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こんにちは、根本齒科室の根本です。
先日、色々ブラック話題になった「すき家」(牛丼ライト)に行って思いました。
(歯医者って、やっぱり敷居が高いんだなー)
少なくとも、すき好んで行きたい場所じゃないのは確かです。
普通の飲食物販なんかだと、大抵店を開けておくだけで、何もしませんよね
(たまに完全予約制のレストランとかありますが)
「予約」というと、カラオケや美容院などの「時間貸し」サービスくらいで。。
昨日は新患が2人来ました。
つまり、だまって開けておくだけなら、歯医者の場合、見込み客数は1日2人です「!」
すき家、開けとくだけで、1日一体何人来るんだよwww イヤー 羨ましい
歯医者って、どんだけ来にくいんだと、びっくりします。
しかし、そんな来にくいくせに、肝心の歯医者の方では「誰でも彼でもいらっしゃい」とやってるかといえば、案外そうではないんですよね。
結構、あれこれ理由をつけては、来院者に対して「ハードル」を設けてるんです。
以下、自分の経験からいろいろ語ってみたいと思います。
こんな歯医者、結構多いと思います。
◇ 「予約優先」
~急患や飛び込みを受けにくい
これは医院によっても違いますが、治療の質に対して真面目な医院ほどこういう傾向があります。
院内のスタイルが結構がちがちに構築されてしまっていて、それはいいのですが、スタイルを外れたときにリカバーして戻すシステムが手薄なんだと思います。
◇ 「次回の予約が取りにくい」
~患者が動かなければいけない負担を強いる
予約優先ともかぶりますが、患者様をお待たせしない、ということに対して、潔癖すぎるのかもしれません。
たしかにお互い時間の一部をやりくりして割いて仕事をするわけですから、その労を無駄にしない意味では予約制は理にかなっています。
しかし人間も社会も完全ではないので、不測の事態は必ず起こります。
何も自らの無謬性に自縄自縛になってしまっているのは、霞ヶ関の官僚だけではないのです。
◇ 「お願いした治療をしてくれない」
~肝心の治療の前に、説明や指導などで時間をとる
希望と別の部位の治療を進められる
これも、来院患者様から、以前の歯科医院についての話があるときによく出る内容です。
たとえば、歯がよく腫れるので、レントゲンを撮ったら根に膿がたまっていた。冠を外して根の治療を始めたら、普通は排膿は止まります。
しかし患者様は驚いて「いや~、前の歯医者は何度通っても、ちょこちょこって外から消毒して「様子を見よう」で終わっていた。きっちとやってもらってよかった」
なんてこともあります。
しかし、たとえば「早く型を取って欲しい」「歯を入れて欲しい」という場合でも、先に歯周病のほうをしっかりしておかなければいけないケースもあります。歯石がついていたり歯肉に炎症があると型がずれることが多いからです。
しかしご多忙な方だったりするとこの辺がなかなかご理解いただきにくいこともあり、複雑な心境になることもときどきあります。
上記は、割とよくありがちなパターンです。
◆ 日時による混雑度のちがい
これは患者数が少ないときでも起こりうる問題です。
経験上、一般に患者心理として、朝一、午後一、(午前・午後)終了間際などの「はじっこ」を希望しやすい傾向にあります。
するとどうしても朝一とか午後一の時間での「割り当て」の「取り合い」が生じます。
その一方で他の時間はがらがらだったりすることもしばしばあります。
曜日についてですが、当然ながら平日よりも土曜日の方が入りやすいです。
すると日曜日や深夜の時間帯はさらに予約が入りそうな気もするのですが、今までの経験から言うとキャンセルも入りやすかったりして、あまり患者様や院の双方にとってもメリットが大きくない感触を持っています。
また日曜日に来られるような人は、99%土曜日にも来られるという面もあります。土日のどっちかで歯医者、と考えたら、私でも嫌なことはさっさと済ませて、日曜くらいはゆっくり骨を休めたいと思うかな、と。
ただでさえ億劫な歯医者。余計なハードルがあったら、ますます足が遠のく感じですよね。。
◆ 治療枠の保護と、法律のグレーゾーン
多くの歯科医院では、1時間に4人(30分に2人⇒15分に1人)の枠で予約を取っていることが多いようです。
この場合、単純計算で、シーケンシャル(順々)に1人15分平均でこなせているわけではないので、並べて、Aさんに麻酔して待っている間にBさんの治療、などと回しているのが一般的です。これが歯医者1人にイスが3台必要だと言われるゆえんです。
しかし私見ですが、1人15分とすると、治療の中身を「型を取る」「取り付ける」というシンプルな内容なものの比率を半分くらいにあげないと、時間が足りなくなります。
