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地球の舳先から vol.319
パリ2014編 vol.3
始発が動く前のRER空港駅には、明らかにヤバい人種がたむろしていた。
だいたい、朝の4時から手ぶらで空港駅にいること自体、おかしい。
ずいぶんと治安が悪くなったものだった。
しかも次から次へと目が合ってしまう。この電車に今日乗るのはギャンブルだった。
治安が悪いのはわかっていたので、街までの直通(ノンストップ)に乗ろうと
思っていたのだが、始発駅の段階でこんなのがたくさんいたら乗っただけで手遅れだし
だいたい、それでもちらほらいる観光客はほとんど始発列車に乗るだろうから
ぼっちでノンストップの列車を待つほうが危ないかもしれない。
結局、始発の列車に乗り、何もなかったものの、
ちょっと次を考え直す25分間だった。
レ・アール駅で電車を降り、とぼとぼと行きつけのホテルへ向かう。
地元の人に聞いてもあまり知らないホテルはまだ朝が早すぎて
ホテル名に5つ星が銘打たれた看板さえ、厚い扉の内側にしまっていた。
本当に、人に知られたくないのだなあ。
近くのカフェで説明もよく聞かず「スペシャルパンケーキ」をオーダーすると
25ユーロでとんでもないものが出てきた。まあ、ビタミンは摂れそうだけど…。
6時になるのを待ってホテルへ向かった。
チェックインは15時、それまで、天蓋つきベッドのあるプールサイドで
寝かせてもらおうと思っていたが、「特別に」と部屋をあけてくれた。
冬から100ドル値上がりしていたので、もうユーロ安のときでないと泊まれないだろう。
それでも、その「いつか」はきっと必ず来る。
スタンダードより下の「mini」という部屋はひとりで泊まるには当たり前に十分で
中庭のテラスでオムレツやベネディクトを食べ、コーヒーを飲む。
誰もいない早朝のプールは広いミストサウナも貸切状態で
疲れた体をほぐすために熱心に泳いだ。
このままここで沈んでいたい、ここへ来るたびそう思う。
エントランスで香るオーデトワレに包まれて酔い、
何時間いても気にしない激しくフレンドリーなスタッフのいるカフェでソファに埋もれる。
久々に、ペンで(つまり、パソコンやスマートフォンではなく、手で)ものを書いた。
もうどこへも行きたくない、と思ったが、
パリにはわたしを時間で拘束するものがひとつだけあるのだった。
踊りに行かなきゃ。
かぐわしいエントランスを抜けて、サントノーレ通りを東へ。