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2013/03/07

春は夜の闇を誘う香りで溢れており、惑わされます。水仙の香り、夜桜の香り、しっとりほっこりした土の香り・・・。

人は、生きている限り、息をします。その息はたいてい鼻を通るので、わたしたちは毎回、無意識に何らかの匂いを「嗅いでいる」はずです。

しかしわたしたち、いつもいつも匂いを感じ、意識しているわけではありませんよね? まあ、いつもいつも感じていたら気が狂ってしまうと思いますが・・・。

もっと嗅覚を敏感にしたいという方達のために、日常で匂いや香りを嗅ぐときのちょっとしたコツを伝授しましょう。

■まず、息を吸う時は必ず、口を閉じ、鼻で吸ってください。口で吸ったら、匂いはしません。鼻を通らず、ストレートに肺に行ってしまうからです。風邪や気管支炎、喘息を引き起こす原因にもなります。

■空気はまず、鼻毛を通りますね。何かと嫌われることの多い鼻毛にも役割があり、外気中の汚染物質やウィルスなどを除去してくれます。いわゆる天然の「エア・フィルター」ですね! なのでここに空気を絡ませるように、ゆっくり吸いましょう。また、鼻毛が出るのがみっともないからといって、短く切りすぎないようにしましょうね。

■同時に空気は、鼻腔の中にある天然の「加湿器」を通ります。冷たく乾燥した外気は、ここで適度な温度と湿気を得て、37度近い体内に優しい空気になるのです。鼻から失われる水分はけっこう多いので、体内が水分不足になると鼻の調子は悪くなります。加湿器に毎日水を足さなければいけないように、鼻も水分補給が必要。水はしっかり飲みましょう。

■その後、鼻の穴は奥の方で、上中下の3本に別れます。この中のいちばん上の道沿いに嗅覚、いわゆる「嗅上皮」というものがあります。ここには細かい繊毛が生えており、そこに「匂いの分子」を絡ませないと、分子は嗅覚を素通りして喉を通って肺に行ってしまうのです。なので、ビジュライゼーションしてください。ゆっくり息を吸い、空気を鼻毛に絡ませるように、たゆたうタバコの煙のように流しましょう。

■この時、上級者の方は鼻の奥で気流の微妙な乱れ(turbulence)を起こすように息を吸いましょう。すると空気が繊毛に絡まる確率が高くなり、微細な香りを眺めるように観察することができます。調香師もこの嗅ぎ方をしています。ほんの少し吸い入れ、止め、また少し吸い入れ、止める。その繰り返し。呼吸自体をかなり繊細にコントロールする必要があるので、ヨガの呼吸法のクンバカ、丹田呼吸法などの練習がお勧めです。

■隅々まで観察するときは、目をつむるとよいです。極彩画のようなイメージが表れてきやすいです。

■微細な観察だけでなく、ただ単純に楽しむように自然に嗅ぐというのも大事。たとえばローズの香りからは、セクシュアルなエネルギーを取り込むことができます。実際にローズの香りがないときも、そのようなイメージで息を吸うと、骨盤底からの吸気をすることができます。健康に良いですよ。

■アゴを引いて息を吸った方が、鼻腔のいちばん上の通路に空気を通しやすくなりますし、吸気量のコントロールをしやすいです。(ヨガでいうジャーランダラ・バンダ)。試しにアゴをもちあげて嗅いでみてください。あまり匂いがしませんよね?

■当たり前のことですが、鼻をスーっと通しておくに超したことはありません。特にアレルギー性鼻炎の人。ヨガの鼻うがい法「ジャラ・ネティ Jala Neti」を寝る前・起きた後に実践することを勧めします。実は私も慢性の副鼻腔炎。旅先にもJala Neti用のジョウロと食塩は欠かせません。

匂いを嗅ぐ事、イコール、息を吸うことであることがおわかりいただけましたでしょうか。上記の多くのものは、これまで20年に渡ってヨガと多くの呼吸法を学んだ経験と観察に基づき、独自に編み出した方法。ぜひお試しください。

写真:宵の枝垂れ桜。高貴な貴婦人の香り。スパイシー、パウダリー、スウィート、フルーティ。首都圏ではちょうど今がシーズンですね。ソメイヨシノはあまり香りがしませんが、枝垂れ桜には夜に香るものが多いのですよ。

2013/03/07 03:38 | maki | No Comments