昨年のKAMIWAZAの番組を見ての感想を書いたとき、
「出来レースっぽかった」「実況がやかましかった」「審査員が適切ではない」「芸人のネタ見せタイムが余計」
と、散々なことを書いたように思います。
何しろ、去年は一発目で、
どういう風に番組を行うかわからない状態で、しかも生放送でパフォーマンス番組をやらせ、
さらにM-1グランプリという年末の風物詩であった番組の後継の番組であるという触れ込みで、ハードルも高く、
テレビ関係者側の立場に立ったと考えると、相当な冒険をしていたのではないかと思います。
ただ、パフォーマーの人選は素晴らしかったと思いましたし、
彼らも実にクオリティの高い仕事をしていたと思いますので、
とても多くの問題点を抱えつつも、番組としては成立していたのではないかと思います。
その点、今年は生放送ではなくなったため、去年感じた異様なまでの緊張感というものはなく、
出演者側も表情にリラックスがあったようにも思います。
事前に出演者を見て、
海外のパフォーマーについては昨年のほうが豪華だったように感じましたが、
逆に日本代表のパフォーマーは、
が~まるちょばを筆頭に、テレビ的にも知名度的にもまさに「日本代表」と
呼ぶにふさわしい面々が集まっていたのではないかと思います。
番組が終わった後、
去年とは違い、僕のtwitterのTLに「去年よりよかった」「面白かった」「来年が楽しみ」と、
好意的なコメントが並んだのも印象深いです。
以下、僕が感じた番組として良かった点と悪かった点を徒然なるままに書いてみます。
●実況について
「去年よりよくなった」という点ではこれが筆頭でしょう。
が~まるちょばやマディール、レッキングクルーオーケストラなどの時には、一切実況がなく、集中して見ることが出来ました。
それ以外の実況も去年よりはるかに控えめで良かったですね。
それでもなお、河北省雑技団、アザリオ・シスターズ、ズックのパフォーマンスでも実況はいらなかったのでは?とも思います。
「良かった」と書いておきながら駄目だったところをを書いてしまうのですが(笑)
特に、最後の大技で何をやるのかということが事前の情報でわかってしまうような解説は
「さあ、この後はこうこうこういうことをやるそうです!!」という解説は、
「次に何をやるんだろう!?」というワクワク感を減退させてしまうため、余計だったのではないかと思います。
同様の意味で、CMに入る前のCM明けのパフォーマーの予告映像なんかもクライマックスのシーンを放映していたような気もしますが、これもネタバレになってしまっていましたよね。
すでに演技を終えたパフォーマーの映像では駄目だったのでしょうか。
(テレビ的には、確かに「これからこういうことをやるパフォーマーが出てくるよ!!」という「呼び込み」的な意味合いだったと思いますが。)
逆に、「実況が必要だった」パフォーマーもいました。
生放送ではなくなったため、失敗した箇所や冗長になった箇所はカットする必要もあったでしょうから、
ケントカイトやDaiGoのパフォーマンスの最中に必要最低限の実況は必要だったことと思います。
それを踏まえて考えると、
ケントカイトやDaiGoのところだけ実況が入るのもおかしいので、
全体的にバランスよく実況が入る措置は必要だったのかもしれません。
KAMIWAZAマークが光ると「ここからが見所!!」という演出があったのですが、それも、
「実況のないパフォーマー」のために用意された措置だと考えると納得がいきます。
●納得の審査員
マッスルミュージカルやボリショイサーカスの関係者が審査員として名を連ねていたのは素晴らしいですね。
審査員というのは「こうでなくては!」と思いました。
パフォーマンスを客観的に見て評価の出来る審査員の存在というのは本当に大切だと思います。
番組中、宮本亜門氏が、
「審査員という立場はつらい!!! 優劣をつけなければいけないから!!」というコメントをしていましたが、
まさにこれ。素晴らしい大会になればなるほど審査員泣かせになるんですよね。
今回は、観客の投げ銭システム的なものもありましたが、それについては後述。
●カメラのアングルの話
あなたがもし観客席に座り、ショーを見ていたとするならば、基本的に、見るところは一点からのみの視点であったはずです。
パフォーマンスをさまざまな角度から映すのはいいと思いますが、
その画面の切り替えの頻度が非常に多かったと感じました。
特に、客席の芸能人が拍手を送っている姿が何度も見られましたが、
拍手を送っている芸能人が見たいのではなく、パフォーマーが見たいのです。
勿論、危険なパフォーマンスに息を呑む瞬間や成功した後笑顔で拍手を送る画があってもいい、とは思うのですが、
ショーの主人公はパフォーマーですから、パフォーマーの演出を彩るカメラワークであってほしかったと思います。
「パフォーマーの演出を彩るカメラワークであってほしかった」という点では、余計なアングルからの画というのも気になりました。
特に、アザリオ・シスターズの支える側の顔のアップと、ズックの上からのカメラのアングルは良くなかったと思います。
上からのアングルが悪い、というわけではなく、たとえばマディールのパフォーマンスで
作られたオブジェクトは、上から見た画があったことで
全体的にどのような形になっているのかわかった、ということもありました。
その辺りはやはり、どうカメラを動かすとそのパフォーマーが映えるのか
という点を中心にシーンをつなげる編集さんの腕なのではないかなぁと思います。
逆に、が~まるちょばのパフォーマンス中のカメラアングルの違和感は少なかったですし
