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2013/05/29

“天海祐希さんが心筋梗塞”というニュースが印象的だったからだろう、気にしすぎで病院を受診する中年女性が増加したことが、医療関係者のあいだでも話題になっている。

心筋梗塞など、心臓の冠動脈疾患のリスクは冠危険因子と呼ばれる。代表的なものは、a)高齢(少なくとも30代・40代ではない)であること、b)男性であること、c)喫煙をしていること、d)脂質異常症(高コレステロール血症など)、e)糖尿病、f)高血圧、になる。
つまりは、高齢の男性をイメージすればよい。太っていればなおさらだ。そろそろミドルエイジにさしかかるとはいえ、人一倍スタイルが良く、見た目に麗しい天海さんが心筋梗塞を発症というのは、じつは医療をかじったことのある身にとっても衝撃的だった。

そもそも、心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液(とそこに溶け込む酸素)を送る冠動脈の血流が急激に減少し、心筋が壊死した状態だ。あくまでこれは心筋が壊死しているという“状態”を指す言葉で、原因は様々にある。
例えば、動脈硬化が進行することで、血管壁に脂質中心の不安定なふくらみができ、それが破綻するときに血栓をつくり、冠動脈を閉塞させる狭心症は不安定狭心症と呼ばれるが、じつはこれがもっとも多い。
しかし、冠攣縮性狭心症や、たこつぼ型心筋症など、前述のリスク要因に当てはまらない心筋梗塞の原因もある。つまり、若年でも、女性でも、心筋梗塞になる可能性はあるのだ。

急性心筋梗塞の症状は安静でも20分以上継続する激しい胸の痛み、冷汗、吐き気。また、胸痛は大動脈解離や肺梗塞など、たくさんの深刻な病気の症状でもある。これを感じたら、病院を受診してほしい。
目安はちょっと難しいけれど、心筋梗塞を発症し、救急車で病院に運ばれる患者さんに話を聞くと、一様に“これはあきらかに普通ではないと思った”と口にされる。逆に言えば、救急車を呼ばなければならないような状態は、自ずからわかる、と思っていただいてもかまわないだろう。
胸のあたりの違和感くらいだとちょっと難しくなるが、受診してなにもないほうが、我慢して悪化するよりはいいと、僕は思っている。

繰り返すが、心筋梗塞とは、心筋が壊死している状態だ。当然、治療をしなければ心臓の働きが悪くなり、死に至る。救急車を呼ぶ余裕すらなく、ウッとうめいて短時間で一気に亡くなってしまうこともある。若くても、女でも、死ぬときは死ぬ。
今晩眠りについて、明日の朝いつもどおり目が覚める保証なんてない。あたりまえのことなのに、どうして信じていられたんだろう。

生きていることに感謝するというのは、スピリチュアルなことでも、宗教でも、自己アピールでもなく、死に瀕した人間の新しい生活における、ひとつのオプションなのかもしれない。

2013/05/29 11:00 | kuchiki | No Comments