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先月末で現役引退したので、選手目線でのおもしろさは、日が経つにつれ忘れてしまいそうです。
ちょっと寂しいですが、10年続けてきた今だから書ける競技のおもしろさをお伝えしたいと思います。
今日はまず1点目、「思いがけず頭を使う競技」というのを説明します。
泳ぐシンクロに比べ、体すべてが見えてしまうので、すべてのボディーパーツの動きがシンクロする必要があります。
踏むステップ、腕のつなぎ方はもちろん、手の平や腕の上げ下ろしのニュアンス、顔の向き、表情、肩や腰の向き、
歩幅、フリーレッグの使い方といったものが、曲の細かいテンポまで定められた上、
16人の隊形の中での自分の位置、リンクの中における隊形のあるべき位置・速度、といったものを
演技の理想を皆と共有しながら、常に同じではない16人の滑り・氷の具合を意識した上で、
対応しながら滑るという、なかなか頭を使う競技なのです。
■予測力
他人の滑る方向やスピードを予測する力も必要です。何せ足元は滑っていますから、足前の上手さが
コントロール可能範囲を決めるとはいえ、限界があります。
例えば、スピードを落とすことなく、スムーズな隊形変化を実現するには、
3列の先頭のずれがどうであって、リンクに対してどういう角度で、どの曲のタイミングで
リンクのどこら辺にいなければいけない、といった調整をして、全員がまず理解に努めます。
さらに、あっと思った瞬間には次の隊形になっている、というスムーズさを見せつけたいのです。
隊形変化の瞬間には、難しいステップや回転動作が加わるため、「次はあの子の隣ー!」と
ずっと「あの子」を見つめているわけにも、いかないのです。「理想の動作を考えると、あの子は
これぐらいのスピードでこう動いてくるはずだから、私はこれぐらいのスピードでこの辺を狙って
入り込もう」、とか考えながら滑っているわけです。
■数学や物理のセンスも。。。
風車のように回転するウィール(Wheel)という技では、すべての羽(列)が均等な幅で滑っている必要があります。
隊形の中にいて、外から綺麗に均等に並べているかというのは、結構分かりにくいものです。
この辺は訓練と俯瞰力が問われます。
もう一つのキーワードは、遠心力。上手な遠心力の利用が、一番外周を滑る人のスピードを助け、スムーズな滑りを実現します。
この「張り」を習得するには、言語に尽くせぬ経験が必要です。
そして、ウィールには「移動する」という技があります。隊形を崩さず回転しながら、移動します。
移動の法則は、やもすると数学と物理の授業です。これも理屈を習得して体現できるようになるには、
結構時間がかかります。でも、一人が理解しただけではできないので、チームとしてできるようになるには、
年単位での取り組みが必要です。練習中は、思わぬ遠心力で転んでフェンスまで吹っ飛ぶということも
時折見かけます。。。
■競技紹介ビデオ 誰か一人になったつもりでビデオを追いかけるなんてイメトレもあります。
シンクロナイズドスケーティング PART1 by 神宮シンクロナイズドスケーティングチーム
シンクロナイズドスケーティング PART2 by 神宮シンクロナイズドスケーティングチーム