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2011/04/18

前回から早10日。
その後、徐々に関連する調査や提言が出始めてきたので、
ここで改めて、整理してみることにしようと思う。

まずは、野村総研が発表した、メディア接触動向に関する調査。
震災時に重視した情報源は何か、との問いに対する回答が以下。

1位 テレビ放送(NHK) 80.5%
2位 テレビ放送(民放) 56.9%
3位 ポータルサイト(Yahoo!、Google等) 43.2%
4位 新聞 36.3%

7位 ソーシャルメディア(twitter、mixi、facebook等) 18.3%

テレビが相変わらず重要なのはこれまで通りだが、
ポータルサイトが新聞を上回ったというのは興味深い結果。
ソーシャルメディアも、順位は低いが2割近い人が触れている。

ただ、この調査には、ちょっとしたからくりがある。
それは、調査対象が、「関東(一都六県)在住の20歳から59歳の
インターネットユーザー3,224名」という縛り。
まず、被災地である東北が含まれておらず、
さらに、被災した多くがお年寄りであった点ともズレる。
インターネットユーザーに絞っていることも、
ポータルサイトやソーシャルメディアの値を引き上げていそうだ。

震災に伴うメディア接触動向に関する調査┃野村総合研究所
http://www.nri.co.jp/news/2011/110329.html

野村総研はまた、震災復興に向けた緊急対策の推進について、
という提言もまとめており、順次発表している。
その中にICT(情報通信技術)に関する内容があった。
固い部分の話はこの際置いておくことにして、
以下に、掲載されている要約の、そのまた抜粋を引用する。

大切なことは、ICTはあくまでも“手段“であり、ICTを導入することが目的ではない。当該自治体の住民ニーズや課題に対して、関連主体と歩調を合わせながら、ICTが貢献できることを見極め、しっかりとやり抜くことが肝要である。

それができれば苦労は無い、という小綺麗な文句なのだが、
そこと経済合理性をどこでどうやって折り合いをつけるのか。
例えば、携帯電話が有用であったならば、皆が携帯を持つ必要がある。
普段全く使わないお年寄りに、災害時のためだけのために買わせるのか。
かといって、1人1台、国が携帯電話を支給、というわけにもいくまい。

震災後のICTインフラ整備及びICT利活用のあり方┃野村総合研究所
http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/pdf/201104_fukkou7.pdf

その他にも、慶応義塾大学を中心として幅広く識者を集めた、
「IT復興円卓会議」なるものが立ち上がっており、
4/13には第1回が開催されたようだ。

震災後のメディア状況を時系列で追った資料が掲載されていたので、
興味のある方はご確認いただきたい。

発表資料(慶応義塾大学・菊池尚人)┃IT復興円卓会議
http://ithukko.com/wp-content/uploads/2011/03/20110413_kikuchi.pdf

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ここで少し、震災後ずっと追いかけてきた、
twitterの功罪について、少し持論を述べておこう。

個人的には、twitter上でのつぶやき(ツイート)は、
街中での噂話レベルと大差無いと考えている。

電車に乗っていたら、隣の席の女子高生の会話が聞こえてきた。
それがつぶやき。

それをRT(リツイート)するというのは、
耳にした噂を、「いまこんなのが流行ってるらしいよ」と、
したり顔で誰かに話す、そんなレベル。

もちろん、登場人物が女子高生であることに特に意味は無い。
知り合い同士のお喋りでも、テレビで芸能人が喋った内容でも、
普段の生活の中で聞いたら、ただの世間話程度のことが、
なまじタイムラインにいつまでも残ってしまうせいで、
思わぬ副産物を生んでしまったりする。

皆、あまりにもtwitterにメディア能を抱かせたがるが、
せいぜい、井戸端会議の延長線がいいところで、
話題の真偽を議論する以前の段階のように思う。

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実は今、このひと月ほど、実家のある仙台に居る。
被災地の人々と接して感じたこと。

圧倒的に多い、お年寄り。

もちろん、彼らからは、
twitterという言葉を、まだ一度も耳にしていない。
テレビも滅多に見ていないし、せいぜいあるのはラジオの情報。
そして、避難所での口コミ情報。

ソーシャルメディアも含めて、多くのメディアは、
あくまでも、被災者のためではなく、支援者のためのメディア。

先に紹介した野村総研の調査や提言も、
どうやら支援者のためのメディアでありICTについて触れられている。

もちろん、それはそれで立派な役割がある。
一瞬の力で引き裂かれた地を復興させるには、
多くの支援者が多くの時間を費やさねばならない。

ただ、その一瞬の被害を最小限に留める。
そのためのICT(情報通信技術)の在り方も、やはり考えねばなるまい。

ICTを活用する、という道筋だけではなく、
その分野に置いては、ICTを一切排して、人力に頼る、という、
一見真逆の解決策も含めて。

どうせ、ライフラインを断たれてしまえば、
情報は、人から人へと伝えていくしかないのだから。

2011/04/18 12:00 | fujiwara | No Comments