窓辺に小さな雪だるまをつくってみました。
皆さんこんにちは,そしてメリークリスマス!
24日からクリスマスホリデーになり
ちょっと一息つけるな と喜んでいたのも つかの間。
早速39度の熱を出して寝込むという 悲惨なイブを過ごしてしまいました。
幸い 今日25日の朝は だいぶん気分が良くなりました。
このまま治ってくれるとよいです…
ロンドンのクリスマスは非常に静かで,25日には地下鉄もバスも走りません。
タクシーだけはありますが,特別料金。本数もすくないので前もって予約をしないといけません。
家族で過す日,という事なのですが,わたしのような一人暮らしが友人の家にいこうなんていうと,一時間かけて徒歩で,ということになります。
今でこそ そんなクリスマスにも慣れましたが,初めてロンドンで迎えたクリスマスは非常に悲惨でした。
交通事情がこんなに悪いなんて知らなかったものだから
仕方なく地図を片手に地元を3時間くらい 孤独に散策して暇をつぶしたりしていました…。
日本の 華やかな, イベントとしてのクリスマスとは
全く正反対なイギリスのクリスマスの現実です。。
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さて 今週は,『イラストレーションについて考える』の後編をお届けしたいと思います。
前回,イラストレーションは挿画だけのことではなく,
もっと広い意味で 物事を伝える媒体と言えるんじゃないかな,という わたしの考えをお話ししました。
もう ひとつ例を見ながら,掘り下げてみたいと思います。
これは,油絵? 抽象画?
実は 写真なんです。
わたしたしはいつも,何かあたらしくて 特別な物を求めがち。
「普通のものは つまらない」
だから
「こんなもの 見た事無い」
そういう事柄に遭遇した時の感動というのは,確かに大きなものです。
でも その反面,
いつも自分の周りにある事柄には ずいぶん鈍感になっているような気がします。
つまらない 普通の ありきたりな日常を
少し視点を変えて見る事ができたなら…
毎日がもっと 楽しく刺激的になる気がしますよね。
それは難しい事ではないはず。
ただ,視点を切り替えるスイッチを見つけ出す その作業が必要なだけ。
このシリーズは,そのスイッチをつくりたいという思いからできた作品です。
アート系の大学の構内では 毎日 あちこちで目にする絵の具の染みや汚れ。
うんざりするほど 当たり前な光景です。
でもその一部分を切り取って,写真に収めてみると
何とも言えない,抽象画のような画面が現れました。
本当に無作為についたマークだから 抽象画よりも抽象的
たくさんのアーティストの歴史が積み重なってできた 副産物的な模様。
明日にはまた違う染みが付くかもしれない,今日この瞬間だけこの状態にある,瞬間的な色の構図。
意図されたテーマの無い画面,見るひとが自由に想像できる,絵。
沢山の要素が集まった,不思議な画面。
そこには きれいに描かれた絵画とは違った「美しさ」があるのではないかと思います。
そして 何よりもおもしろいのは,
ちょっとした,どこにでもある汚れや染みを見る目が変わること。
もちろんこの作品は,一般的な「イラストレーション」とはずいぶん趣が違うけれど
日常の中にも 少し視点を変えるだけで おもしろいものが沢山見つけられる,というアイデアを,見るひとに伝えるという意味で,
やっぱり「思いを伝える媒体」としての「イラストレーション」なのだと思うのです。
逆に,伝える内容を持たない絵は,たとえ絵であろうとイラストレーションではない,ということ。
平面に描かれた絵であろうと,立体であろうと 写真であろうと 動画であろうと
それが 何かの真実に光を当てる,イラストレートするものならば
それをイラストレーションと呼べるのだと思います。
もちろんこれは わたしがイラストレーターとしての自分の作品を説明するための
非常に個人的なコンセプトなので,
こんなふうにも イラストレーションについて考えられるんだ,程度に思っていただければと思います!
本当に,こんがらがった文章で恐縮ですが…
「イラスト」のイメージが 皆さんの中で少しでも変わったなら うれしいです。
来週からは もっとライトなお話をします!
それでは,また。
「Footsteps(Chihiro Sasaki 2010)」足音のアニメーション。
これって イラストレーション?
