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神楽坂の改札を出て階段を駆け上がり、
歩道を左に曲がると、
私はいつものように、
いつものコーヒショプへ、
いつものテーブルにつき、
iPodでいつもの曲を聴きながら,
ちょこっとまぶしい朝日を浴びながら、
窓から見る街路樹のある風景、
仕事場へ向かう前のこの短い時間が好きで、
私はいつも早めに家を出ていた、
ところが最近、
何時も見ていたこの風景に異変が起きていた、
通りの向こう側にある、
新潮社の本社倉庫の風景が、
この一ヶ月前から変わり始めて行った、
グレーのスレートで出来た倉庫の敷地が、
大型重機で整地され、
ある朝突然に、
倉庫の2階から歩道に向かって、
幅が7mもある階段が生まれ始めてきた、
今まで何事もなかったように眠っていた倉庫に、
まるでアカデミー賞の会場のような立派な階段が、
出現し始めた、
そのうちに倉庫の一階部分の小さな窓は取り払われ、
一階のスレートの壁も総て取り払われ、
一階部分の壁がすべてガラス張りに変わって行った、
この一ヶ月というもの、
私の朝のまったりとした時間は、
今日は新潮社の倉庫が、
どんな風に変わるんだろう、
一体これから何を造ろうとしてるんだろうと、
興味津々の出社前の、
毎朝のコーヒータイムになっていった、
10月8日、
ノーベル賞の物理学賞に3人の日本人が選ばれた、
朝のTVで騒いでいたのを思い出した、
私はいつものようにコーヒーを飲みながら、
新潮社の倉庫が変わって行く風景を見ていた、
数人が幅の広い階段に、
花を飾り始めた、
下から上まで総ての階段に、
花を飾り始めた、
10月9日、
とうと私は気がついた、
私が毎日見ていた新潮社の倉庫の改装、
まるでアカデミー賞に使用されそうな階段、
そうだったのか、
これら総ては、
新潮社のNo1作家の、
村上春樹のノーベル賞のお祝い用に用意されていたんだと、
とうとう私は、
この一ヶ月あまりの疑問が解けた、
新生シャーロックのように、
急に謎が解け目の前が明るくなって行くのを感じた、
確か今日の夜に、
ノーベル賞の文学賞の発表があるはず、
それじゃ明日の朝は、
この階段を、
村上春樹がタキシードでおりてくるんだなと思うと、
今までぱっとしなかったこの神楽坂が、
渋谷にパルコが出来た時のように、
六本木にアクシスビルが出来た時のように、
墨田区に東京スカイツリーが出来たように、
日本中の注目を浴びる日が来るなんて、
想像もしていなかった、
10月10日。
おかしすぎる、
昨夜のtvでノーベル文学賞は、
村上春樹ではなくて、
フランスの作家が選ばれたはずなのに、
いつものテーブルでコーヒーを飲みながら、
目の前の風景を見ていると、
大勢の子じゃれた人たちが、
階段を上ったり降りたり、
写真を撮ったり、
とりあえずネットで調べてみる事にした、
『フランス人が集う神楽坂に新名所、新潮社の倉庫を使ったラカグ!!』
フランス人は神楽坂をラカグと発音するそうだ、
新潮社とザザビリーグが共同で創った、
アート&カルチャー施設、
設計は隈研吾らしい、
私はコーヒーショップを出ると、
ラカグに向かった、
ウッドデッキの階段を登りきり店に入ってみた、
すでに店の中では、
朝食を食べている人たちが私を見る、
私は店員に誘われるまま、
今日オープンのラグラのテーブルで、
コーヒーを飲みながら、
先程まで私がコーヒーを飲んでいたコーヒーショップを、
眺めてみた。