« | Home | »

2013/04/30

こんばんは、酒井孝祥です。

先日の稽古場公演の終った、その次の日舞のお稽古日に、愕然とすることがありました。

来月、とある場で少しだけ踊ることになりました。
そして、どの演目のどの箇所を踊るかは自分で選んで構わないとのことだったので、「雨の五郎」という曲の一部分を踊ることに決め、今日はそのお稽古をつけていただきました。

この「雨の五郎」という踊りは、いわゆる荒事の踊りで、ポーズの一つ一つが力強く、役の強さをダイナミックに表しています。

劇団の研究所のレッスンで一番最初に習った踊りで、2年間の研究所時代を通してみっちり稽古しました。
今の15分程度のマンツーマン稽古と違い、劇団のレッスンは1回につき1時間以上あったわけですから、単純に考えれば、これまでで一番長く時間をかけて稽古した踊りです。

酒井はオーディションやら何やらで、人から日本舞踊を見せて欲しいと言われると、とりあえず「雨の五郎」の一部分を、自分で曲を歌いながら踊ります。
そうすると、大概の人からは「無茶苦茶格好良いね!」と評されます。

極めつけは、配膳の仕事で働いていた結婚式場の新年会で踊ったら、司会事務所の会長から「あなた、司会やりませんか?」とスカウトされました。

そんなわけで、ことある度に踊っていた踊りなので、何回か繰り返して感覚を思い出せば、すぐに本番で立てる状態になるだろうと思っていました。

ところがどっこい…
曲に合わせて踊ろうとしたところ、全く動きが合いませんでした。
それどころか、完全に振りをとばして覚えていた箇所が2箇所くらいあり、動き自体が間違っているところもありました。

そして、細かいことに関しては、2分くらいの短いパートながらも、一挙一動を全て修正しなければならないほど、形になっていませんでした。

これは一体どういうことか…?

要は、師から稽古をつけてもらってから数年経つ間で、何度か自分で踊っているうちに、当時に教わった通りの動き、形が、自分がやりやすい方向にすりかわっていったのです。

自分が気持ちよく踊れる動き、形が身体にしみついてしまって、きちんと踊ろうとすると、師から教わったもの、求められているものと違う踊りになってしまうのです。

確かに、自分の気持ち良い踊り方でも、日本舞踊を何も知らない素人めから見れば、それなりに格好良く見えるかとは思います。
しかし、今日の稽古でその状態が誤りだったことを気付かされました。

むしろ、この曲を選んで再度稽古をし、そのことに気がつけただけでも収穫です。

ゼロの状態から踊りを覚えるよりも、間違って覚えてしまった踊りを事細かに修正するというのは、身体的に気持ちの悪い作業であり、精神的にも辛いものです。

しかし、良い機会です。
本番までに何度か稽古はあるので、この僅かな部分を、これでもかと思うほどに細かく細かく稽古します。

次回は、「時は金なり」(ブライダル)をテーマにしたコラムをお届けします。

2013/04/30 12:46 | sakai | No Comments