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地球の舳先から vol.337
チベット(ラダック)編 vol.2
夜中、0時15分。
ほぼ定刻に、わたしは何よりの障壁「デリー」に着いた。
デリーといえば、もう話しかけてくる人は全員悪者だと思ってかかったほうがいい。
特に観光地で観光客に話しかけてくるようなインド人は信用しないほうがいい。
ありとあらゆる嘘、巧みな連係プレーは世界トップレベルの犯罪のデパート。
その商魂の逞しさを「生きる力」となぜか褒めそやす人もいるわけだが
わたしにとっては世界一、関わり合いになりたくない都市である。
危険なことはいやなのだ。人ともめるのもいやなのだ。静かにしてください。
ラダックまで乗り継ぎの飛行機は6時間後。街に出るなどとんでもない。
国内線のフライトが飛び立つターミナルまで移動して、空港内ホテルで寝ることにした。
エアポートシャトル(無料)の表記のある柱でバスを待つ。24時間運行と聞いている。
怪しいおっさんその1が近づいてくる。制服を着ているからといって安心してはいけない。
「もしもし、ターミナル1へ行くなら、チケット買ってください。」
…無視。無料だって知ってるんだっつーの。
「もしもし」
「ノー」←真顔
「……。」
おっさんその1はカウンターへ消えていった。まったくこれだからデリーは…
このバスは無料だって地球の歩き方どころかここの柱に書いて、あ、、、、、、、、
“乗り継ぎの方はカウンターでバスのクーポン(無料)を入手してください。
それがないと車内でお金をいただきます。”
Σ(゚ロ゚;)
この段階ではわからなかったのだが、デリーの空港は鬼のようにセキュリティが厳しい。
デリーまで来た搭乗券と、乗り継ぐ便のeチケット、パスポートを照らし合わせて
PCに入力し、出てきたレシートのような紙をもらう。これがバスクーポンらしい。
乗り場の前でバスを待っていると、怪しいおっさんその2が現れた!
「バスはここじゃない。18番の乗り場だ」
旅行客っぽい格好のおじさんその2の指す先で止まっているバスは…
シャトルなんかじゃない、コルカタあたりで街中を走っていたようなおんぼろのただのバス。
明らかに疑惑の視線を投げるわたし。振り返って、カウンターのおっちゃんにも疑惑の視線を投げる。
「あれだ。18番」怪しいおっさんその1も言う。
グルか?よくあるらしいよね、そういうの。しかもただいまミッドナイト。
怪訝なまま一番端の乗り場まで歩く。バスにはたくさんの労働者ふうの人が乗っている。
10年前に来たインドとひとつ決定的に違っていたのは、全員がスマホでSNSを見てることだ。
切符売り(車内にいる)、運転手、外国人乗客の3人に行先を確かめ、わたしはそのバスに乗った。
最初にここを教えてきたおっさんその2が、ずっとこっちを見ている。
怪しい。いや、心配してくれているだけかもしれぬ。
ターミナル間の移動なんて短距離だろうと思っていたら、一回街中に出るかなりな距離。
(あとで調べたところ5キロもあるらしい)
どんどん暗い街中に向かっていくバス。一瞬、やっぱり乗ったことを後悔する。
が、しだいに「ターミナル3」という表示看板が現れるようになり、それらしき建物の前で
停車したバスからわたしは転げ落ちるように降りて、一目散に建物内へと走る。
とにかく屋内にいれば安全な気がする。
「もしもし、そっちじゃないよ」
こんな夜中に、閉まった出店の前にいる、手ぶらの怪しいおっさんその3!
聞こえないふりをして、空港の建物の入口へたどり着く。
「ガビーーーーーーーン」 なんと空港壁の掲示にわたしの乗るはずの飛行機がない。
「そこは到着用、出発はあっちのビル…」少し向こうから、さっきの怪しいおっさんその3が叫ぶ。
…。
……。
「センキュー」
小走りに道を渡り、コーナーにあった個室付のきれいなラウンジになだれ込む。
なんていうかもう疲れた。寝かせてください。
こうしてわたしは「デリー」をやり過ごした(はず)。
布団をかぶっても寒すぎる冷房の中でしばし、寝た。