わたしの定義では「イエス」です。
こんにちは。皆さんお変わりありませんか。
真夜中のロンドン,マイナス3度。
午後に降った雪が 薄らと地面を覆い
その上を 冷たい夜風が吹き抜ける。
絵に描いたような 真冬の夜の情景です。
悲しいかな,この街の公共交通は 非常に悪天候に弱く
先週10センチくらい雪がつもった時には 地上路線の電車が殆ど動きませんでした。
東京でいえば東京駅や上野駅のような,長距離路線の電車が走るVictoria駅 からも,一本も電車が出ないという事態。
もちろん,道路だって(車はチェーンなんて使わない)大渋滞。
これが21世紀の,イギリスの首都の現状でいいのか,と
散々 避難と嘆きの声が上がっていました。
今週末もだいぶん降ると言われていますが
先週の反省を活かして 少しはまともに 都市機能を維持して欲しいものです。
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『イラストレーションについて考える 前編』
さて 今日は,“イラストレーション”の定義について ちょっとわたしの考えを書いてみようと思います。前後編の二回に分けてお届けする予定です。
全く個人的な意見なので,ひとつの考え方として捉えていただければ幸いですが
イラストレーション?挿絵でしょ,から,ちょっと広がっていただければ,という思いを込めて お話しさせていただきます。
イラストレーションというと,あなたは何を思い浮かべますか?
本や雑誌の挿絵,新聞の風刺画,キャラクターグッズの絵,広告の絵,取扱説明書の図…。
何となく,平面で 軽いタッチで描かれた絵(ドローイング)を想像する方が多いのでは無いでしょうか。
特に 日本語の“イラスト”という言葉は,まんがやアニメーションなどからの一枚絵,といった意味合いで使われる事が多いように思います。
そして,油絵
や彫刻などと比べると,『芸術』として というより,もっと商業的で大衆的な絵,そんな印象…
どうでしょう。
例えばこんな感じのものは,きっとイラストレーションだ
確かにイラストレーションというものは,大衆的で商業的な視覚表現を主に指します。
でもわたしは,イラストレーションという括りの中に 例えば出版物の挿絵以外にも,もっとコンセプチュアルな作品や,三次元,四次元の表現が含まれてもよいと考えています。
つまり 立体作品や映像作品,パフォーマンスなど です。
ただし,「見るひとに必ず伝わるもの」という前提の上で。
Illustrationという単語ついて考えてみると,ちょっと伝わりやすいかもしれません。
英語のIllustrate‘イラストレート’という動詞は,「イラストレーションを描く」の他に,「わかり易く,例を挙げて具合的に説明する」,という意味を表します。
Illuminate(イルミネート)「光を当てる,明るく照らし出す」と同じ語源だそうです(Oxford dictionary)。
「ある事柄に光を当て,それを分かり易く伝えること。」
その手段が,本来の“イラストレーション”の意味です。
そう考えると,単に挿絵だけを指す言葉ではないようですね。
わたしの “イラストレーション”の定義。
①伝えたい内容
②伝える人(自分)
③伝える相手
これらを繋ぐもの,その媒体がイラストレーション
この役割を果たす限り,あらゆる表現手段がイラストレーションに成りうると考えます。
例えば,本稿トップのアニメーション。
日常の中の音,普段は物体とともに自然に存在する音を,その元々の場所から切り離し,
純粋にその「音」の特徴から,動きや形をイメージして動画をつくる,というテーマで創った作品です。
普段と違う方法で五感を使う(視覚+聴覚から,聴覚のみにする)事で,新しい世界が見えてくる。日常の中の,同じ現象が,感じ方を変える事で 非日常になる。
その変化を促す きっかけになる作品。
それは広い意味でのイラストレーションなのだと考えます。
さて,ごめんなさい,だいぶん 複雑な話になってしまったかもしれません。。。
長くなってしまいますし,もう一つ二つ例を挙げた方がわかり易いと思うので
次回,イラストレーションについて考える,の 後編をお届けしたいと思います。
今回は,こんな見方もありなのか,と なんとなく思っていただければ それだけで嬉しく思います。
それでは また来週お会いしましょう。
仕事場からの帰り道。
ようやくたどり着いた地元のバス停,その近くのお花屋さんで
クリスマスツリー用のモミの木をじっくり選んでいる,若いご夫婦。
肩までくらいの大きさで,ちょっと上向きに腕をそらしたような枝。
彩る緑の葉っぱが美しい。
その木が華やかに飾られる,温かい家庭の片隅を想像する。
大きなツリー,小さなツリー
沢山のごちそう,素朴な団らん
山のようなプレゼント,ささやかな一包み。
大きさも賑やかさも それぞれだけれど
皆が いつもと少し違う,うきうきした気分になれる
そんな季節が訪れています。
実際のクリスマス当日はというと…
タクシー除く全交通網が完全停止するなど,なかなか過酷な現実が待ち受けているのですが,詳しくは また次の機会に…。
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みなさんこんにちは。 一週間お変わりありませんでしたか?
