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2011/03/22

君がウェディングドレスを着て、
僕の隣にいる、
僕に向かって微笑む、
僕は君の幸せそうな口元をずっと見ている、
瞬きするのも忘れてずっと見ている、
君を見つめる僕は夢の中、
これが夢でない事を、
なんどもなんども自分に聞いてみた、
君の唇に触れた時に、
夢でない事に気が付いた、
君の幸せな顔を、
一生僕の中から忘れない事を誓ったんだ、

君の作ってくれたハンバーグ、
あなたに頑張って欲しいからと言って、
特大のハンバーグを作ってくれた君、
テーブルの上の特大のハンバーグ、
ライトに照らされてとても美味しそうだったのを覚えているよ、
僕がハンバーグにナイフを入れるのを、
君はじっと幸せそうに見ていたね、
ハンバーグからナイフを離すと、
真中がまだ赤かった特大のハンバーグを見て、
君はとても悲しそうな顔をしてたね、
君の笑顔は僕の顔を見上げた時には、
泣きべそに変わっていたね、
そんな君の幸せそうな泣き顔を、
一生僕の中から忘れない事を誓ったんだ、

君と話した月のこと、
君と話した夕日のこと、
君が教えてくれた花の名前、
君が流した涙の訳、
君が喜んだときのえくぼ、
なんでこんな時に、
僕の頭の中は君ばかり浮かんでくるんだろう、
僕の頭の中は君の事でいっぱいだよ、
何も考えられないほど、
僕の頭の中は君の事で溢れそうだ、
なんでこんな時に、
まるで僕の頭は君の為にあるみたいだ、

奇麗だった海、
穏やかだった海、
僕が生まれ育った海が、
今黒い壁になって僕の背中に迫ってくるのを感じる、
僕は怖くて振り向く事も叫ぶ事も出来ない、
口の中は乾ききって唾も出ない、
心臓が破裂しそうだ、
僕の足は勝手に動き続ける、
山に向かって僕を運んでいる、
なんでこんな時に、
僕の頭の中は君の事で溢れているんだ、
何も見えない、
見えているはずなのに何も見えない、
目の前には君の笑顔しか見えない、
君が頭の中に溢れ続ける、
僕は病気かもしれない、
かなり重傷かもしれない、
ガレキにつまずきながら、
高台の下まで辿り着いた時に、
僕の身体は突然黒い壁の中に引きずり込まれた、
ガレキが顔にあたる、
皮膚が弾ける感じがした、
流されて来た車が身体にぶつかる、
左腕が変な音を立てて力が抜ける、
そんな時でも僕の頭の中は君の事で溢れそうだ、
気が付くと僕の右手は高台の斜面に生えている草を、
必死でつかんでいた、
僕の足を黒い壁が海の中に引きずり込もうとしている、
僕の右手は草を必死でつかんでいた、
君が僕の頭に中に溢れそうだ、
君が僕に話しかける、

『2人だけだから』

私達は2人だけだから幸せになろうねと、
君が僕の頭の中で、
笑顔で僕に語り続けている,

『2人だけだから』
『2人だけだから』
『2人だけだから』

空を見上げると梅の木に白い花が咲いていた、
君の好きな白い梅の花、

『2人だけだから』

僕の頭の中の君が何度も何度も、

『2人だけだから』

僕は笑い顔にならない笑い顔で、
君に返す、

『2人だけだから』

僕は右手でつかんでいた草を思いっきり握りしめ、
黒い壁に吸い込まれないように、
必死で右手で草を握りしめて離さなかった、

『2人だけだから』

君が僕の頭の中でずっとずっと語りかけてくれている、

『2人だけだから』

2011/03/22 12:34 | watanabe | No Comments