« ■スポーツ研究センター時代 その1(辻秀一物語第 9回) | Home | バス・ストップの美少女と弟 »
今回も前回に続いて武田さんとの対談をお楽しみ下さい。
⇒ 前編はこちら
~音楽大学について~
S:梢ちゃんは附属高校からだけど、音楽大学に対して望むことはありますか?
T:うーん…
S:じゃあ、音大ってどんなところですか?
T:先が見えないと目標を見失いがちですけど、私がいた頃でいえばピアノ演奏家コースは本当にレベルが高くて、素晴らしい音楽をなさる優秀な先輩や同級生、後輩も大勢いらっしゃりましたから、そういった環境で刺激を受けられたことは大きいです。
S:専攻分野を極めるには良い環境だけど、自分がしっかりしてないと、いくらでも堕落出来る場所でもあるよね。俺もそうだったけどほとんどの学生はその日を楽しく暮らしちゃってて、先を見れてない。計画的に過ごせばあんなに有意義な4年間は無いと思うけどね。
T:本番も少ないですよね。
S:それ、俺が代表として学生時代に署名活動したことある。プロ予備軍なのに1回の本番の為に半年も練習する意味があるのか、プロは3日で練習して本番やっちゃう訳で、そのサイクルに少し近づける事が必要なんじゃないかって。酷かったのは「現場での経験が少ない指揮者に指導されても説得力に欠ける」って 笑 当時は学生時代からプロのオーケストラに客演している連中が多かったから、金管楽器にも声かけて学長にまで持っていったけど、俺は事務の人に呼び出されて怒られた 笑
T:それで何も変わらず?
S:練習時間が多少延びたりはしたけど、それくらいかな。学校を動かすのって大変だからね。でも、高い意識持った仲間が大勢居たから、オーケストラの授業でも指揮者に「演奏の質を上げるために席順を変えさせてくれ」とか提案しにいってたなあ。今じゃ署名に賛同してくれた仲間の多くがオーケストラの首席をはじめ楽団員になっているよ。
T:素晴らしい。ピアノ科はソロ楽器なので、オーケストラもないですし、弦楽器より本番の機会が少ないと思いますね。
S:「プロ」の定義がそもそも音楽の世界は曖昧だから。「自称プロ」なんていくらでもいるし。たぶん俺だってオーケストラから出演依頼が来るから「プロと言ってもいいのかな」って思ってるけど、取りかた次第ではどうにだってなる。悪意を持って見たらツッコミどころ満載な業界だから。
~趣味~
S:音楽以外の趣味は?
T:なんだろう。音楽鑑賞やバレエ鑑賞…それと美術館行くのも好きです。
S:美術館?
T:絵や彫刻が大好きなんです。画集を眺めるのも好きですね。あと、読書。小説や物語も好きだけど、特に万葉集や和歌を読むのが好きです。笑
S:ええっ?
T:なんで読み始めたんだろう…日本に生まれながら西洋のクラシック音楽を学んでいるので、日本の心、美を理解したいと思って。初めて万葉集や古今和歌集を読んだ時、千年以上の時を経ても少しも変わらない人間の姿や心、想いに驚いたんです。昔のヨーロッパの昔の詩集や物語を読んでも感じることであり、通じることですが。圧倒的な自然の美しさを目の当たりにした時の感動や感謝、誰しもが心の中にある、人を愛する気持ちや愛する人を失った時の悲しみ、絶望や苦しみ、祈り…そして、そういった言葉にならない人の変わらぬ心、時代を超えて誰しもが持つ普遍的な気持ちを音で表現したものが、音楽だと思うんですよね。クラシック音楽はいつからか敷居が高く堅苦しいものだ、というイメージを持たれてしまうようになった気がしますが、芸術って常に人の心の側にあり、とても人間的なものだと私は思うんです。だからこそ、この移り変わりの激しい時代の中で、人々と共に笑い、時には泣き、生き続けてきたんだと思います。
…話がそれてしまいましたが、読んでみてください。 笑
S:手に取ったことも無いよ 笑 そこらで売ってんの?授業以来久しぶりに聞いた単語だなあ。
T:ありますよ~。感動しますよ!笑
~留学~
S:留学先はパリ・エコール・ノルマル音楽院だっけ?
T:はい。エコール・ノルマルの6eme Division Execution=最上級演奏家ディプロマという過程へ留学し、ジャン=マルク・ルイサダ氏のもとで勉強します。
S:留学にかける思いというか、何かやりたい事はある?