「大臼歯の神経を取る/根の治療」「難しい親知らずの抜歯」「難しい総入れ歯」など手を取られる内容だと、15分ではきつい確率が高くなります。必然的に
歯医者が削ったら次の人のところに行って
その間に助手が型を取って
とか、
助手が銀歯の高さの調整をして
終わったら歯医者が取り付けをして
セメントが固まったら助手がセメントを取る
みたいな感じで、かなり助手が治療に参加するようなスタイルじゃないと、1時間4人ではなかなか回らないだろうと思います。
読者の皆様も、このように「やりながら」やる方法は、日本の歯医者ではごく一般的のように感じるかもしれませんが、現在の日本の法律に照らして考えると、明らかな脱法行為になってしまい、非常にマズイんです。
これは、他の先進諸国の例を考えても、本質的には現在の日本の法律のほうが非常に守旧的でマズイわけですから、もう少し助手や衛生士に権限を拡大しないと、医院にも患者様にもデメリットが多いし、何より日本(の官僚)にありがちな無責任体制が生み出すグレーゾーンの放置拡大を助長してしまいます。
。
これについては早く規制緩和してほしいと、いつも思っています。
グレーゾーンについては、長くなるので別の回に書こうと思います。
私の場合は、この「並べて治療をする」というのがずっと気持ち悪く思っていました。
グローブ交換や手洗いも面倒だし、あまり清潔な感じもしない。
だからなるべく治療枠を並べない前提で、と思って今まで予約の取り方を厳しくしてきた部分があります。具体的には
先約が横にいる時間には予約を取らない
患者の希望を聞く前にまずこちらから日時を提案する
などのようなことをしていました。
必然的に、治療自体は、やりやすくなりますが、アポ帳の埋まり方がどうしてもムラが出てきます。
ここは細かい工夫点があるのですが、瑣末なので省略します。
◆ 「予約変更」VS「待たせる」
この2つのどちらが障壁が大きいかを考えてみます。
たとえば4時に取りたいときに4時に先約がいたときですが、先ほど書いたように、当院の場合は今まで決然と、いや無碍に「その時間は先約の方がいるので、とれません。すみません。別の日の○○日の○時頃はどうでしょう」などと言っていました。
平行治療が嫌だったというのもあるのですが、そのかわり自費が上がれば、数字的には追いつくだろうとも思っていました。
ただ、今までの勤務医時代の経験とか、他院の話などを見ると、たいてい30分に2人で意図的に並べて、あっちちょこっとやって「待たせる」こっちちょこっとやっ
て「待たせる」、みたいなのが、やはり主流みたいですね。
でも考えてみたら、「予約変更」VS「待たせる」では、予約変更のほうがハードルが高いような気がします。
待たせるほうはなんだかんだ言って、その日1日で終わるのに対して、予約変更の場合は、合計2つの空き時間を考えることになるからです。
自分のスケジュールの中で、2つの空き時間を即座に見い出せる人も、なかなか多くはありません。
(どこがあいてるだろう?)いろいろ考えさせることも、ストレスに繋がります。
◆ 機械化の問題点など
最近はスマホやパソコンでインターネット予約できる医院も増えています。
私見ですが、なかなか歯科になじみにくい部分も大きい気がします。
たとえば型を取ると、技工所に出しますが、納期の関係上、営業日で中○日なので、次回の予約は○日の○時以降、などという形になります。
そんなとき、口頭では予約を取るときは、
「○日の○時以降になりますが・・・」
「何日の何時ごろがよろしいですか?」とおたずねすることになります。
しかし、技工所もたくさんありますし、それぞれの技工所で、修復物ごとの納期に差があります。たとえば簡単に言えば、技工所Aは銀歯は中4日で義歯は中5日、Bでは銀歯は中3日で義歯は中6日、などなどです。
医院ごとに技工所も違いますし、患者様ごとに使用する修復物も多種多様です。
これを細かく機械で設定・登録するのは、結構煩雑なような気がします。
ふつうに受付で予約を取ろうと思っても、そのときになかなか日が決まらないということもあります。そこで後日スマホやインターネット経由で予約を取りたい場面も出てくるかもしれません。
しかしこれでは非常に予約(を取ること)に対する印象が薄れます(一旦取ってくれれば、その予約は確実なのですが・・)。
また、キャンセル対策で一番効果的だと言われているのは、翌日治療予定の方に「前日」いっせいに電話やメールなどで連絡することだと言われています。
具体的にはBCCで携帯に送信して、漏れている人に対しては電話連絡でしょう。
これはでも、かなりコスト(電話代)がかかりますし、前日電話だと逆に相当うっとうしいですよね。一斉発信ソフトのようなのもありますが、非常に高価です。あまりぜいたくなことは今の私にはできないですよ。
