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2014/10/10

先日、ドイツに住む妹から「少し早いけど」とプレゼントが届き、もうすぐ自分の誕生日(10/12)なんだと思い出しました。歳を重ねるごとに自らの誕生日への興味がなくなりつつありますが、やはり祝ってもらうと嬉しいものです。

さて、「このコラムと何の関係があるんだよ、祝ってほしいのか?」と思った方もいらっしゃると思いますが、そうではなく、いや、本音は祝っては欲しいのですが、オーケストラなんかでは、リハーサルの日に誕生日を迎えた楽員や指揮者がいると、サプライズでHappy Birthdayを演奏してお祝いする、という習慣がありまして、そのお話です。

もちろん、全員が常に誰かの誕生日を記憶している訳ではなく、だいたいそのセクションの人が事前にみんなに通達し、タイミングを見計らって一斉に演奏するのですが、その日演奏する曲に合わせて調を変えたりします。当然演目が始まると思っていた当の本人は一瞬驚き、そしてはにかんだような、嬉しそうな表情に変わり、感極まって涙する人もいます。演奏が終わると拍手に包まれ、一言感謝の意を述べたりします。ベテランになれば「今日は俺の誕生日だから何かあるだろう」と予測したりしてもいるので、そこであえてずっと演奏せず「あれ?」と思い始めたリハーサル最後のコマで突然演奏したりと、それなりに創意工夫があります。

僕もこの20年くらいそうやって人の誕生日に演奏したり笑顔を見てきましたが、残念ながら誕生日に祝ってもらえるのは楽員、つまりそのオーケストラのメンバーだけ。フリー奏者だと、あまりお祝いして貰える機会には恵まれません。どんなに長く客演している団体でも、その瞬間ばかりは「所詮エキストラは部外者なんだなあ、ホームステイであって、家族ではないんだなあ」と痛感せずにはいられません。

今年の誕生日は中高生のための楽器クリニックの講師ですから、当然誕生日だと知っている人もいない訳で、当然演奏は無いと今から予測出来ます。これはまあ仕方ないので、帰宅して家族にお祝いして貰い、改めて家族の素晴らしさを噛みしめようと思います。

ちょっと切ないお話でした。

2014/10/10 11:34 | sumi | No Comments