« 童謡もいいもんだ | Home | 第28回バーチャル座談会『新春放談、行く年来る年2014/2015』(その9=最終編) »
こんにちは。根本齒科室の根本です。
本年もよろしくお願いいたします。
ではさっそく 駆け込み 前々回の続きです。
NHKのような宙ぶらりん、道路交通法のようなグレーゾーン、いろいろ判然としないことが国内には色々あるというお話でした。
医科と違い、歯科の法的規制はあいまいな部分があることも話しました。
それらがよい状態だとは思いません。NHKの放送法とワン!セグは特にいけないということも強調しました。
ではどうするか。
◆ 悪い?!改善策 その1
日本の歯医者の大方を押さえつけようと思ったら割合簡単かもしれません。
「悪法も法」
消費税増税法とか、少年法とか、禁酒法とか、憲法前文とか9条2項とか96条とか、健康増進法とか、裁判員制度とか、(人によっては)郵政民営化法とか、大麻取締法とか、入管特例法とか、医師法19条とか、つぶしましたが人権擁護法案とかetc
本来「悪法」なのであれば、改正法案を出すか、凍結・廃止法案を出すか、というのがスジというものです。
しかし、悪徳政治家は自らの権益保護のために悪法こそ厳格に、いや、恣意的に運用するものです。
あと、歯なんかもそうですが、医療系は特にたたきやすい分野です。
医療費削減の「錦の御旗」の下なら、ほとんど何をやっても許されるでしょう。
何か言われたら
「『国()』の借金ガー」
「国債暴落ガー」
「通貨の信任ガー」
「財政の規律ガー」
とかバカの1つ覚えのように言っておけばマスゴミ対策も財務省対策も万全ですし、懲罰的税務調査の心配も無用です。情弱どももご満悦()でしょう。
で、どうするか・・
車の青切符のように、「歯科反則通告制度()」を作るのですwww
公安委員会のような「行政処分委員会」を設置し、支部を各地方厚生局の下にでも設置して、「反則行為」をきっちり決めてしまいます。
監督官庁は保健所系統になると思います。医院の許認可を持っているからです。
で、上記の「反則行為」の取り締まりを厳密に運用するだけでいいのです。
たとえば違反点数が6点を超えた医院は営業停止半年で、講習で5ヶ月半短縮wwwとか、車のような感じで決めておきます。。
報告は一定期間内における一定数の患者通報(密告)が一番効率が良いと思います。
しかし「患者通報に信憑性はあるのか」という当然の疑問があります。
ひとつの策として、ここは二段階でいきます。
例ですが、まず通報が2件あったら「警告」とします。
警告では反則認定はしませんが、半年間くらいの効力を持たせてみます。
あくまでも法ではなく行政処分、いわば青キップなので、丸め込むことは可能でしょう。
たとえば現状、地方厚生局の「個別指導」でもそれなりの数が患者通報です。
個別指導とは、保険点数の算定における不正や疑義があるものに対して、患者通報や高平均点数があった場合に行なわれる、非常に厳しい調査で、現に行なわれています。高点数の場合は、まず「集団的個別指導(集個)」という大部屋に呼び出しての警告(免停短縮講習のような形式)が行なわれます。その翌年に平均点が上位8%に入ると、「個別指導」に移行します。
ここでは歯科での通報はありませんが、他科での通報事例が2件ほどあります。もちろん私たち開業医側からすればこんなことはして欲しくないに決まっていますが、何らかの奨励策をとれば、通報件数は飛躍的に上がるでしょう。
患者通報は、現在も行なわれている個別指導や監査を考えても、信憑性・正当性は十分担保されていると考えられます。そう考えると、患者通報で十分だというロジックは結構固いと思います。(もちろんヤラセ・スパイ行為などのような事例が発覚した場合は反則金と点数の返還を行ないます)
また、「個別指導」「監査」は、あくまで保険診療上の問題についての取り締まりであり、自由診療は関係ない話になってきます。
しかし「歯科反則通告制度()」は、保険・保険外関係なく、すべての歯科医療機関に適応になります。矯正専門医やインプラントセンターも例外ではありません。ですから、定期立ち入り検査や開設管理を統括している、保健所の系統が取り扱うのが妥当かと思います。
通報の際は、住所氏名、反則年月日・時間(午前か午後か程度でOK)、反則内容を申告します。もちろん住所氏名は個人情報保護法に基づき適切に対処します。
例まず通報が2件あった時点で「警告」とし、半年間くらいの効力を持たせてみます。
警告から半年以内に通報が2件あったら「反則行為」と認定し、「青キップ」を切ってしまいます。
反則行為はあらかじめ
例)助手・衛生士のレントゲン 3点
助手の本印象(型取り) 2点
・・・
のように青キップのようにきっちり「行政処分委員会」で決めておきます。
反則金の目安は1点10万位とかにします。
政府やメディアも積極的に「反則歯科医院の取り締まり」キャンペーンを行い、
通報(密告)の奨励による『歯科治療の質の確保()』を繰り返し訴えます。
これ(歯科治療の質の確保)に反対する国民は、多分いないでしょう。
5年後くらいには、歯医者の3割くらいは消滅してると思います。
そして、歯科業界も体力のある大手チェーン店とか、特区バカの企業資本で占有されてしまうでしょう。
反則行為の取り締まりに名を借りた、立派な医療費削減策でした?!