それで次善の策として、当日「無断キャンセル」した方に、直ちに電話で連絡する、という手がしばしば推奨されます。
これは補完的に、やらないよりもやったほうがよいとは思いますが、何度も「無断キャンセル」されると、その方に電話するほうも気を揉んでしまいます。。
◆ 忘れにくい予約の取り方
こう考えると、患者様の来院に対して、できる範囲で可能な限り障壁の低い予約の取り方をしつつ、漏れてきた「無断キャンセル」については電話で拾っていくほうがいいかなと思います。
患者側の第一希望に対して、変更を求めるよりも、少しお待たせしてでもなるべくその時間に来院していただいて、極力そこで済ませたほうが、印象も薄くならず、スケジュール上の負担をかけることも減り、トータルで考えたときには、こちらのほうが良いのかな、と最近は思います。
◆ 「予防の説明」
今日び「予防が大事だ」といっている歯科医院は少ないと思います。しかしその中身や各論は医院によってかなり大きな違いがあると思います。
当院で「予防」という単語を使うときの定義は、一義には、治療とは別に、あるいは治療を一時中断して、
①以下のセッションを行なう
「P検TBI」
歯周ポケット検査(6点法)
歯ブラシ指導、染め出し
「Sc」
縁上歯石・沈着物の清掃
「SRP」
(その後必要があれば)数本ごとに縁下歯石の除去
「F」
(その後必要があれば)フッ素の塗布(保険外診療)
②歯科衛生士に配当して、そちらで予約を取る
ことを指します。
女性の患者様の多くは潜在的な希望としてメンテナンス処置を望まれていることも多いので、その場合は話がスムーズなのですが、予防については、いかんせん主訴(最初に歯医者にかかった理由。歯が痛いとか取れたなど)にない内容であることも多く、とりわけ男性の方とか、病識の薄い方などへの説明には苦労することもしばしばです。
残念ながら、あまりそのような説明に賛同を得られず、「いいからとりあえず早く歯石を取ってくれ」みたいな話になってしまうこともままあるのが実情です。
これは、歯周病の性質を考えると、あまり感心できない話ではあることはあります。
しかし本人が嫌がることを無理強いするのもどうかと思うので、院長がその場でさっさと目立つところを取って、おしまいにしてしまうこともしばしばあります。
その場合には、指導や歯ブラシ検査などを省略する形になるので衛生士に配当しない形になり、配当した人との間に、医院的に差がついた形にはなります。
「この人は「予防の説明」というハードルを越えることが出来なかった人だ」
そう思ってあきらめている面もありました。
そのハードルを越えた人は、衛生士の処置に移るので、簡単に言うと超えなかった人よりもワンランク上、という認識であり、衛生士に回っているかが、大雑把ですがひとつの目安だったりしてました(今もそうかも)。
もちろん厳密なものではないので、そうでない例も多く、衛生士に配当していない人でも、逆に非常にシビアなケースであったり、内科的に複雑な基礎疾患を抱えていたり、メンタル面に問題があったり、などというケースで衛生士には荷が重いと判断した場合には、回さずに院長が診たりしている例もあるんです。
ただ何といっても、
「P検TBI」
これで1回つぶしてしまう
これが大きいんです。原則としてこの回に歯石を取らないんですから。
大きな「ハードル」だと思います。
逆に他院でずっとメンテナンスを受けてきて、引っ越してきて、当院で初診で、前医と同様の処置をしてもらえるだろう、と期待して見える方なんかにも、意外に大きなハードルだったりすることもありました。
「えっ、歯ブラシ指導ですか?前のところで見てもらったばかりで・・・」
などとなると
(・・・しまった)
なんてことになったりもする。
以上、自らの今までを省みてみて、こんなような点に気がつきました。
こんなに来院患者に対するハードルが多かったんだと、改めて思い直しました。
しかし、今まで無碍にそんなことをしていたのにも、理由がないわけではないのです。
◆ ばかばかしく見える理由
とても変に思えるかもしれませんが、以前の私は、本当に心の底から
「予約を取りにくい医院」を演出することで、
⇒「患者の意識が高まる」
⇒「院内全体の風紀が保たれる」
⇒「周囲からていねいな歯医者だと思われる」
のでは、などと真剣に思っていました。
実際に、以前の受付の人に、横がいるときはどんどん断っちゃって大丈夫、などと指示を出していたものです。
ぱっと見、すごくばかばかしい考えですよね。でも人間、何千万も借金してみると、何かと変なところが気になったり不安になったりこだわったりするもんなんですね。
それと、やっぱり開業当初は、こう言っては難ですが、他院でトラブルになった人が結構流れてくるんです。歯科医師会の先輩の先生にいろいろお世話になったことも少なくありません。
これはネットや紹介を経由してくる方とはだいぶ雰囲気が違うことも多いです。
