクジラ
の姿を見てきたのだが、やはり近距離での撮影は小さなボートに勝る
ものはない。
今回の旅では南東アラスカの中でも「クジラのメッカ」と言われる
ジュノーで撮影をすることをあらかじめ決めていた。
春を迎えた今、少しずつ南からザトウクジラがこの地へ戻ってきている。
様々な期待と不安を胸にボートに乗り込んだ。
海へ出て1時間ほど経った頃、島の沿岸で高々と吹き上がるクジラの
ブローが見えた。
初めてアラスカの海で聞くクジラの呼吸音、浮上のたびに見える彼らの
大きな背中・・・。
落ち着いてファインダーを覗きつつも、ココロの中では沸々と嬉しさと
感動が込み上げてきた。
その後は幾つかのクジラの姿を見つけるも撮影には及ばず、ボートは
ただひたすら寒風を切りながら次から次へと撮影を可能にしてくれる
クジラを求めて走り続けた。
そして、やっと夕日が傾きかけた午後7時、観察していた一頭のザトウ
クジラが突如として何度も宙へ舞い上がり、遂に彼らの全身を間近で
見ることができた。
彼らの巨体もさることながら、落下した時の水面の爆発は想像以上の
ものだった。
地元北海道でこれまで何度も鯨類の撮影を行ってきたが、アラスカの
ザトウクジラはやはり格別なもの。
またいつかこの地に戻ってきてじっくりと向き合ってみたい・・・。
アラスカのクジラはそんな思いを大きく抱かせてくれるものだった。
アラスカの大いなる自然に出会えたことに感謝したい。