(ちょっと詰めが甘いか)
もちろん個人的には、今の法規を規制緩和、権限拡大の方向に改正して、助手でも型や仮歯・仮詰め、レントゲンのスイッチができて、衛生士でも浸潤麻酔できるようにすべきという意見ですので、このような悪法を厳格化するような時代の逆行には断固反対です。
◆ おそろしい「個別指導」「監査」の復習 ⇒おさらいはこちらをClick
保険点数のレセプトは、全国的にたぶん1枚の平均が1500点弱前後だと思います。
(「レセプト」「1枚」の単語の意味を説明すると長くなるので省略)
つまり、平均してひとりの患者さんに一月あたり1300~1400点、3割負担で4000円程度の治療が多いということです。
①集個(集団的個別指導)
現在、平均点が上位5~8パーセント(茨城県)の医院は、集団的個別指導(集個)という、免停短縮講習のような指導があります。これは大部屋に呼ばれて「平均点を下げて下さい」といわれるだけなのですが、、、
②個別(個別指導)
それでも集個の翌年に平均点が下がらないと、今度は個別指導という個人での呼び出しを食らいます。個別指導は平均点上位~4パーセント(茨城県)となっています。
これは例えると、警察や検察に出頭して、取調室で厳しく追及される感じです。
個別指導の場合は、3日前とか1週間前に20人分のカルテを指定されて、そのほか日計表や技工指示書、レントゲン、模型などを持参して水戸の地方厚生局まで出頭しなければなりません。
そんな抜き打ちで患者様のカルテの名前を指定してくるくらいですから、向こうでは容疑は固まっているに決まっています。。
個別指導は税務調査に似ているところがあって、取締官も何かの狙いや容疑を固めてから取り締まりに入ります。また、何かしらの瑕疵が出て、いわゆる懲罰的「おみやげ(修正申告や自主返還)」が発生するところも似ています。自主返還はその名前とは裏腹に、けっこうきついです。下に詳しく書きます。
個別指導でも改まらない場合や、悪質な場合は、さらに恐ろしい「監査」が待っています。
指導とはいえ、個別指導の目的は「自主返還(=罰金)」です。だからなるべく医院に負担がかかるようなやり口になっています。そしてなんだかんだと難癖をつけては、「歯科衛生士実地指導80点の5年分と歯科疾患管理110点の5年分」などと何らかの「自主返還(=罰金)」が言い渡されます。
全員分の5年分ですから、数十万から、多いときは百万単位になります。指導のシステムも恣意的で、過去にも自殺者が続出して問題になっています。
個別指導は、その他、患者通報でも行なわれます。容疑は
二重請求(自費治療したのに保険でも治療したことにされた)
付け増し請求(1本治療したのに2本治療したことにされた)
などの詐欺的なものが代表的とされています。
最近は「医療費の通知」が患者さんのところに行くようになって、私には理解できないのですが「やられてない治療がやられたことになってる」という例も増えているようです。
このような通報が地方厚生局に行くと、患者を呼び出したり、場合によっては出向いたりして患者の口腔内をチェック(裏取り)までして、不正が確定した場合は、集個を経ないで、一発個別になります。
これはもう指導と言うよりか、取り調べそのものになります。
指導でも改まらない場合は、こんどは「監査」といって、取締官が直接医院におしかけてカルテを調べたりします。イメージとしては東京地検特捜部の家宅捜索とか国税局の査察に非常に似ています。
監査の場合は、審議内容にもよりますが「保険医停止5年」になることが圧倒的です。
(ただ藤枝市民病院や阿見日本医大病院のような地域の機関病院の場合は、何だかんだ理由をつけて大幅な短縮が行なわれるケースが多いです)
皆保険社会の日本での保険医停止5年は、すなわち死刑宣告を意味します。
