« 同学園祭’13 | Home | 夜空の輝きとささやき »
先週水曜日に渋谷でオープニングを迎えた「嗅覚のための迷路 vol.1」。
嗅覚のための迷路は、数年前からずっと作りたいとは思っていました。鼻でナビゲーションするための空間を、作品としてこれまでいくつか作って来たので、当然の流れともいえます。
もともとわたしたちの嗅覚は、犬と違って、空間ナビゲーションとしては頼りないものです。だからこそ、迷路でもっと混乱してもらおう!そんな意地悪で楽しい構想なんです。
そんなところに、渋谷の新しいアートスペースであるアツコバルーからのお話しが。20年来の仲のキュレーターからのお話でしたので、とても嬉しかったです。
そこは、予算も限られてるけれども、モチベーション高い人たちが集まっているギャラリーです。一緒に空間をシェアした他2人の作家にも興味があったので、喜んで仕事させていただきました。ヨーロッパでやってきた経験から言えることは、予算が潤沢にある立派な場所でなくても、スタッフのモチベーションが高ければ、充実感や達成感が高いということ。
作家だって、人間です。見てくれる人や応援してくれる人がいるからこそ、新しい物を作れるのです。いつもながら展覧会での発表は、体の芯から何かを絞り出すような感じで、けっこうヘトヘトになります。今回も鍼治療に行ってしまったほど。
でも作品をみんなが楽しんでくれる、新たな発見をしてくれる、それで感激してくれる、その感想を伝えてくれる。そんなことだけでアーティストという人種は生きていけるのです(笑)。
しかし震災があったときは、さすがにアートなんて生命の危機の前にひれ伏すしかないのだろうかと悩みました。
けれどもやはり、人は水や食べ物だけで生きていけるわけではない。救助する人もいる。水や食糧を運ぶ人もいる。そんな中で、アーティストの使命とは、私なりの回答は「美をもって、感動や、楽しさ、そして生きる歓びを提供すること」。人が生きるには、希望や精神性の豊かさが必要です。希望を見いだしにくい混沌とした世界にこそ、一筋の光を照らす者が必要です。(詳しくはジャンクステージ5周年記念誌にこのテーマをもっと突っ込んだ文章を寄稿しましたので、ご覧下さい。)
このアツコバルーという場所も、アツコ・バルーさんが同じ想いをもって、「震災後の東京に生きる今・ココの感覚をシェアするために」と考えて作った場所です。すばらしいパトロネージです。
あるゲストが「匂いは儚い、刹那的な現象。だからこそ印象に残る。」と述べてくださいました。確かに私の作品に残せるものがあるとすれば、みなさんの記憶の中にのみ。ぜひ「いま、ここ」の瞬間を感じてください。
展示は29日(日)まで。
アツコバルー
http://l-amusee.com/atsukobarouh/