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さて、曲がりなりにも「ブータンの情報化」について研究している、
と銘打ってコラムを書いているにも関わらず、気が付けば、
もう半年もブータンに関する記事を書いていない。
この間、ブータンについて、何も動いていなかったのか、
というと、そういうわけでもなく、水面下では一応それなりに動いてはいた。
例えば、参加している日本ブータン友好協会という、
かなり由緒ある(日本とブータンの国交樹立より前からある)団体で、
縁あって幹事(つまり役員)に就任することになってしまったり。
さらには、GNH研究所という、これまたブータン関連の団体としては古株で、
「GNH (Gross National Happiness)」という考え方について研究しているところで、
これまた事務局をすることになったり。
とまあ、本職?である大学院生以外に肩書が増えて、役割も増えた、という。
いやはや、ブータン研究をはじめてわずか3年足らずのペーペーにも関わらず、
こうして要職で使ってもらえるというのは、実に嬉しい悲鳴である。
—–
前置きが長くなったが、今回のお題は、「ブータンの選挙」である。
情報化と選挙と、いったい何の関係があるんだ、とお思いの方もいるだろう。
かくいう自分も、正直言って、これまで政治や選挙については関心が薄かった。
そういう意味では、典型的な「無関心層」だったと言える。
そんな中、一つのニュースが舞い込んできた。
そう、「ブータンで、今年、総選挙が行われる」という報である。
2008年に民主化を果たしたばかりの同国における2度目の選挙。
実質的に「現政権の政策を評価して投票する初めての選挙」と言える。
日本で選挙と聞けば、
街を選挙カーが走り回り、駅前では候補者の演説が行われ、
テレビをつければ、政見放送や党首討論が盛んに流されている。
そんな選挙戦が思い起こされる。
「はて、それではブータンではどんな選挙戦が繰り広げられるのだろう?」
というのが、そもそもの疑問。
信号も無い国で、というか、車で行けない奥地の村が数多くある国で、
選挙カーがガンガン走り回っている姿は、とてもじゃないが想像できない。
駅前演説もなにも、ブータンには鉄道が走っていないので、駅が無い。
と、少し考えただけでも、日本とは相当趣きの違う選挙が展開されていそうだ。
さらに調べを進めていくうちに、いろいろと面白いことがわかってきた。
その一つが、ブータンにおける「ネット選挙」の可能性について、である。
近年、日本では「ネット選挙」解禁が話題となっている。
「公示日(告示日)以降の選挙期間にネットを使った選挙運動ができるということ」
(三浦博史,『ネット選挙革命』, PHP研究所, 2010)になる。
さらに、ソーシャルメディアの誕生によって、ウェブを通して国民が直接政治を動かす、
そんな未来(「民主主義2.0」)がすぐそこに来ている、という声もある。
一方、ブータンにおいては、民主化された時点でネット環境が存在しており、
「ネット選挙」を解禁するか否かという議論を飛び越えて、
どのようにネットを選挙に活用していくべきか、という議論が先行している。
2012年には、ブータン選挙管理委員会が、ソーシャルメディア利用規則を定め、
いち早く、選挙におけるソーシャルメディアの役割を規定している。
そう、ブータンの選挙は、初めから「ネット選挙」だったのかもしれない。
—–
日本に先駆けて実施される、ブータンの「ネット選挙」とは如何なるものなのか。
本コラムでは、これから数回に渡り、このネタを追いかけていこうと思う。
ちなみに、ブータンの選挙制度については、次回以降、詳解する予定だが、
ものすごくざっくり説明すると、「予備選挙」と「本選挙」にわかれている。
「予備選挙」とは、ブータン国内にある4つの政党の中から2つに絞り込む選挙。
そして「本選挙」は、その2党から出馬した候補者が、各小選挙区のなかで、
1対1の選挙戦を行い、国会議員を選出する選挙、である。
筆者は、この「本選挙」が行われる7月13日前後にブータン入りし、
現地での取材を敢行することを計画している。
というわけで、しばらくの間は、渡航前の準備段階ということで、
現地での報道の様子や、ネット上でのやり取り、さらに、予備選挙のリポート、
といった内容をお届けしていく予定なので、どうかお付き合いいただきたい。
(続く)