知らない人は、「税務調査」「査察」「地検特捜部」とか聞くと大変おっかない感じがすると思いますが、「指導」「監査」という単語を聞いても、そんなにインパクトは感じないものです。
しかし保険医療機関にとっての指導や監査は、おそろしい閉鎖的共産独裁国家における人民裁判のようなものです。
◆ 平均点のチキンレースが弊害を・・
なので、どこの医院もみんな「指導」や「監査」にならないよう、必死になって平均点を下げています。
平均点が多いということは、1人の患者に、あれもこれもとたくさん治療を行なっていることを意味します。だから本質的には悪いことではないはずなのに、です。
それは置いておき、平均点を下げるには、消毒とか検診とか、負担の小さい患者数の割合が多くなることです。相対的に平均点が下がり、目立たなくなります。
とにかくどんな手を使っても『患者数を増やす』ことが、すなわち1枚(=1人)あたりの平均点を下げることにつながります。
しかしこれでは、イスが何台もあり、代診を多く雇ってる、規模の大きい医院の方が有利になってしまいます。小さい医院は、あれもこれもときっちり治療をしようとすると、必然的1枚あたりの平均点が上がってしまうからです。
◆ 多少ましな?!改善策 その2
ですから、そこで、集個の基準を、平均点ではなく、枚数(1か月に来た方の数。延べ人数ではない)にするのはどうでしょうか(複数の医師がいる医院は、おそらく勤務医の人数や出勤日数で割ったほうがいいと思いますが)。
すると規模の大きい医院ややたらと回転の速い医院は、頭数(枚数)を増やすと集個の対象になるので、患者数(≒枚数)を抑制する方向に動かざるをえないと思うんです。
いっぽう小さい医院には、大きな医院の余剰患者の流入があり、その中でていねいに治療をしてもお咎めなしになれば、必然的に評判も上がり、患者数も増加していくと思うんです。当然ですが、規模の大きい医院ややたらと回転の速い医院も、より個別ごとに速度よりもていねいさを重視する方向に移行するインセンティブが働きます。
このように、平均点制でなく枚数制のシステムにしていくと、だんだん、どこの医院も同程度の規模に収れんしていき、社会インフラとしての歯科医療を考えたときに、より妥当な形に向かうのではと思います。
そうなると、設備投資の大きかった所よりも小さかったところの方がゆとりが生まれやすいですし、回転至上主義で患者数を回していたところから診療方針の見直しが進む形になると思うからです。
また、なぜ平均点制よりも枚数制のほうがよいかのもうひとつの理由は、いみじくも以前紹介した書評の本の冒頭に書いてありました。
「こんなにきれいに削ることができました」といっても
「そんなことはいいから早く治療してくれ」と言われるのが落ち。
つまり、患者には歯医者の技術が理解できないのです。
これは私も常日頃から感じているところです。
また雑な治療ほど痛くなくて早い治療と誤解されやすく、ていねいにやればやるほど時間もかかるし一過性の痛みが出るリスクも高まり、忌避されやすい。
技術が高いから流行るのではなく、早く回すのが上手だから客が増える。それだけなんです。
多くの歯科医師は「ばからしい!効率化できるところは極力効率化しよう」
と思うしかありません。
少々、いや、だいぶ雑でも、回転率を上げて平均点を下げる方向に行く。
これが平均点制の主要な欠点のひとつでもあります。
本当にていねいに、まさに身内や自分自身だと思って治療を行なえば、そんなに枚数が行くはずもないし、そもそも保険診療を選ばないはずです(それを言っちゃあおしまいですが)。
少なくとも枚数制なら、大多数の小~中規模医院はどうどうとていねいな治療をしていれば自然と患者数が増えてきて報われる。