うまく行くこともありますが、やっぱり他院での前科?!があるせいか、再びトラブルになることも少なくないですね。。
そんなとき、(ひとりでもそのような勝手な面々がいると、院内全体の風紀が乱れる)とか(きちんとしている方と対応に差がついてしまい、不公平だ)のような不安に駆られるんですよ。
そんなささいな、ばかばかしいことにこだわってしまうんです。
おそらく、大きな借金を背負って、孤独とプレッシャーを背負っている気持ちは、なかなか給与所得者には分からないものです。相当きついです。
毎月自分が個人で使う金が10万ちょっとなのに、出て行く金と入ってくる金がそれぞれ300万位とか、というのは、正直つねにジェットコースター状態で、生きた心地がしませんw
そんなしんどいときは、何でもいいから、寄り縋って楽になりたいものです。それがさまざまな「こだわり」と呼ばれるものの正体なんだろうと思います。
それは内外装も同じです。
今となって思うのは、多分「普通+清潔感」でよかったんだと思います(でも最低ついたて程度は必要)(土足は個人的に好きなので可)。
美容院のような外装も、文字が小さくて分かりにくいスタイリッシュ()な看板も、そうすれば来院者も襟を正してくれるかな、などと思ってやってみたのですが、結局患者様の意識向上には何の意味もありませんでした。まぁ、衛生士1人に全く叶いません。
そのような、少々難のある面々が流れてきたりもして、開業当初は結構悩んだものです。
しかし今になって気がついてみると、そのような面々が大きな障害になっているかというと、全然そんなこともなく、彼らに往々にしてありがちな習性といえばそうなのですが、当然のようにすぐに足が遠のいてしまっており、院としては何の問題もなかった、という落ちになってるわけですね。まぁ元も子もない。
だから院内の風紀が乱れるなどといって毛嫌いしたり患者様と揉めたりせず、今にして思えば、「ハイハイ」と敷居の低いふりをしてさっさと右から左に流して置けばよかったんですね。
◇ 招かれざる客の場合
で、最後の殺し文句は
「また痛くなったら来て下さいね」
これほど歯科医療や患者様を愚弄した言葉もないですね。痛くなるのを待つのでは、自覚症状が出ずに進行しやすい歯科では命取りではあるんですが、にっこり笑ってそう告げると、そのような方々の場合は、まんざらでもない顔で去っていく。
そのうちに、どうせ程なく来なくなる。いっちぽーんとさけたって奴ですよw
◇ 何とか引き上げたい方の場合
歯石を取りながらも、たとえば一例ですが
「この歯ならびの形の歯石は、歯ブラシの工夫でかなりつき方が違ってくるんですよね。お時間がということでしたので、今回はとりあえず私が取っておきますが、次回検診のときに専門の担当(衛生士)がいますので、一回まじめに歯ブラシをやってみましょう。こんなことを言うと、『いい大人に向かって歯ブラシなんて』なんて顔をする方も多いんですが、日本は欧米と違って、子供の頃からプロがコーチングを継続的にしてないので、大体テレビか親の真似ですね。みんな自己流の成れの果てなんですよ。」
なんて一生懸命水を向けてみるのもありですよね。。1回目から
「今日は話だけ、次回から歯ブラシ指導」
なんて展開よりは、断然ハードルは低いですね。
とくに男性や仕事で忙しい方で何とか時間をつくってきたかたの場合は、その辺の配慮もないと通院の継続も厳しいかもしれない。。
肝心の院内の風紀のほうは、『スタンスの基本』を変えないでいれば、おのずと時がたつにつれて、継続的にメンテナンスに来てくださる患者様や、インプラントや矯正(必ずメンテナンスがセットでついてくるから)の患者様などがどんどん主流になり、心配しなくても予防系に落ち着いてくるようです。
(そうなって欲しい)と思いながらの暗中模索ではありましたが、そこは大丈夫でした。
今回、こんなことを考えたきっかけですが、最近どうも、キャンセル率が高かったり患者様の数に波があったりすることが気になってきていました。
それでなくても当院の場合、立地があまりよくないので、集客?!には工夫が必要です。。
やはり、ハードルが高いことがひとつの原因だろうという気になりました。
「待たせる」と「予約変更」の比較を考えてもそう思います。
たとえば親知らずの抜歯の日に風邪を引いて、などという不可抗力では仕方ありませんが、それでも、相手(医院)の都合で変更させられた予約は、患者様にとっても、印象の薄い日時になってしまいがちです。
そうであれば、当日多少お待たせしても、自分から宣言した日時の予約の方が、印象が濃いので、無断キャンセル率も低下するだろうとは容易に想像がつきます。
・・・
何か、そちらのほうが普通っぽい歯医者なのかもしれませんね。
【今回のまとめ】
孤独とプレッシャーが「こだわり」を、こだわりが「ハードル」を生む。