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以前『エレベーターの中での出来事』でもちょっと触れたけれど
NYの西58丁目にあるHudson Hotelがとても好き。
マンハッタンという土地柄、部屋は決して広くないけれど、
看板のない入り口をエスカレーターで上がると
日がサンサンと照り緑溢れる中庭のあるロビーラウンジが現れる。
住んでいる時は地元のホテルに泊まる機会なんてないので
いつも散歩しながら見る、その“扉”だけを見て、
絶対好きなホテルに違いないと、直感だけの確信を持っていた。
念願叶って初めてチェックインした日はあいにくの雨で、
ロビーの真ん中のその中庭にシトシトと雨が降り注いでいた。
建造物の装飾が古めかしくて、昔行ったロンドンの街を思い出す。
翌日は晴れていて、雨ですっかりほこりも落ちたのか
空気が澄んでいて、中庭はこうである、というものが出来上がっていた。
ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の中庭にも似てて
絵画のような、美しい絵になる空間。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館もまた、以前コラムでも書いたように
わたしのお気に入りの場所のひとつである。
通り沿いの狭い、小さな扉だけの外観からは想像がつかない空間。
なんだか次元がおかしくなって、別世界に迷い込んでしまったのではないか、
というのがその時の印象で、でも素敵に違いないと思った直感が当たり
とても嬉しかった。
思えば長く住んでいた54丁目のアパートも、
居間の窓から中庭の木々が緑豊かに茂り、表の喧騒など全く聞こえない、
もしかしたら外には何もなくて、自分しかいないんじゃないかと思うような
不思議に閉じられているのに安心感のある空間だった。
好みというのはそれほどぶれず、生きていると
そういうものが一個一個増えていくものなのだろう。
近々またNYに行く機会が訪れるけれど、今回は別のホテルの宿泊になる。
いつかまた泊まりたい、と思うけれど、それはいったいいつのことになるのか、
そしてそれまであのホテルはあるのかしら、とか思う。