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こんにちは。根本齒科室の根本です。
この間、神田昌典氏の本を久しぶりに見つけました。しかもなぜか平積み。
『非常識な成功法則』院内新聞の書評には無理がある感じですね。
「やりたいこと/やりたくないことを紙に書く」
「自分のミッションを決める」
・・・そうだ、そんなことを書いてあったっけ
懐かしさのあまり、10年ぶり位に買ってしまいました。
(紙に書いてみる・・・やってみようか)
◇「やりたいこと」を明確化するために「やりたくないこと」をまず決める
うわ~、一方的に出てきますね!
*支払いで苦労したくない
*業者に気を使いたくない
*生活にプレッシャーを感じたくない
*キャンセル・無断キャンセルに悩みたくない
etc
ほとんどが金がらみの話ばっかりw何だよ?
で、やりたい方のこと
*金持ちになりたい ←またかよ
*愛情に満ちた家庭を持ちたい
*予防歯科や、自分の哲学を広めたい
*自費やインプラントをもっと伸ばしたい
*商業出版したい
*できればセミリタイアしたい(かも)
etc
ふと思ったのは、いわゆるbe動詞が多いですね。
「○○したい」よりも「○○でありたい」が圧倒的に多い。
商業出版くらいですかね、「○○したい」系は?
◇「自分のミッションを決める」
これはもう、決まっているので、概略程度にとどめます。
予防の原理
それを伝える
この仕事をしていると、非常に強く感じることがあります。
それは、なかなか自分の思っていることが、地域や周囲に伝わらないことです。
(ぐう広告費を使える潤沢な会社は別だと思いますが)
今だに「通りがかりに医院を見つけた」「取れたので付けてほしい」「今回はそこだけ」
などという方もなかなか後を絶たないのが現実です。
いくら自分が「○○がいい」と思っていても、現在の日本では現実には法規が邪魔する
部分が大きいのも事実です。
・・・
なぜだろう?もう一度自分で考え直してみました。
◇ 「保険」の哲学
哲学?保険診療に哲学もくそもあるのか?と思いつつも、自分が患者さんになった時の立場も考えたりしながらいろいろ考えてみました。
私も、急に病気になったり怪我したときに、やっぱり保険で診てもらえると安心します。
「日本人なら保険で診てもらえる」この安心感が、やはり多くの人に共通の感覚かもしれない。
TPPで保険制度を輸出、などと観測気球の報道がなされたこともありました。絶対無理だと思うけど。
そして、当たり前の事実に気が付きました。
『保険制度は全国民の税(保険料)で広く薄く賄われている』
北は北海道、南は九州沖縄、尖閣諸島に至るまで、津々浦々の日本国民全員が少しづつ
広く負担しているわけです。
そして、またまた当たり前ですが、必然的に次のような結論に達します。
『保険制度は全国民に広く薄く給付されなければならない』
現実には老人医療や命に係わる問題に重点的に配分されてしまいますし、
根本的な問題としては財源問題がボトルネックはなってきます。
しかしそれは置いておいたとしても、なるべく公平に治療しなければいけません。
それはイコールなるべく大勢に治療しなければならない、というのと同義です。
非常に簡単な例を挙げます。
むし歯が2本ある人が4人いたとします。
1本15分で治療が終わるとします。
この場合、当然ですが、制度の趣旨を考えたら、1本15分で4人治療すべきなのです。
1人30分とって、2人を2本づつ行うのは、公平性の趣旨に反するのです。
それは、同じ条件で保険料を負担している残りの2人に不公平だからです。
よく、歯医者に対する批判で
「待たされる」
「回数がかかる」
「再診料で儲けている」
というのがありますよね。
しかし、保険診療は私たちに言わせれば、国際相場を見ても、半分ボランティアのようなものです。当然ですが保険診療は、窓口では3割負担だけであり、残りの7割を足して10割で考えてもなお世界標準の相場の数分の一の医療費にしかならない、低廉な診療単価であることは有名です。
医院経営全体を考えても、再診料(42点)で稼げるなど、論理的にありえない話です。
で、この安い診療単価の理由は、何か?
