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フリーダイビングを始めたきっかけが「イルカと泳ぎたい」だった、という人はけっこういるのですが、競技に専念するうちに、意外にその原点からかけ離れていったりもします。
というわけで、今回は御蔵ネタです。
イルカと言えば御蔵島。御蔵島といえばJunkstageでも「イルカと泳ぐということ」でおなじみの、ドルフィンスイマー鈴木あやのちゃん。(あやのちゃんに敬意を表して、タイトルパクりました)
彼女がイルカと泳ぐ姿は、この上なく優雅ですが、実は、御蔵島はかなりハードな「武者修行」な場所でもあります。
(1)往復が武者修行
伊豆七島の一画にある御蔵島。黒潮が流れる豊かな海に囲まれた島。
この島影。まさに断崖絶壁です。豊かな緑と滝と海。黒潮が流れ、沢山の海鳥が飛び交う、野生のイルカの群れが生息する大自然の島です。島中がマイナスイオンを発しています。(でもここ、東京都なのですよね。)さてこの島、見るからにハードですが、実際一筋縄ではいきません。
●なかなか辿り着けない
御蔵島には、東海汽船が毎日就航しています。が、ともかくワイルドな海域にあるため、「条件付き出航」が当たり前。すんなり行けば東京からは22時過ぎに竹芝桟橋を出発、8時間後の早朝6時前後に御蔵島到着です。が・・御蔵には着岸しないこともしばしば。この場合そのまま船で八丈島まで行き、またリターンして昼過ぎに再度御蔵島へ。
ここでもスルー、ということもしばしばあり、こうなると22時間ずっと船上のまま竹芝に逆戻り、となります。でもそんなことがあっても嘆かず、荒れた海域でどんなに船酔いしようとも「ああ、楽しいクルージングだった」と思える、タフなマインドが必要なのです。
●帰れるかどうかわからない
行けないのはともかく、帰れないのは大問題。でも常にそのリスクを考慮の上、船がダメならヘリで三宅に渡る、フェリーがダメなら漁船で三宅島に渡る、究極は漁船をチャーターして下田まで渡るなどのあらゆるバックアップ手段を取ります。
あるいは諦めて次の船が来るまで、何日でも待つか・・・。「船が来なかったので・・・」と上司得意先にタフに土下座しても通用しないことが多いのでご注意を。
(2)イルカ船もけっこうハード
ともあれ、沢山のハードルを乗り越えて御蔵島到着。大型客船から下船するやいなや、今度は小さな「イルカ船」に乗ってドルフィンスイムに繰り出すわけですが、この「イルカ船」はとても小さなボートです。風よけも雨よけも日よけもありません。御蔵島の周囲は湖のように静かなことも稀にありますが、大抵は活きの良い波がザブンザブン。なので船酔いする人にとってはかなりキツい。真夏でない限りは船上はだいたいとても冷えます。
この船に乗って約2時間、島の回りを回り、イルカの群れがいるとどぼん、と飛び込む。イルカたちは泳ぎの達人なので、彼らと一緒に夢中になって泳ぐと、あっという間に疲労困憊。体力自慢の私も最後には、ボートに上がれなくなるくらい疲労することもあります。
(3)そもそも野生のイルカと泳ぐのが一番のトレーニング!
映画「グラン・ブルー」のモデルでもある亡きジャック・マイヨールは「ホモ・デルフィナス(イルカ人間)」と称されましたが、私のフリーダイビングの大師匠である市川カズさんも半分イルカの血が流れているのではないかというくらい、不思議にイルカに懐かれる人間です。そのカズさん曰く、「イルカと泳ぐのが一番良いフリーダイビング・トレーニングだ」のこと。
確かにその通り。御蔵島の海で野生のイルカたちと出会うたびに「なんて泳ぎが上手いんだろう」という当たり前のことに感動します。この上ないイメトレです。
そして、つくづく、「人間は陸上の動物だ・・・」と思い知ります。たとえ大きなモノフィンを着けて泳いでも、イルカと比べると自分の泳ぎなど”ハイハイ”に過ぎない、と。でも、こんな人間をからかうかのように、こっちに寄って来たり、ぐるぐると水中を回ってくれるイルカ達には「うわ〜〜♪」と有頂天になってしまうんですけどね。
私は、一緒に遊んでくれるフレンドリーなイルカは大好きです。でも、同じくらい好きなのは水中で「イルカ達の世界」を遠巻きに垣間みる時間。とても人間が追いつけないようなスピードで、人間に見向きもせず、水底も見えない深い海域を自由自在に泳ぎまわる、上下左右3Dに自由な、真っ青な海の住人の世界。
(画質悪すぎ無編集映像で恐縮ですが・・・数年前の深場の映像。イルカ達の発する音はリアル。)
とてもじゃ無いけど追いつけないスピード。
そして、気がつくとあっという間に一頭のイルカもいなくなり、ぽつんと感じる海と自分の存在。
いつの間にか自分が海の一部になったような気がする瞬間です。
とてつもない青い大自然の中の、ほんの一部でしかないちっぽけな自分を感じるのです。
私にとって、御蔵島は最高にワイルドで素敵な武者修行の場所です。「もっと深く、長く潜りたい。」「もっと自由に水中を動き回りたい」という素朴な海への憧れの気持ち。自分が何故フリーダイビングに魅せられてしまうのか再認識する場所でもあります。もう10年以上、どんなにハードでもリピートしてしまう不思議な魅力がある島です。
これからいよいよ御蔵もシーズン本格化。過酷なことばかり書きましたが、実際は色々なペースでのんびり、御蔵島を楽しむことがおすすめです。
「イルカと泳ぐ」ということについて正しく知りたい方はあやのちゃんのコラムで、素敵な写真とともにイルカの生態などなど、ご覧下さい!安全に、楽しく、そして往復の覚悟を決めて、御蔵島に繰り出しましょう^^)//
*御蔵島村公式ホームページhttp://www.mikurasima.jp/
photo by miki yamashita
yosshi