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2014/07/28

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パパ、虹だよ、

パパ、虹が庭の中にいるよ、

パパ、凄い凄い、

凄く綺麗だよ。

 

先程まで猛烈な雨が森を襲っていたはずなのに、

それがぴたりと止み、

今度は夏の日差しが濡れた森を照りつけています、

まるで梅雨明けの最後の日を、

知らせるかのようです、

私が、雨の上がったばかりの森の中の作業場に、

チェーンソーを持ち出し、

今まさに、

チェーンソーのエンジンをかけようとするその時です、

山小屋の2階の窓から、

ママの大きな声が聞こえます、

 

パパ、

パパ、虹だよ、

パパ、虹が森の中に現れたよ、

 

私はチェーンソーを止めて、

森の中から見える空を見上げてみますが、

どこを見ても虹は見る事が出来ません、

濡れた若葉から滴る水滴に、

強い日差しが透明な光を放っているだけです、

上を見上げるとママが、

窓から顔を出し庭を見ています、

 

パパ、

虹が私たちの庭にかかってるよ、

小さな小さな虹、

綺麗だよ、

こんな可愛い虹、

生まれて初めてだよ、

 

私は急いで山小屋の2階に駆け上がり、

ママの隣の窓から、

下の庭を見下ろすと、

本当に小さな小さな虹、

幅は30m程度でしょうか、

森の中の私たちの庭にかかっています、

小さな小さな虹が、

私たちだけしか見る事の出来ない虹が、

 

庭の虹が消え始めると、

森の中から日暮らしの鳴き声が聞こえ始めます、

夏の始まりを、

私たちに伝えにきたように、

鳴き始めています。

2014/07/28 10:44 | watanabe | No Comments