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「ワークショップ」という言葉が一般的にどういう意味で使われているのかということは、実はあまり意識したことが無いのですが、
wikipediaによると、「体験型講座」という意味らしいです。
ジャグリングにおいて、「ワークショップ」というと、
集団でジャグリングの技を教えてもらったり、演技の見せ方や立ち振る舞いをレクチャーしてもらえる、「体験型講座」以外にも、ジャグリングの理論などを勉強する完全な座学までも「ワークショップ」と言われています。
共通しているのは、一人ないしは数人講師(リーダー)がいて、その人の仕切りで進められることくらいでしょうか。
僕がジャグリングを始めた頃は、
まだ趣味としてのジャグリングというものが全然認知度が高くなく、
ワークショップは、単純に上手い人が上手くない人に技術的指導をするものが多かったです。
教えてもらえる内容も、
5つのボールの練習方法であったり、3つのボールの基本的なバリエーション技だったり。
今の我々に言わせると、「どこのジャグリングサークルに行っても教えてもらえるもの」
が中心だったわけです。
それでも、あまり「教えてくれるサークル」というものが多くなかった時代ですから、JJF(ジャパン・ジャグリング・フェスティバル。日本最大のジャグリングの祭典)などでワークショップを開催すれば、どのワークショップにも多くの人が集まってきたものです。
それ故、初期のJJFのワークショップは僕にとっては「既にできているもの」であったため、参加する機会はほとんどありませんでした。むしろ、イベントの主催側のスタッフでしたから、ワークショップのスケジュールを立てたりとか、講師側に回る役割の方が多かったかと。
そんな「ワークショップ」ですが、日本にジャグリングが広まり、色々なサークルに「教えることのできる人」が増えてきた結果、昔とはまるで違うものになってきました。
勿論、昔ならではの5つのボールのやり方や、3つのボールのバリエーションのような技術的なものもあるのですが、もっと局所的な、特徴のあるものに変わってきたな、と思います。
今人気のワークショップは、有名なジャグラーによる、その人のジャグリングを象徴する技にスポットをあてたワークショップです。
参加してみるとわかるのですが、技を教わるだけではなく、講師の人柄であるとか、ジャグリングに対する考え方に触れることができるものです。
特に、僕にとっては、その「その人のジャグリングに対する考え方に触れる」ことができる機会という意味で大変有意義であると思っております。
さて、
今まで色々なワークショップを受けてきた僕ですが、
そんな僕が受けたワークショップの中で、特に心に残っているワークショップがどんなものであったか、
というのが今回の記事です。
■ジャグリングクラブの歴史(2012年JJF 講師:Erik Åberg)
僕がこれまで受けたワークショップの中でNo.1と言っても過言ではないと思っているのがこれ。
実技一切無し、の完全な座学でしたが、間違いなくNo.1。
クラブというのはジャグリングではおなじみのボウリングのピンのような形をした道具なのですが、
このジャグリングの起源がどこで、ジャグリングの道具として発展していったのは
どういうルーツであったのか……という講義を、
様々な文献から調べたものとともに、写真をスクリーンに映して紹介するという講義でした。
それに依ると、クラブジャグリングの起源の一つは日本にあるんだとか……
会場に併設された大学の講義に使われるような部屋でワークショップが行われたのですが、
座席は本当にぎゅうぎゅう詰めでした。
座席も前の方から順に埋まっていきましたね。(そういう「前の方から埋まる講義」というものを僕は受けたことが無いのでとても新鮮でした。)
このワークショップが行われたのはJJFの3日目で、
僕は寝不足で体調が悪くて頭もガンガン痛んでいたのですが、
大学の講義では堂々と寝ていたこの僕が爛々と目が冴えわたって講義を聞いていましたよ。
本当に知的好奇心をそそる内容で、
別のジャグリングの道具の歴史もあるならば、是非ともまた開催してほしいと思います。
■3ボールと踊ろう(2009年JJF 講師:潮木祐太)
受講者に対してもともと大分レベルの高さを求めていましたが、
舞台の上での「自然な動き方」というものが何であるかということを考えさせられるワークショップでした。
内容としては、各種ボディースロー(足の下を通したり、背中の後ろを通したりする「体育会系」の技の総称)をした時の体の重心の偏りかたから、次の技へのつなぎと、その時体をどう動かせばよいかということを考えてジャグリングをしようよという話。
潮木さんという方は、まさにこのタイプの3ボールジャグラーとして名を馳せた方で、その潮木さんが、どういう考え方に基づいて自分のジャグリングを展開されているのかがすごく伝わってきました。
僕が「最近のワークショップは面白い」と感じはじめたのもこのワークショップがあったからじゃないかと思います。
■ボディースロー(2011年JJF 講師:山村佑里)
ちょっとタイトルは定かではありませんが、
足の下に始まり、背中の後ろ、肩を越える投げ方、首の後ろ、さらにはもっと難しい投げ方など、
多様なボディースローを徹底的にやるというもの。
このワークショップは前半部分と後半部分にわかれていて、
理由あって後半部分は参加できていなかったのですが、前半部分だけでも大変充実した内容でした。
このワークショップの良かったところは、各種ボディースローを1ボールからスタートさせた上、
なかなか上級者でもやることの少ないマニアックなボディースローも取り入れていたおかげで、
初心者から上級者まで誰もが取り組める内容であったことですね。
山村さんは今や日本を代表するジャグラーの一人ですが、
彼のジャグリングをとても細かいレベルにまで「素因数分解」をすると、
このような理論に基づくものなのかなぁという意味でも面白かったですね。
■3ボールカスケードとその応用(2001年? 講師:ジョン・ダニエル)
僕がまだ5ボールがようやっと安定してきたくらいのころに受けたワークショップ。
「カスケード」という技は、3ボールの最も基本的なパターンですが、
その技ができれば、ここまで表現が広がるよ、色々な見せ方ができるよ、
カスケードだけでもこういう動きをすれば難しくなるよ、というものでした。
今振り返ってみると、「同じ技でも、工夫次第でまったく違うものに見える」
ということを伝えたかったのではないかと。
(この一言にすると陳腐なイメージになってしまうのですが……)
その当時も大分「目から鱗が!!」というくらいに感銘を受けたワークショップでしたが、
今受けると、当時とは全く違う意味でさらなる感動を受けるのではないかなと思います。
因みに、講師のジョン・ダニエル氏。
たまたま京都にダンサーとして仕事があって来ていたらしく、
その当時からヨーロッパ界隈ではかなり有名なジャグラーだったそうで、
当時の我々はそのことを知る由も無く、
今思うと、奇跡のようなワークショップであったと思います。
うーん、言葉だけで
これらワークショップがどんなに素晴らしいものかということを伝えられないのが残念!
自分でも、
「ああ、竜半さんのワークショップは良かったなぁ」と
言ってもらえるようなワークショップができるような日が来るといいですねぇ。