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寝汗が蒸発する際の爽快感を感じながら、僕はベッドの上でムクリと上半身を起こした。
薄暗い部屋で目を凝らし、時計を見ると、5時。
山登りの朝は早いと言えど、目的の赤城山は半日もあれば堪能できる。
つまり起きるのには早すぎる。
が、とりあえず検温だ。
自覚症状としては、若干の頭痛は感じるものの、熱があるような兆候はない。
喉に痛みも感じない。関節も痛くない。
妻を起こさぬようにそっとベッドから下りようと、立て膝をついて起き上がろうとした時、
「あれ?」となった。
視界がおかしい。左に回っている。そしてある程度角度がつくと、もとに戻り、また回りだす。
結局ズッコケながら体温計を取りに行き、脇に差し込んだ。
気が付くと、ほとんど動いてないのに息があがっている。
視界の回転はおさまったが、身体がフワフワしていてじっと座っていても、床が動いているようだ。
一瞬、時間が経ってないから夕べの酒が抜けてないんだ。という考えが浮かんだが、
ピピピッと検温完了の音が鳴った体温計と取り上げた途端にそんな希望的観測は消し飛んだ。
39.4℃
あああ。(終わった。。。)
しばし呆然としたが、ロキソニンを咥えてキッチンまで行き、大量の水を飲んで、ベッドに戻った。
赤城山なら9時に起きても大丈夫。寝よう。
もうそんなことくらいしか考えられなかった。
4時間後、妻となべさんの話声で目が覚める。
「まだ寝てんのかな。」
「そろそろ起こすか。」
そんなようなことを言っているような気がする。
何言ってんだ。こっちは5時に一度起きたんだ。
と意味不明なことを思っていると、妻が起こしにきた。
「よう、大丈夫か?行けるか?」
妻は夕べのやり取りから、僕を案じているようだ。
「あのな、やべえんだ。朝、9度あった。とりあえず体温計とってくれ。」
「・・・・おいおい。だめだな。山はやめだ。」妻は呆れているようだった。
僕はその感じにイラっとして、「いいから、体温計。」と強めに出た。
妻は無言で体温計をぼくに渡すと、なべさんの方に行き、僕の体たらくっぷりを謝ってくれているようだ。
すまないなあ。と思っていると、なべさんが枕元にきた。
なべさんは、完全にキョトンとしていた。
夕べまで元気で、はりきっていた奴が、いきなりフーフーいいながら寝込んでいる状況に、キョトンとしていた。
鏡を鏡と理解できずにウロウロするうちの愛犬のような顔をしていた。
「なべさん、わりいな。せっかく来てくれたのに。」
「うん いーよー。」
なんだそりゃ?と思って笑ってしまった。
妻に、「すまないけど、せっかくなべさん来たんだし、ふたりで行ってきてくれ。」と頼んだ。
が、低山と言えどそれなりに時間もかかるから登るのはやめにして、ふたりで山の麓の湖まで車でまわってくる。
ということになった。
どういうやりとりをしたか、覚えていないが、そういうことになり、
僕はおとなしく留守番、ふたりは出かけていった。
ひとりになった僕は、フラフラとリビングまで行き、むせながら、捨て鉢な気分でタバコを吸い、やはりむせた。
「なべさんすまない。」と思ったが、なんだかなべさんは色々が面白いので、笑ってしまった。
なべさん、すまない。
(続く)
妻。12時間経過。
ザザっと描くところを拾うように描いたが、
ザザっとなのでどこも決まる気配がなく緊張がない。
そろそろ緊張したい。
そのために顔を一度描ききろうと思う。
そのために後ろのカーペットを決める。