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2013/12/02

「デビューコンサート」だがあえて「選手権」と自覚しておこう、と思う。
パンフレットに挟まれた、投票を促すプリントに「選手権」という文字がやはり印刷されていたからだ。

先日にホール入りさせてもらい、1人ずつ時間をたくさん頂き、直前にも思う存分歌わせていただいたにも関わらず
これほどまでにない緊張が身体を襲った。

それほど馴染みのない土地の、自分の身の丈に合わないのではないかと思うコンサートホールで歌うこと。
そして、ただ歌うではなく今年度所属したばかりの「新人」…自分の所属させていただいた団体の名前を背負って舞台に立つこと。

観客は審査員と同じような視線。
「一番応援したくなった歌手」に一票を投じるという、技術の点数でもなく、一番心に届いた歌い手に投じるシステム。
下手袖から出た瞬間に、客席の真剣な空気で、歌う前からいつもよりたくさん脇汗をかいた。

出だしの一声が震えたものの、ホールが私を助けてくれた感覚があり、自分の身体をこんなにも大きいホールに預けてしまおう…と咄嗟に思ったのだった。

前日に、ずっとお世話になっているベテラン歌手の方が心配してメールを下さったのだが、
「今回はあまり丁寧に歌おうとしない方がいい
まだ技術がないので、少々失敗してもいいから思いきり歌わなきゃ、あなたのいいとこ何も出ないよ
若さと持ち声(可能性)だけみんなに見せつけておやりなさい
レッスンは修練、本番は勇気だよ」

これは先日の団体のお披露目コンサートの反省点もある。
「技術に慎重になりすぎ怖がるといいところも見せることはできない、練習した部分は身体がきっと覚えているのであとは舞台上で殻を破ってしまう」
ということ。

自分の中で、我を忘れて歌うことは今までなかったのだが、こんなに頭が真っ白になりかけながら歌ったのは久しぶりだった。

この企画を考案された方と個人的にお話できた
「オペラ制作にはかなりの予算がいる。
新人や若手は舞台に立つ機会をもつのはなかなか簡単ではないし、東京でお披露目コンサートを行っているのは知っていたけど、
地方で二団体合同で聴ける機会もないし、歌う機会もないでしょう?」とおっしゃった。

一つの舞台、ステージでお客様の心に残らなければ「また聴きたい」次のステップにも繋がらない。
今回の企画は投票の一番多いものから上位数名がまた来年歌わせていただけるというもの。
まさに、これからどんな団体でもぶち当たる壁であるな…と思った。

小さく無難にまとめたありきたりな演奏より、技術が未熟なら未熟で自分の出来る限りの力で心に残る「いい歌」を届ける演奏を…と舞台に立った本番だった。

2013/12/02 04:14 | uika | No Comments