さらに大規模医院の寡占化も「一定程度」抑制される。
枚数の多いところは、おそらく規模の大きいところです。
ですから、勤務する歯科医師数や勤務日数で割るなど、勘案したほうがいいですね。
私の知っている事例ですが、東日暮里の方に、やたらと、というかとてつもなく手の早い先生がいました。ゴッドハンドとかと言うわけではなく、技術レベルは平均的なんですが、とにかく患者の回転が早い早い。保険医としてはまさに理想的ですwwwその人は、ユニット2台、Dr1人で、毎月40万点とか50万点とか普通に出していました。
それもひとつの特技でしょう。まぁ、そこまで真似しようとは思いませんでしたが、こういう例は、取り締まったほうがいいのかもしれません。。。
◆ 望ましいルールのあり方とは
「役人が下手に手出ししてごちょごちょ規制をいじくり回すからおかしいことになってしまう。なんでも自由化すればいい」という考え方も大阪の方や三浦半島の先端のほうに時々あります。
それも結構ですが、必要以上の自由化するとだいたい一部の勝ち組と大多数の負け組みに分かれてしまい、大きいところの寡占化が進むのは、他業種を見るまでもなく明らかです。
佐貫の周りも、取手も土浦も死んでますし、つくばのイオンくらいしか娯楽がないので、つまらないものです。Quizモールなんてひどいもんです(街づくりや地元については、言いたいことがたくさんありますが、ここでそういう歯科以外のことをぶちまけると運営の目が○○いので、、そのうち1回くらいやってみるかな)。。
日本の皆保険制度、なかんづく歯科医療において、過度の弱肉強食の競争や、一部資本による寡占化が良いとは、まったく思いません。たしかにもともと基本が全くなっていないような藪医者も今までは一部いましたが、歯科医院数が増えてくることによって、彼らも淘汰される方向にあります。たとえばインプラントをやる医院、やらない医院、矯正をやる医院、やらない医院などのような棲み分けはあろうかと思いますが、まずは
①多くの医院になるべく均等にばらけて受診者が
流れるようにします。そして何より
②受療率(受診率)そのものの掘り起こしをすすめる
ことが、少なくとも現段階では必要です。
私は、削って詰める、型を取る、などのような治療が万能であるとは全く思いませんし、修復的処置を持ち上げたりそれで安心する風潮には強い違和感を覚えることには人後に落ちません。そのようなことが必要ない世の中を将来作っていかなければいけないと強く思っています。
強く思っていますが、残念ながら今はそもそも
受療率の低さ=潜在患者率の高さ=歯医者の敷居の高さ
がそもそも問題になっていて、必要な歯科医療サービスすら国民に行き届いていないことを改善しないといけないレベルの段階だからです。
まだまだ「質よりも量の改善」「歯医者の敷居を低くする」ことを優先すべきなのが巷の実態なのかもしれません。
だから、反則通告制度はともかくとして、平均点制から枚数制への移行ないしは概念の導入は、患者をより均等に振り分けていく効果が期待できると考え、おおいに検討すべきだと思います。そうすることで、歯科医院群全体での許容力やキャパシティの向上につながるからです。
その上で「助手が○○できない」「衛生士が○○できない」といった医学的根拠のないガラパゴスな現場レベルの規制というか因襲は、どんどん取り払うことにより、歯科医院群全体でのキャパシティ向上にさらに寄与していくのではないでしょうか。
私も助手がTEKや印象くらいできなかったり衛生士が浸麻くらいできなかったりでは、世界に向けてもカッコ悪いとつねづね思っています。まるでインドのカースト制みたいです。
【今回のまとめ】
まず歯科医院に気軽に足を運ばせること。その上で現場レベルの規制緩和。