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2013/06/12

前回記事はコチラ
http://www.junkstage.com/fujiwara/?p=446

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前回も書いたが、自分自身、たとえば日本国の選挙制度について、
教科書的な知識はあれど、「それが何を意味するのか」なんて、
さほど気にしたことがなかった。
それがいま、ブータンの選挙について調査しているのだから、
人間、いつどこでどのような興味が湧くかなんて分からないものだ。

ひとまず、ブータンの選挙制度の特徴を簡単にまとめてみたので、
日本のそれと比較しながらご覧いただくことにしよう。

まず、選挙権、つまり投票する権利を持つのは、
「ブータン国籍を保有する18歳以上で、1年以上当該選挙区に居住していること」
と定められている。

日本の場合、「日本国民で満20歳以上であること」となっており、
地方選挙の場合には、「当該選挙区に3ヶ月以上居住していること」
という条項が加わる。

ちなみに、日本でもいくつかの選挙権を失う条件(消極的要件)があるが、
ブータンの場合、「王族、宗教関係者は除く」という条項があるのが特徴的である。
なお、調べてみたところ、日本の天皇家(皇族)も選挙権を持たないそうだが、
理由は、「天皇家は戸籍を持たないため、戸籍保有が条件の選挙権は付与されない」
のだとか。

一方、被選挙権、つまり選挙に出馬できる権利を持つのは、
「25歳以上65歳以下の有権者で、大学の学位を保有していること」。
もし日本でこの条件が適用されると、国会議員の多くは職を失うことになる。
ブータンのこの制度には、賛否両論あり、特に後者については、
欧米の選挙監視団から、人権の観点から容認できない、との見解が示された。
さらに、この被選挙権にも、それを失う条件が定められているのだが、
「ブータン国籍非保有者の配偶者、公職者、法人の役員等は除く」となっており、
外国人と結婚したブータン人は、選挙に出ることすら叶わない。(投票はできる)

なお、日本における被選挙権はずっとシンプルで、
衆議院の場合であれば、「日本国民で満25歳以上であること」、
参議院の場合であれば、「日本国民で満30歳以上であること」、
のみである。
あるいは、日本人の中には、ブータンのように、年齢の上限を設けてほしい、
と思っている人もいるかもしれない…

参考:総務省┃選挙権と被選挙権
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo02.html

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さて、選挙制度というお堅い話が続くが、もう少しだけ我慢して読んでほしい。
つい先日まで、全く選挙に関心が無かった自分を棚に上げて言ってしまうと、
選挙制度というのは、その国のお国柄が色濃く反映されており、
なかなかに興味深いものだ。

閑話休題。
ブータンの国会は、日本をはじめ多くの国と同様に、二院制を採用している。
国家評議会(National Council)と国民議会(National Assembly)と呼ばれ、
国家評議会は、多少の違いはあるが、米の上院、日本の参議院に相当し、
国民議会は、下院、衆議院と同等のものと考えてもらえば分かり易い。

とはいえ、そこはブータン。
アメリカや日本の国政選挙とはだいぶ趣きが異なる部分もある。

まず、国家評議会の選挙は、ブータンに20ある県をそれぞれ1選挙区とし、
各選挙区(県)から各1名、計20名が選挙によって選ばれる。
ただし、国家評議会議員は、その20名に加えて、国王が指名する5名、
というのが選ばれ、合計25名体制となる、というのが非常に特徴的。

また、この国家評議会選に出馬する候補者達は、政党に所属することを禁止される。
日本において、衆議院の与党は自民党だけど、参議院は民主党、のような、
いわゆる「ねじれ国会」みたいな事態は起こり得ないことになる。

もう一つ、政党に所属する候補者達が争う、日本人にもおなじみの選挙、
に相当するのが、国民議会選である。
しかし、こちらもなかなかに面白い二段階制を採用している。
まず、選挙管理委員会に登録されている全ての政党が参加して行われる予備選挙、
そして、その予備選挙を勝ち抜いた2政党で争われ、47の小選挙区から各1名、
計47名の国民議会議員が選出される本選挙、という二段階がある。

予備選挙の時点で、各政党から47の小選挙区に候補者が擁立され、
有権者は、地元の選挙区の中で最も支持する1名に投票する。
しかし、ここでの投票結果は、政党を2つに絞り込む、という目的のみに利用され、
本選挙における投票には一切関わらない、ということになっている。
もちろん、有権者は、予備選挙と同じ候補者に投票するも良し、
気が変わって違う人に入れても良し、ということになる。

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と、ここまで選挙制度の説明をさせていただいたのだが、
随分と長くなってしまったので、今日のところはこれくらいにしておきたいと思う。

次回から、具体的な今回の選挙の中身について見ていきたい。
とはいえ、実は、今年の選挙は、国家評議会の選挙は4月23日に、
国民議会の予備選挙は5月31日に、既に実施済みであり、
残すは7月13日の本選挙のみ、という状況になっている。

この本選挙に向けて、このコラム上で情報を整理しながら、
自分自身、現地での調査の計画を立てていこうと考えている。

(続く)

2013/06/12 12:00 | fujiwara | No Comments