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2013/03/05

 

雪の降る夜は天国の扉が見えるの、

天国の扉の前までは誰でも行けるけど、

天国の扉を開けるにはどうするか知ってる、

外は粉雪、

雪の降る夜に、

粉雪に呪文をかける君、

両手に抱えた総てのものに別れを告げて、

身に付けた総てのものに思い出を包んで脱いで、

素手で扉を叩くの、

そしたら誰にでも天国の扉を開けられるの、

簡単なことでしょ、

でもそのことに誰も気がつかないの、

ばかな話しでしょ、

扉の前で総て捨てるなんて、

何の為に一生懸命頑張ってきたかって思うわよね、

何の為に自分を捨ててきたかって思うわよね、

それでも最後に総てを捨てるだけの勇気がなければ、

その扉は死ぬまで開かないの、

死んでもその扉は開かないの、

だってよく考えてみて、

古代エジプトのミイラだって、

宝石だけは棺の中に置いてきぼりよ、

おかしな話しよね、

笑っちゃうわよね、

そんな簡単なことに気がつかないなんて、

 

しんと静かな日、

昨夜から振り続いた雪は、

私が両手にかかえていた総てのものを隠し、

昨日まで見ていた総てのものを隠し、

しんと静かな夜、

総ての音も、

総ての色も、

まだ捨てきれないものまで、

白い雪が隠して去って行く、

家の煙突からはパンを焼く白い香り、

長い冬は大切なことに気がつく季節、

雪の降る夜は、

夢を追いかけることを止めて、

大切な人を見つめる季節、

目を合わせる度に近ずく、

雪の降る夜は、

静かな季節。

2013/03/05 11:05 | watanabe | No Comments