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2013/10/04

よく聞かれる質問です。

「なんで、匂いのアートを始めたんですか?」

じつは、いろんなきっかけがあります。

その(1)
「出産したら、それまでのようにコンピュータを使った作品を作る時間がなくなった」

出産したのは約10年前のことです。それまではメディア・アートという、サイエンスやテクノロジーを駆使した表現をやっていました。

でも息子が生まれ、いわゆる専業主婦になりました。息子は私がコンピュータに向かうと、とても不機嫌(^^;) 制作なんて時間はとても取れません。それなら、1日に3回は主婦の義務として立つ台所をアトリエ代わりにして、できることをやろう。それは料理のアートでした。そこから発展したのが、匂いのアートです。

料理は好きだったので、食に関するものであれば、触覚でも、味覚でも、嗅覚でも良かったのだと思います。でも、嗅覚の作品を作るきっかけがあり、そのまま嗅覚の道を進みました。

その(2)
「脳がコンピュータのような割り切りができなくなり、もっと直感的・感覚的なものを求めるようになった」

出産したお母さんならわかると思いますが、母と子のコミュニケーションのアナログさ、楽しさ、そしてその深みといったら! コンピュータやインターネットが、すごくチャチでつまらないオモチャに見えてきてしまいました。

それに母子のコミュニケーションで嗅覚が重要な位置を占めるのは、いうまでもありません。じぶんのパーソナルな状況を仕事にも生かしたい、母親には母親の表現の方法がある、と思いました。誰もやってない表現をやるのがアーティスト。みんながやっているサイエンティフィックな「メディア・アート」という手法だけでなく、女性らしい、母親らしいアプローチをとりたくなってきたのがこの時期。

その(3)
「オランダの外国生活で、言語が通じないフラストレーションがあった。匂いであれば、ダイレクトに通じる、世界共通言語」

作品制作をしたり発表したりするときに、意外にも「言葉」というものを使えなければ作家は生き延びられません。たとえば資金調達が必要なとき。誰も見た事の無いものを作る意味を説得せねば、お金はどこからも出て来ません。それに、作品のコンセプトを説明するのに、文章が書けtないと美術館だって困ってしまいます。

なので、意外にもオランダ生活でのアート活動は、言葉の苦労を伴うものでした。それがある意味イヤになり、「ええい! 匂いなら、どうだ! これなら、有無を言わさず、わかるだろう!」・・・と匂いの世界にまっしぐら。

匂いだけに集中して制作して、とても良かった。世界的にもそういう作家は珍しいから、いまでは世界の「嗅覚アート・シーン」ではそれなりに有名になり、世界中からお呼びがかかるようになりました。なので、たとえば仕事が無くてもまたすぐ来るだろう、と安心してられます。(実際は、「たまには仕事の切れ目が欲しい」ほど。)

とにかく、ポジティブに生きてきた結果だと思います。状況に甘えない。そして、周りのせいにしない。文句を言わない。そのとき、自分のできることをやる。それだけは貫いて来ました。

もうちょっと突っ込んだ、「匂いのアートをやりはじめたわけ」のストーリーは、「家事・育児で感性を磨く」にも書きましたので、そちらも是非参考にしてください。
http://www.junkstage.com/maki/?cat=3&paged=3

2013/10/04 09:41 | maki | No Comments