結局のところ
「より公平に」→「より広く(=より多くの人数に)」
だからであると私は考えました。
もちろん、負担者全員に究極の処置を給付することは不可能ですよね。
回数がかかるのは、なるべく平等に広く薄くしようとするからだと、ご理解ください。
処置内容もおのずと最大公約数的、必要最小限的なものになるし、むしろそれでいいと思います。
しかし、そこで出てくるのが、例のチャートです
医科(グループC)は自然治癒するので、本質的に急性期の処置はシンプルです。
「治癒力を引き出す」「治癒力を阻害しない」ことに集中するからです。
いわゆる “歯科治療(グループB)” は全く逆です。
「痛みを取る」「腫れを取る」
この後が『本番』です。
自然治癒しないので、処置がえらく複雑になるのは当然です。
とくに根管治療(神経や根の治療)とりわけ大臼歯部の治療は煩雑です。
そして入れ歯の調整も、症例にもよりますが、大きなトラブルのもとになることが多いようです。
入れ歯は、自然治癒とは全く逆の方向を向いた処置です。
医科でたとえると、義足、義手、顔面プロテーゼ、などの範疇であり、医療ではなくてリハビリです。
当然、「より快適な○○」「生活の質を取り戻す○○」となります。
すぐれて個人の間隔・感情面により大きく深くコミットする内容になるわけです。
この点については、残念ながら現在の日本の保険制度ではまったく考慮されていません。
◇ 「自費」の哲学
いっぽう、特定の個人との随意契約で、集中的に療養を給付しようとするのが「自費(自由診療)」です。
保険診療とは、ベクトルが真逆です
先ほどの4人の治療の例で言うと、4人の中で随意契約を結んだ個人1人に集中的に治療し
30分でむし歯を2本治療して、残り30分で歯の掃除や研磨、他の問題の対処を行う感じです。
その間、当然残りの3人は待っていただく形になります。
「より快適な○○」「生活の質を取り戻す○○」な内容、より個人の感覚・感情面に大きく深くコミットする内容になればなるほど、
自由診療の保険診療に対するアドバンテージはより明らかになってきます。
しかも規模が大きくなればなるほど、その差は歴然としてくるのも当然です。
なぜか?
「自然治癒しない」からです。
何らかのモノを『体内』に積極的に残さざるを得ない、すぐれてリハビリ的内容である歯科治療では機能や形態、耐久性を天然の歯、以前の歯に対していかに近づけていくかが勝負です。
しかしそれでも、「自然治癒しない」という束縛からは逃れられないのです。
処置をすればするほど、もともとの天然歯の目減りは避けられない。
私は、自費(自由診療)の治療を行うときには、擬似的にでも構わないので、トータルに
時間を止める
時間を少し巻き戻す
結果を生み出せるように努力します。
もっとも分かりやすいのが、ベストセメントです。
むし歯になる前の時間までは巻き戻せませんが、現存するむし歯をそのまま再利用できますので
むし歯になってから半分くらいは時間を巻き戻したのと同じ効果が得られます。
また、擬似的ではありますが、グラディアダイレクトによる直接修復も気に入っています。
患者様も大変喜ばれます。
そして、何といっても、矯正歯科やインプラントです。
矯正治療の2年間は、その後の人生の何十年分もの価値があります。
インプラントは、正しい治療が行われれば、擬似的にではありますが、歯が悪くなり始めた段階まで
一気に時間を巻き戻してしまうのと同じ結果を生み出すことができます。
△ 他院では・・・
じつは、少し前に、諸事情で近所の●歯科医院が閉院になりました。
その医院のことはほとんど存じないのですが、「●歯科に通っていた」
という方がときどきこちらにもやってくるようになりました。
何かちょっと、いやスゲー、雰囲気が違います。
とにかく、こことここが壊れたのでやってほしい、という感じで
こちらの話に耳を傾ける感じが、極端に乏しい感じです。
なんだか、話しかけづらい、とか、非常に何事かを提案しづらい雰囲気なのです。
紹介やネット経由、あるいは通りがかりなどで普通に新患で見えた方々とは
明らかに話しかけやすさが違います。
彼らが●歯科医院に求めていたもの、なのか、●歯科医院が彼らに求めていたのか
分かりませんが、それらの一端が垣間見えてきて、とても複雑な気持ちです。
こちらのミッションが伝わらないと、なかなか患者様の意識も上がるきっかけがありません。
患者様がとりあえずそうしてほしいこと?!まあ、姑息的な修復で終了したいということですね。
それは必要条件ではあっても十分条件ではない、何度もそのことはここでも書いてきました。
歯科で最大公約数的、必要最小限的な内容で広く国民に利益をもたらすとすれば、
公的医療費の有効な使途は予防の普及以外にない。
私はそう思うのですが・・
【今回のまとめ】
保険制度の目的は平等に広く薄く給付すること。歯科「治療」には適当な考えとは言い難い。
*追伸;文中、グループBとグループCが逆になっていたので書き直しました(2013/06/03)
(おまけ)
保険制度の療養をなるべく平等に広く薄く給付する(=時短)には作業の効率化も欠かせません。しかし変な方向に手を抜くと、あまり清潔でない感じになります。
特に根治。
バーやファイルを消毒液につけただけで、滅菌をしない医院もかなりあるようです。。。
それはどうかと思うのですが、1回分に小分けして滅菌するのもしんどい。
便利なケースを求めて、秋葉原の裏のほうに行ってきました。
歯科関係者なら、この写真を見て何をしようと企んでいるのか分かるかもしれません。
テイシン電機㈱
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