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地球の舳先から vol.328
東北(2014)編 vol.4
周到に予約を入れていたのは、「美味しんぼ」でも世界一と描写された
焼き魚が名物の「福よし」さん。
囲炉裏で焼く焼き魚は、魚の種類だけでなく、個体差を加味して
焼くときの串まで変えるらしい。
遠くからでもすぐわかるほどに港の近くに灯りを灯す名店。
ご主人の手作りという、ホヤのランプがオレンジ色に店内を照らす。
話には聞いていたがメニューには値段がなく、
予算を言ってコース(3000円から6000円)を組んでもらうのがいいらしい。
ちなみに品数は同じで内容が違うとのこと。
「はじめは、3000円くらいで、やってみますかね」とご主人に言われ
わくわくと待つカウンターの端っこ。
壁には、カツオ漁の写真が飾ってあり、そもそも「一本釣り」の意味すら
よく知らなかったわたしに、いろいろと教えてくれる。
漁の仕方から、漁師の生活、港の風習、etc..
いずれももちろん、はじめて聞く話ばかりで大変おもしろい。
最初に出てきたのが、上品に甲羅に盛られた蟹味噌にもろきゅう。
そしてイカとイカわたを合えて卓上で火を入れる名物「腑焼き」である。
これが主役級の美味さで、これだけで結構満足してしまう。
当然、ビールはお酒に持ち替えて。
ここから刺身が出てくる。
水揚げをようやく迎えたカツオに、珍しいところだとマンボウの胃を湯がいたもの。
どんな味がするかと思いきや、コリコリして、貝のよう。
3000円というのはコースだと底値のパターンなのだが、
そのなかでもここでしか食べられない珍しいものを出してくれようとする
ご主人の、言葉無き気遣いにぐっとくる。
続いて、ぶりとさんま。もう胃袋は十分目に近い…。
箸の原則を察してか、「あと、焼き魚が。そこまで、いきますから」
とあるお客さんを見送ったご主人が、「恰好いいなあ」とその背中に何度も呟いていた。
「あれ、去年、カツオ水揚げナンバーワンの船の漁師」という。
漁をして気仙沼に寄港する漁師と、その漁師が捕ってきた魚を使う料理人、
そして、その料理を食べに定期的に来訪する漁師。
なんていうか、ものすごい蜜月感。と、お互いの敬意をひしひしと感じた。
最後のお料理、焼き魚が出てくる。ホッケ。
いや、ホッケと侮るなかれ。
中の一番太い骨まで食べられるくらいカリカリなのに、中身はふっくら。
むしろ、焼きの技術を見せるために、あえてよく知られた魚を選んでるのではと
思ってしまう。
とにかく何かしらの皿をあけなければ、と刺身に集中力を注いだわたしにサービス。
「今日水揚げの、帆立のヒモね」なんて言われたら、これまた食べないわけにはいかない。
んー美味しかった。
味ももちろんだけど、ご主人の話もおもしろいし、人柄が店全体に流れているような。
みんなでワイワイ囲炉裏前も楽しそうだけど、カウンターでじっくりもおすすめです。
結局、食べきれずに、弁当箱を渡され、自分で好きに詰めて帰る。
ホテルで夜食、いや、晩酌にならざるを得ないコース…
またひとつ、寄りたい店が増えたのでした。