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2013/07/03

昨年6月に腰痛対策のために始めたベリーダンス。あの頃は、ステージに出て踊る自分なんて、まったく想像していなかった。

そう、この前の日曜日、所属するベリーダンス・スタジオ主催の Devadasi Festival に参加し、踊ってきました。

アートを通して表現というものをずっとしてきた私。私のアート(現代アート)は、クラフトやデザイン、イラストレーションなどの 「applied art」(応用アート)とは違い、「autonomous art」つまり作家個人のステートメントを表現するものです。「これが俺の生きる道」的なステートメントもあれば、「こんな新しい表現もアートじゃない?」的な問いかけもある。ハイ・アートとも呼ばれます。まずはコンセプトありきで、どちらかというと左脳中心、右脳はサポート役。ピカソもデュシャンもじつは、コンセプトありきの表現です。

でも、ダンスは違う。とくにベリーダンスには、左脳が入り込む余地無し(笑)。むしろ、感情やフィーリング、そして「女性性」を表現するもの。スタジオでは、「じぶんのエネルギーを感じ、音に委ねて表現しましょう」と、即興が重視されています。そういうことは小さい頃から苦手でした。こう見えて、恥ずかしがりやですから (笑) クラブで身を委ねて踊ったり、カラオケで歌ったりするのも、恥ずかしくて、けっこう苦手でした。写真に撮られるのも嫌いだった。「女の子らしい可愛らしさ」が求められるから。

でも、ピアノのような「道具」を通して曲の表情を表現するのは、なぜかすごく得意でした。だから、じぶんの体を「道具」のように使うことができれば、たぶんできるはず。ベリーダンス特有の動きは、経験が浅いから下手だけど、20年のヨガのおかげで体は動きやすい。問題は、ステージ上で、みんなの前で、そのような技術云々を超えて、じぶんの感情やフィーリングをありのままに表現する「勇気」があるかどうか・・・。人生これまでとことん避けてきた命題でした。仕事でパフォーマンスをやることはあっても、匂いでステージを演出する側でしたしね。

そんなわけで、この歳になって、ものすごく大きなチャレンジを自分に果たしたんです。個人的には、これまでのどんな展覧会よりも、大きなチャレンジだった気がしてなりません (笑) 

このフェスティバルは、スタジオの自主企画で、発表会的な位置づけ。でも、誰も「発表会」とは呼んでいません。あくまで「フェスティバル」なんです。それは、スタジオ・リーダーが日本人ではないからでしょうね。「ここは、自分と他人を比較する場ではありません。上手・下手を競う場でもありません。自分に与えられたギフトをみんなとシェアする場です。」と、そのアメリカ人リーダーは言います。なんて素晴らしいんでしょう・・・と、わたしも参加することにしたんです。

とはいえ、ついこの前までオランダにいたため、そのフェスの存在を知ったのが、2週間くらい前。準備の時間は全くない。でも時間をかければ良い物ができるってわけでもないんです。そこはヨーロッパで作家活動している経験に助けられている。旅行先の海でもたくさん踊り、自分の気をクリアーにしていきました。そして、だいいちフェスティバルなんだし、そもそも仕事じゃなくホビーでやってることなんだから、楽しまなきゃ損! 参加費がもったいない。不安・心配・緊張は無用! と決めてかかりました。それも、ヨーロッパで「フェスティバル」を担う経験を積んできたおかげかな? というわけで、奄美大島で買ってきたハブ酒の小瓶を1本飲み干してからステージへ(笑)

ステージの上はとても気持ちが良かった。最初は意識がちゃんとあったのですが、途中からは記憶が曖昧。でも、全空間の意識、音、光、すべてが自分に集められているから、それに助けられて練習時よりも自分を出しやすいという感覚があり、それは新鮮な発見でした。「観客との一体感」みたいなのも味わえた。振り付けは事前に準備せず、ほとんど即興。そんなトランス状態のうちにあっという間に終わってしまった3分半でした。終わって、拍手が聴こえて、ハッと我に返り、ちょっと恥ずかしくなって、小走りでステージ裾へ・・・(笑)

「でも、堂々としてた。存在感があった。やっぱり自分を持っていて、普段から表現している人だからかな。」とティーチャーに評価していただきましたよ。「これでもっと動きを覚えれば、いいダンサーになる」とも。嬉しくって、もっと練習しよう〜! という気になってきましたね。

「お互いを認めて、励まし合って。心をオープンにして、生きていることをセレブレーションしましょう。」とのスタジオ・リーダーのメッセージが思い出されます。ぜんぶで50人のダンサーが踊ったのですが、それぞれが個性きらめき、まったく飽きる瞬間なく見続けることができたのです。まずは相手を受け入れれば、「相手と自分の比較」という競争はなくなる。相手は自分を映す鏡となり、それぞれの良さが写り、それぞれの課題も見えてくる。ちょっとユートピア思想が入っていますが(笑)素敵なコミュニティです。「誰が誰の真似した」的な競争や戦いに陥りがちな現代アートも、こうあってほしい。少なくとも、匂いのアート界を牽引するひとりである私は、そういう意識でコミュニティを育て、見守っていこうと思いました。これからの大きな夢です。

こんなきっかけを与えてくれたデバダシ・スタジオの全インストラクトレス達、とくに初歩の手ほどきをしてくれたナシャールさん、こんな場を東京に築いてくれたミシャールさん、そして愛で導いてくれるノーラさんに、感謝。

そんなわけで、感情やフィーリングをありのままに表現するという命題に関しては、とりあえずスタート地点に立ったばかり。これからじぶんがどうトランスフォメーションしていくのか・・・。変化は、恐いものですが、そこは一歩一歩、前に進んでいきたい。

そして、これらの経験は、じぶんの表現の幅を広げてくれるはず。さっそく9月末にロッテルダムで開催される、毎年レギュラー出演しているフェスティバルでは、「今年はわたし、香りのパフォーマンスやるよ!」と宣言してます。ゲイシャに扮して、香りを道具として駆使し、ロビーのお客さん達にインターベンションする。そんなパフォーマンスです。かつての私だったら、とてもとても考えられないな〜。

p.s. 7/25(木)午後遅めの時間より、逗子海岸でベリーダンスショーがあり、そこにも参加しまーす。Happy Go Lucky という海の家の『ネレイデス』というイベントです。入場無料ですので、楽しんでください。

2013/07/03 10:03 | maki | No Comments