T:やっぱり作曲家たちが生きていた街ですし、クラシック音楽が生活に溶け込んでいる国だと思うので、街並みや文化、歴史に触れてその空気を感じたいです。
S:向こうでリサイタルやったりとかは?
T:いずれはやらせて頂ける機会があったらいいなと思います。6emeのExeは試験がリサイタルプログラム並みの演目だそうなので、良い準備になるかな。
S:何年くらい行くつもり?
T:3年はいたいですね。
S:途中から生徒さんとか集まれば向こうで生活も出来るよね。
T:そうですね。でもまずは自分の勉強が一番かな。笑
S:さて、本日は留学前の忙しい時間にありがとうございました。留学で多くのものを得られるよう祈ってます。今度、一緒に何か演奏会やりましょう。
T:ぜひやりましょう、今日はありがとうございました!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こうして楽しく対談を終え無事に渡仏した武田さんから、新たにメッセージが届きました!
~パリに留学して~
パリに来て半年が経とうとしています。パリに来てからの生活は一分一秒が宝物。感じること、考えること、想うこと、感動、刺激が多すぎてなんとなく過ごす日なんて一日もありません。
偶然ですが、今住んでいるアパルトマンの近くにはショパンが生前住んでいた家が4つもあります。パリにはショパンやドビュッシー、サン=サーンス、フォーレ、サティ、フランクなど、沢山の作曲家たちの足跡がいたるところに残っています。縁の場所を訪ねた時に感じる、楽譜を通じてしか出会えなかった作曲家たちがたしかにここに生きていたんだという感動は言葉になりません。また、伝記や音楽史という本の中の出来事を立体的に感じることができ、果てしないイメージが広がる瞬間です。
ルイサダ先生はピアニストとしてご活躍なさっている方でお忙しいため、門下生が7人と少ないので、自分以外のレッスンも聴講するマスタークラス式なのですが、門下の先輩たちがあまりにも素晴らしい演奏をなさることにも刺激を受けています。ルイサダ先生のレッスンからは、音楽に対する様々な感覚が宝石箱のように湧き出てきます。
コンサートを聞きに行ったり、バレエを見に行ったり、美術館へ出かけたり、インスピレーションや胸が震えるほどの感動を得る機会も多く、この素晴らしい環境で勉強できることに感謝して、この時間が音になっていくように、今の私にできる100パーセントを使ってできる限りのことを吸収したい、勉強したいと強く思います。がんばります!
武田 梢
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
武田さんの今後のご活躍をお祈りし、皆様の応援をお願いして今回の対談を終了させて頂きたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆武田梢 プロフィール◆
武田 梢(たけだ・こずえ)/ピアノ
1986年秋田県秋田市に生まれる
秋田大学教育文化学部附属小学校、秋田大学教育文化学部附属中学校卒業
ABS秋田放送より取材を受け、“特集:シリーズ旅立ち~15歳の決断・夢はピアニスト”が放映される
2002年東京音楽大学付属高等学校にピアノ演奏家コースとして入学
同校在学中、実技成績優秀により、同校出身のピアニスト小川典子氏より特別レッスンを受講(高2~高3)
並びに、モスクワ音楽院教授セルゲイツ・ドレンスキー氏より公開レッスンを推奨生として受講
2005年東京音楽大学にピアノ演奏家コースとして入学
同校在学中、フランス国立音楽院教授ジャック・ルヴィエ氏の国際音楽セミナーを推奨生として受講並びに修了コンサート出演
特にS.ラフマニノフ、K.シマノフスキに於いて高い評価を得る
これまでに全日本学生音楽コンクール東京大会入選、ピティナピアノコンペティションソロ部門B級C級D級E級・デュオ部門初級中級にて優秀賞受賞、全日本ジュニアクラシック音楽コンクール入賞、秋田市民音楽コンクール第一位並びに文化団体連盟賞、秋田県青少年音楽コンクール最優秀並びにグランプリ受賞(大会初)日本ショパン協会主催、青少年のためのショパンコンクール金賞並びにカワイ奨励賞受賞(史上最年少)アジアクラシック音楽コンクール新人賞受賞
2009年秋よりフランス、パリ・エコール・ノルマル音楽院ディプロマコース6eme Division≪Execution≫(シジエム・ディヴィジオン≪エグゼキュシオン≫=最上級演奏ディプロマ)へ留学、ジャン=マルク・ルイサダ氏のもとで研鑽を積んでいる
武田梢BLOG
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・