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2014/10/10

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神楽坂の改札を出て階段を駆け上がり、

歩道を左に曲がると、

私はいつものように、

いつものコーヒショプへ、

いつものテーブルにつき、

iPodでいつもの曲を聴きながら,

ちょこっとまぶしい朝日を浴びながら、

窓から見る街路樹のある風景、

仕事場へ向かう前のこの短い時間が好きで、

私はいつも早めに家を出ていた、

 

ところが最近、

何時も見ていたこの風景に異変が起きていた、

通りの向こう側にある、

新潮社の本社倉庫の風景が、

この一ヶ月前から変わり始めて行った、

グレーのスレートで出来た倉庫の敷地が、

大型重機で整地され、

ある朝突然に、

倉庫の2階から歩道に向かって、

幅が7mもある階段が生まれ始めてきた、

今まで何事もなかったように眠っていた倉庫に、

まるでアカデミー賞の会場のような立派な階段が、

出現し始めた、

そのうちに倉庫の一階部分の小さな窓は取り払われ、

一階のスレートの壁も総て取り払われ、

一階部分の壁がすべてガラス張りに変わって行った、

この一ヶ月というもの、

私の朝のまったりとした時間は、

今日は新潮社の倉庫が、

どんな風に変わるんだろう、

一体これから何を造ろうとしてるんだろうと、

興味津々の出社前の、

毎朝のコーヒータイムになっていった、

10月8日、

ノーベル賞の物理学賞に3人の日本人が選ばれた、

朝のTVで騒いでいたのを思い出した、

私はいつものようにコーヒーを飲みながら、

新潮社の倉庫が変わって行く風景を見ていた、

数人が幅の広い階段に、

花を飾り始めた、

下から上まで総ての階段に、

花を飾り始めた、

10月9日、

とうと私は気がついた、

私が毎日見ていた新潮社の倉庫の改装、

まるでアカデミー賞に使用されそうな階段、

そうだったのか、

これら総ては、

新潮社のNo1作家の、

村上春樹のノーベル賞のお祝い用に用意されていたんだと、

とうとう私は、

この一ヶ月あまりの疑問が解けた、

新生シャーロックのように、

急に謎が解け目の前が明るくなって行くのを感じた、

確か今日の夜に、

ノーベル賞の文学賞の発表があるはず、

それじゃ明日の朝は、

この階段を、

村上春樹がタキシードでおりてくるんだなと思うと、

今までぱっとしなかったこの神楽坂が、

渋谷にパルコが出来た時のように、

六本木にアクシスビルが出来た時のように、

墨田区に東京スカイツリーが出来たように、

日本中の注目を浴びる日が来るなんて、

想像もしていなかった、

10月10日。

おかしすぎる、

昨夜のtvでノーベル文学賞は、

村上春樹ではなくて、

フランスの作家が選ばれたはずなのに、

いつものテーブルでコーヒーを飲みながら、

目の前の風景を見ていると、

大勢の子じゃれた人たちが、

階段を上ったり降りたり、

写真を撮ったり、

とりあえずネットで調べてみる事にした、

『フランス人が集う神楽坂に新名所、新潮社の倉庫を使ったラカグ!!』

フランス人は神楽坂をラカグと発音するそうだ、

新潮社とザザビリーグが共同で創った、

アート&カルチャー施設、

設計は隈研吾らしい、

私はコーヒーショップを出ると、

ラカグに向かった、

ウッドデッキの階段を登りきり店に入ってみた、

すでに店の中では、

朝食を食べている人たちが私を見る、

私は店員に誘われるまま、

今日オープンのラグラのテーブルで、

コーヒーを飲みながら、

先程まで私がコーヒーを飲んでいたコーヒーショップを、

眺めてみた。

2014/10/10 03:34 | watanabe | No Comments