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2015/02/19

僕が出演・現場での演奏指導などで撮影に関わった映画「マエストロ!」が絶賛公開中ですが、皆さまご覧頂けましたか?まだの方、この作品はDVDやBR-Dではなく、音響の良い劇場へぜひ足をお運びください。音が違います。

さて、この映画について、やはり出演した者としてはご覧になった方の感想が気になるところ。幸い、小林監督がTwitterでお客様の感想をRTして下さっているのでこちらも労せずチェック出来ているのですが、ここで気になったのがオーケストラの名前を間違えている人が多いこと。

というのは、この映画、最後に劇中のオーケストラが演奏する場面があるのですが、さすがに多くの俳優さんを入れた状態で観客を納得させるような凄い演奏をするのは難しいですから、実際には佐渡裕さんが指揮をしたベルリン・ドイツ交響楽団の音に合わせて僕らが当て振り(弾きマネ)をしていました。この実際に演奏しているオーケストラ名を「ベルリン・フィル」と間違えている人がかなりいらっしゃったのです。

確かに、日本のプレイヤーでもよく分かってない人が居ますし、佐渡裕さんはベルリンフィルを指揮したときに日本中で話題になりましたから、「佐渡裕=ベルリンフィル」と勘違いする人が多いのは仕方ないのかもしれません。ただ、これは野球で例えるなら、「関西」という括りで阪神とオリックスを一緒にしているような、そんな違和感を禁じ得ません。

ちょっとここで、間違えやすいオーケストラの名前についてお話してみたいと思います。

実は、ベルリンには「ベルリン」と名の付くオーケストラがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、ベルリン=ドイツ交響楽団、ベルリン交響楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、シュターツカペレ・ベルリン、さらにベルリン室内管弦楽団、ベルリン古楽アカデミーと9つもあります。他にもあったかもしれませんが記憶が曖昧です・・・・。

どれもフルネームで呼ぶと長いので、例えばベルリンフィルはBPO(Berliner Philharmoniker)、ベルリン・ドイツ交響楽団はDSO(Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)、ベルリン放送響はRSB(Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin)といった略称で呼ばれることもあります。今回の映画で演奏しているのはDSO、つまりベルリン・ドイツ交響楽団。インターネットで見ていると、このベルリン・ドイツ響とベルリンフィル、ベルリン交響楽団の3団体を取り違えている人が多かったように思います。今回映画で演奏しているベルリン・ドイツ交響楽団にはコントラバス奏者の知人がおり、何度もチケットを戴いて演奏会に行きましたが、オーケストラはベルリンフィルにも引けを取らない素晴らしい音をしていますし、僕が大好きなオーケストラの一つです。

日本でも、東京には「東京」の名を冠するプロのオーケストラがいくつか混在しています。東京都交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と「東京」の名を冠する団体が4つ。こちらも都響、東響、東フィル、シティといった略称で呼ばれています。あまりクラシックに詳しくない人はどれがなんだか分かりにくいでしょうし、正直僕も音大に居た頃はドイツのオーケストラにしか興味がなかったので、東京にこんなにオーケストラが存在する事も知りませんでした。

実際にいろんなオーケストラに客演するようになり、それぞれ全く別の特色を持った素晴らしい楽団だという事が分かってきましたが、最初は留学から帰国してお仕事の依頼を頂くようになって「え、今度行くのはこの前の《東京》のオケとは違うの?」と混乱したものです。無知とは恐ろしいですね。

クラシックに興味のない方々も、まずは映画「マエストロ!」でオーケストラの雰囲気を知って頂いて、その上で日本のどの楽団がどのような特色を持っているのか、そんな事も考えながらいろんなオーケストラの演奏会に足を運んで頂けると嬉しいですし、クラシックに少しでも興味を持っていただけたなら幸せです。

2015/02/19 10:02 | sumi | No Comments