今週は,もうすこし自己紹介の延長を。
仕事としてのイラストレーションについて 少しお話ししたいと思います。
さて,巷では順調に 年に一度の大行事に向け準備をしている様ですが
わたしの勤める出版社には 残念ながらあまり関係のないお話。
本日ようやく 年内に発行する号の表紙絵を終わらせて
ちょっと安心したところではあるのですが
(実は昨日出してOKだったはずなのに 今朝になって一部にダメ出しがあり,放心状態に陥りながら 急遽手直しすることに。大変な一日でした。)
すでに年始発行分の記事が手元にあるので 一息つく時間はなさそうです。
夏に卒業してから,各種デザイン会社や出版社にCV (Curriculum vitae/イギリスでは履歴書をこう呼びます)を送り続け,転がり込んだ経済/ビジネス雑誌の出版社に勤めてもうすぐ半年。
経済/ビジネスに関しては 予備知識などほぼ皆無の自分。
専門用語だらけの英語論文を読みこなす事そのものに ずいぶんと苦労しましたが,
ひと月に約10本も読んで 30枚近くのイラストレーションを描くうち
だいぶん慣れてきました。(まだまだ のろのろ,ですが…。)
The European Business Review最新号の表紙。
挿絵描きの流れを 簡単に追ってみます。
①論文を読む
↓
②挿絵の数,内容を考える
↓
③アイデアスケッチを編集ヘッドにプレゼンテーション
↓
④採用案スケッチをスキャン/レイアウトをデザイナーと決める
↓
⑤本描き
↓
⑥スキャン/編集/レイアウトに埋め込む↓
わたしの場合 4〜5本の論文をいっぺんに考え,約2週間で完成します。
論文につき平均2〜3枚の挿絵を描くので,
その間に10枚超くらい仕上げる計算。
なかなかシビアなスケジュールですが 楽しく,程よく慌ただしく
日々描き続けています。
ただ 学生時代つくってきた作品や,個人的な作品に比べると
当然 内容や技法などの制約が多く,戸惑う事もしばしば。
せっかく描きあげた作品も,ダメ出しが出れば大幅変更ということも。
「制限のある中で いかに自分らしく 作品がつくれるのか?」
職業絵描きの 永遠のテーマになる気がします。
そして
「隙を見て 個人的な作品も作りためるのよ。」
ここでも個展をやりたい という野望を叶えるべく
駆け出しイラストレーターは 今日もインクを散らして走ります…。
それでは,みなさん よい一週間を。
また来週お会いしましょう。
窓辺。
朝日の差す煉瓦の町並み。
部屋の温度計に目をやる。
白い溜め息が出る。
今年のイギリスは記録破りの寒さ。
南部にあって比較的あたたかいとはいえ,本日のロンドン,マイナス3度。
わたしの住む屋根裏部屋は,まだ11月だというのに大層な冷え込みよう。
絵の具が凍ってしまいそうです。
JunkStageをお読みの皆様,はじめまして。
ささきちひろ と申します。
このたび,こちらのスペースをお借りして
英国ロンドンより,イラストレーションと日々の便りをさせて頂くことになりました。
日本の4年制大学の文学部を退学して
絵筆を握りしめ,この街にやってきてから5年ちょっと。
ロンドン芸術大学を経て,今は経済雑誌などの挿絵の仕事をしつつ
フリーでの作品はファインアート,アニメーション,絵本など様々なメディアで制作しています。
イラストレーションは単なるドローイングではなく,広い意味で「思いと相手を繋ぐ媒体」。
日常の中に新しい価値観を見出すこと。
ふと立ち止まり自分の周りの世界を見直して,小さな発見をすること。
視点を変えるスイッチを見つけ,そしてそれを誰かに伝えること。
いろいろな手法を模索しながら,視覚によるコミュニケーションの可能性を広げていきたいと思っています。
このコラムでは,駆け出しイラストレーターの日常と
ロンドンやその周辺のお話,アートシーンを
イラストレーションとともに毎週お届けしていく予定です。
イラストレーションに興味のある方,アート留学や暮らしが気になる方,
うーん ぜんぜん興味ないかも,という方にも…
じんわり イラストレーションって何?から,
ここの情景や暮らしの伝わる連載になればと思います。
描いてばかりで書き慣れないわたしではありますが
どうぞよろしくおねがい致します!
*ポートフォリオ/ホームページ