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2013/10/30

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「寒気立つ暗がり」NO.1〜3

人間の、思い上がりや自惚れに根差した安易な「人間解釈」が
いつしか自己の弱さを忘れ、自らの力を過信しながら
「それ」を創りあげたとき、本来備わってもいなかったはずのものから先に
軋み、崩れる.自己の弱さを忘れる、という弱さを忘れた者へ訪れるもの.
やがてそこに「暴力」の匂いが漂い始める…

決して消すことの出来ないものを身に纏ってしまう.

前回のコラムからちょっと文体を変えたというか
ちょっと紋切り型で書いてみたいと思ったりしていて…
文体は統一したいと思うけれど、どうしようか少し迷いながら
なるようになるかな…と書き出してみる.

個展というステージで、ほとんど今の自分の現状というものを
晒し切ったかと思うから、組み写真とかを展開しながら書いてみたい.
また言わなくてもいいこと、書かなくても良いようなことを
書いてしまいそうな気もするけれど…

写真展期間を通じて、穏やかでとか、繊細で..
という言葉を言ってもらえたりもしたけれど
それとは別に、触れずじまいではいられない側面、繊細、細やか…
そんな言葉の真裏に棲む、もっと殺伐としたものたちが
何かに感づいたかのように、ざわざわと音を立て始める.

この辺りの作品群は、「知らない場所」「異郷」ということが
念頭にあるシリーズで、ここに写る光景はここが福岡でも東京でも
どこだって良いような全く関係ない無縁のものたち…

あえて何処かというなら、どっかの山、どこかの廃材置き場というくらいのもので
錆びた鉄の匂いと湿った雑草、捨てられた塵たち.
「それ」が現れるのは、決まってこういう何処かも解らないようなどうでもいい場所.
そんな場所の暗がりで「それ」は息を潜めてやがて漂い始めるのを待ち続けている.

何かをここで感じたから撮ったとか、こういう場所で撮ってみたかったとかより
もっと別の、どうでもいいような場所、どうでもいいような×××
そんな何の気持ちも感じないところへ入り込んでただ写真を撮る
放り込まれてただ撮られる…冷たいものが周囲を包み込んで覆っていく.
想い、切なさ、痛み、温もり…そういうものからどんどん離れて行きながら
何か別のものにどんどん近づいて行く感覚.

その冷たい暗がりの先で待っているものを僕はよく知っている
そこに漂うものが何と呼ばれるものかも…

誰しもがそこを避けたり躊躇うような線を、
写真というものは爪先立つだけで軽く越えてしまう.
そういう気配を纏ってしまうこと、孕み漂わせてしまうこと
それを写真のせいにしてしまう自分に絶望を感じる、そして打ちひしがれる.

「距離感」をずっと意識しながら4年を費やした作品を一区切り終えた今
ほんの一瞬爪先立つだけで見えてしまう、越えてしまう写真というものに
恐れを感じ、築いて来たはずの距離感は喪失する…
同時にまたあの暗がりにいる者共が嘲笑う声を聞くことになる.

「知らないところへ、来た」

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そしてそれは、纏わり付いて消えることのないものになってしまう.

「われわれの美徳は、まずたいてい、衣装を替えた悪徳にすぎない」
箴言と省察/ラ・ロシュフコー

2013/10/30 12:39 | hideki | No Comments