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地球の舳先から vol.345
チベット(寄り道アムリトサル)編 vol.
(撮られ慣れているであろうイケメン兵士。この部隊は顔採用という噂もある)
さて、チベット文化圏から寄り道。一度は行きたかったインド・パキスタン国境。
ラダックで平和ボケした身には、国境へのベースとなるアムリトサルの街はいかにもインドで、
空港のタクシーカウンターの「今日は特別な日だからいつもより料金が高い」にも、
タクシーの運転手の「今日はこれ以上先に行けない」と1キロ以上遠くで下ろすのにも
すっかり閉口して「やっぱインド嫌い」は強固になり、
ホテルのすぐ裏の、シーク教徒の聖地である黄金寺院すら見に行く気がなくなった。
そんなわたしを癒してくれたのが西遊旅行で手配しておいた運転手さん。
大幅に遅れたわたし(というか飛行機)を延々と待っていてくれて、寡黙で安全運転。
車内で上着を着れば「寒いか?」と聞いてくるハイパーっぷりである。ここは日本か。
こうしてクルマに揺られること1時間弱。日没時の国境セレモニーに間に合った。
(いかにこの部隊が危険で誇り高い仕事かを語るポスターが多々ある)
翌日にインド独立記念日を控えるこの日は国境周辺もイベント尽くし。
駐車場から国境まで1キロほどを歩いていくのだが、展示や屋台がたくさん。
わたしも兵士と写真を撮ってもらったりしたが、アジア人が珍しいのか
逆に、来ていたインド人にバシャバシャ写真を撮られた。なぜ。
そして、セキュリティーチェックもたくさん。荷物はないに越したことはない。
ここでわたしは多分人生で初めて「英語がわからなくて困る」思いをした。
途中に何回かある身体検査にて、女性係官に言われた。
「Check the bottle」
持っていた水のペットボトルを差し出すと、「No.Check the bottle」と繰り返す。
持ち込めないなら捨てていく、と言っても同じフレーズが帰ってくる。
彼女が何を求めているのか、まるでわからない。
「I can’t understand you」と言っても、別の表現で言い換えてくれたりはしない。
小さな身体検査の小屋の中で出口を失ったわたしに、後ろの女性が
「それが武器や毒物じゃないって証明するために、ここで飲んで見せろって言ってるのよ」
なるほどー?! そんな英語、知りません!!!
またしても一気飲みを始めたわたしに、「全部飲まなくていい」といって、無事解放された。
(もっともインド側(国境から遠い席)の端にガンジー像。を囲むように席が配置されている)
(パフォーマンスをする人のほか、警備員や観客を整列させる係の軍人もいる。
シャッターチャンスでカメラを構えて線から出るとすぐ笛を吹かれる。)
セレモニー会場は、小さなサッカースタジアムのよう。
インド側にはガンジー、パキスタン側にはジンナーの肖像画が掲げてある。
首相とかじゃない。そう、ここは政治よりも平和の象徴のためにある国境施設。
応援団の応援合戦を国家レベルにしたようなもので、ド派手な衣裳で
あくまで「演出」としての挑発・攻撃のパフォーマンス、
それに満員に集まったお客さんたちが掛け声をかけて盛り上がるというもの。
(衣裳も色違い、振付も同じという事で、両国で合同練習してるんだろう。)
(国境が開いている状態。パキ側の肖像はジンナー。日本ではマイナーだが、パキスタン独立の父)
外国人はパスポートチェックだけで入れてもらえて、VIPシートに案内される。
「ふ~ん外国人だからか~」と軽く思っていたが式典後、わたしはこの意味を知ることになる。
日没の直前、両国の国旗が降ろされ、門が閉まり始めると、敬礼で見守る人たち。
門が完全に閉まると客たちはその境目に殺到して壁に触ったりとかするのだが、
ふと後ろを向くと、十数メートル向こうにはロープが張られ、その向こうにインド人たちがいた。
つまり、国境にもっとも近いところに設置されているのが外国人も入るVIPシートであり、
一般のインド人は国境のすぐ手前までは近付けないようになっているのである。
聞いたところ、事前に色々申請やら審査やらを通ると、インド人でも
人(「位」という言い方をしてたけれども)によってはこのVIPシートに入れるのだそうだ。
ロープの向こう側もまた、人が前へ前へとすし詰め状態になっていたが、
勿論喧嘩がしたいわけじゃない。
むしろそれまでの掛け声や盛り上がりが想像つかないくらいしんみりとしていて、
郷愁とか哀しみのような表情の人たちには、複雑な思いを感じざるを得なかった。
帰りも歩いて駐車場へ。クルマの前には見覚えのない姿の人が立っており…
「1 minute」と言って消え、Tシャツの上にあわてて白いYシャツを着て再登場した彼は、
確かに運転手その人だった。
想定したより私が帰ってくるのが早かったのだろう。
「客の前では正装しろ」と、この気候ではスポ根的無駄である“日本式”教育を
受けているらしいドライバーに、少々同情したのだった…。