« ほんらいのすがたでないとくるしい ~ 笹井宏之歌集『てんとろり』を読む | Home | 【FAQ】はじめてのかたへ »
平成23年度は入館者が16万人に達しなかったら、男は全員坊主にする、という約束を作って、公表もしている。http://www.city.gamagori.lg.jp/site/takesui/kouyaku.html
今まで数字に心底関心のなかった職員たちに危機感を持たせるためと、オモシロそうだったから、という理由。みんなやっぱり、ボーズにはなりたくないのか心のどこかで以前よりも入館者を意識して、お客さんに心を持って接するようになったし、来てくれる人、応援してくれる人に前よりも感謝の気持ちを持つようになった。
新しく作った深海の生き物のタッチングプール(夏場は身近な磯の生き物に変更します、早く来てね!)と、深海激レア生物20連発水槽も大当たりして、タレント付きでテレビ取材が来たり、ラジオに出たりで、努力が実のっていい結果を出している!
16万という数字を出した時、周りの職員は15万でもいいのではないか、間をとって15万5千でも…といったが、なんとなく全力で設計した新水槽に自信があったし、オレたちはこんなもんじゃない、という感じもしたし、市民の人口が8万人だからその倍、ということもあり、強引に16万人を掲げた。
まぁ坊主になってもそれはそれで楽しそうじゃない、ボーズ水族館、ボーズアシカショー。。。お寺が経営しているのか、みんな甲子園を目指しているのか、みたいな。
16万人という数は全国の水族館からしたら少ないほう。沖縄の水族館とかはケタはずれの入館者だし、大阪とか、大きな水族館はスゴイ数の入館者だ。でもウチくらいの規模と貧乏さの水族館からしたら16万というのは目指すべき数字。しかし、通過点にすぎない目標。
ウチの水族館は小さくて、昔はホント、ナァナァのやる気のないお役所体質の水族館だった。入館者が少なくても、たいした仕事をしなくても、年度末には「みんな今年もよくがんばった、つぶれずに済んだ」というような誉め言葉をいただいて、安堵していた。それにボクは入った当初から疑問を持っていた。なんで「全員ダメダメだ!男を見せろ!キサマらのやる気はそんなもんか!クビにするぞ!!」と上の人は一喝しないのか、オレなら全員ブン殴るけどなぁ、と思っていた。
少しづつ反抗し、下克上して、時に嫌われ時にバカにされ、村八分にされつつも、変えなきゃいけないと思いながら、やっと最近流れを変えることができてきた。
いろいろな水族館に遊びに行くと、大きな水族館は立派だしスゴイ魚や生き物が泳いでいる。それを見ていつも正直、かなり悔しくてムカついていた。勢いあまって悔しすぎて泣きながら見て回った水族館もある。そんな思いをした後に翌日、出勤して自分の水族館を見渡すと「ウチはなにをやっているんだ、いっそ潰れて日本の水族館界にお詫びしたほうがいいのでは…」と思い、落胆することが多々あった。
でもその時いつも、尊敬する人たちや応援してくれる人や周りの人が、助けてくれて、もっと頑張らなきゃ、もっとやればできるはずだ、もっとお客さんを納得させることができるはずだ!努力がたりないだけだ!という気持ちにしてくれた。なりたくてなった職業・天職、あきらめずに納得がいくまでやらにゃいかん!
逆に、大きな水族館に入ったら、こんな気持ちにはならなかっただろうし、こんな努力も少なかったと思う。生き物のそばで平和にその他大勢の普通の飼育員として時々頑張る程度でやっていたのではないかと思う。だから、今の水族館に入れて頑張れる環境に置かれてよかったなぁと思う。ほぼマイナスからの出発なので、どれだけでもプラスにできる。
地方の小さな貧弱水族館でも、やればできるんだ!というところを見せたい。常識を覆して、大きな水族館をアタフタさせたい。全国の小さな水族館が勢いづいて業界をかき回すようなことが起きるといいなぁと思う。
誰だってはじめはみんなゼロで、そこからどれだけ成長できるか、立派になって人を幸せにできるか、笑顔にさせれるか、で価値が決まる。そのためには強い志を持って純粋に努力することが第一歩で、必須だと思う。誰だってやればできるのだ。真剣にやるかやらないかの差でしょ。
問題やカベをどんどん乗り越えて、力をつけて大きな仕事にみんなで挑戦して、もっともっとみんなを幸せにできる水族館を作っていきたい。
だから残念ながら我々の坊主姿は見れません。