(観客と絡むシーンがあったからでしょう。)
レッキングクルーオーケストラの定点からのカメラは良かったんですけれどね。
●得点のつけかたについて
これはどちらかというと個人的な好みも含まれてしまうので、
「そうは思わない」と思う人も多いと思いますが、一応僕の考えをいうと、
いわゆる「得点」を「円」というお金の単位で表現するのは何かいやらしさを感じてしまいます。
パフォーマンスに対して「あなたのパフォーマンスに値段をつけるとしたら……」という
値踏みをしているようで、何か上から目線のような感じがするんですよね。
パフォーマンスには「投げ銭」がつきものだから、という目的があることは理解できるんですけれどね。
他の番組なのですが、観客席の人がギャラを決めるという番組がありまして、
最初にそれを見た時にすごく下品に感じた記憶があります。 最近はどうなったのか知らないのですが、
「○○さん、この方に××円を入れましたが、これはどういう思いから?」という司会者の突込みが入ったりして、
なんか、そういう会話のやり取りに下品さを感じてしまったんですよね。
KAMIWAZAでは、単位こそ「円」でしたが、他のパフォーマーとの比較の対象となる
得点的な要素が強かったので、そこまで下品に感じることはなかったのですが。
まあ、だとすると「円」じゃなくてもいいんじゃないかとかそうも思ったりしますが、
最終的な優勝者の賞金が決まるというゲーム的要素もあったので、まあ、これはこれでいいのかなぁ……。
●暫定チャンピオンVS挑戦者 という構図だとトリが一番有利。
今回のKAMIWAZAの対戦形式を、トーナメント表にすると、こんな感じになります。
……ね?トリが一番有利でしょ?
しかも、新しいパフォーマーのほうが、直前で見ているから、感動も覚めないうちに審査に入るのに対し、
暫定チャンピオンの演技はどんどんと記憶から消えていってしまいます。
ことさら、ベクトルの違う「凄さ」を評価するのだから、直近で強く感動した方に多くの得点をつけがちになってしまうのではないかと思います。
その「トリが有利になる」ということを経験的に把握している選ばれた審査員のみが得点をつけるならともかく、
観客票も存在していたため、よりこの傾向が強かったのではないかと思います。
トリのパフォーマーが優勝しちゃったことも、「予定調和」だったような気もしなくもないです。
「スタッフが一番凄いと思ったパフォーマーを最後に持ってきた」という考えでもいいとは思いますけれど(^^;
M-1グランプリでも同じ審査方法ではあったのですが、
演技順が抽選で決められていたのに対し、今回の演技順はある程度意図されて組まれたものと思いますので、
正直、最初のほうにパフォーマンスをした方々の優勝というのは確率的にはとても少なかったのではないかと思います。
●生放送でなくなったことについて
KAMIWAZAはまだ2年目、手探りの状態はまだ続いていると思います。
今回、生放送ではなくしたのは正解だったんじゃないのかなぁと思います。
生放送はアクシデントが起こる危険性もはらんでいますからねぇ。
とはいえ、去年の生放送でのハラハラ感というのも好きでした。
去年のリカルドの演技なんか、うるさいと言われ続けていた実況まで一体となって
みんなでハラハラしていて凄く一体感を感じましたしねぇ。
パフォーマーたちがテレビ局の信頼を勝ち取り、
「生放送で放映しても充分彼らは素晴らしいパフォーマンスをする」ということを
わかってもらえる日が来たら、生でお送りするパフォーマンス番組というのが
できる日が来るのではないんじゃないかなぁと思います。
すると、また生放送独特の緊迫感に包まれたショーになると思うのですが、
それはそれで凄く面白いことになるのではないかなぁと思っています。
いつかチャレンジしてほしい。
番組の感想としてはこんなところです。
素人目で見て偉そうに語っているので、もしかしたら不快に思う方もいるかもしれませんが、
逆に、これだけまだ素人目で見て改善すべき点があるのに、
その手のパフォーマーたちに「面白かった」「来年に期待」と言わせることができる番組というのは
素晴らしいんじゃないかなぁと思います。
今回日本代表として出演した、が~まるちょば、レッキングクルーオーケストラ、DaiGoの3組は
本当に日本の「代表」であり、日本が世界に誇るパフォーマーたちであると思います。
勿論、ワイルドカードで出演したケントカイトも、日本のジャグリングシーンを背負って立てるパフォーマーでありました。
ただ、日本には彼らだけではなく、他にも別のベクトルで素晴らしいパフォーマーたちが数多くいます。
是非ともそのパフォーマーたちにスポットライトを当て、
土日には近くのショッピングモールに来ているパフォーマーを見に行く人が増えてくれれば、と、
そんな風に思う次第です。
おまけですが、昨日の記事にも書きました通り、
ジャグリング仲間であるぱわぁさん ( @jugglerPOWER )が、素晴らしい先見の目を披露し、
「彼らの演技は凄い!」と、KAMIWAZA放映直後(……と、それより少し前)にパフォーマーを紹介し、
見事にその中から2人もパフォーマーが出演しました。
二番煎じではありますが、現時点で「日本VS世界」という構図を作ることのできるパフォーマーを、
個人的な趣味で紹介したいと思います。
僕はジャグラーなので、ややジャグラー寄りのパフォーマー紹介となっております(^^;
●ロシア・ウクライナ シャルコフ・ブラザーズ(ハンド・トゥ・ハンド)
いきなりですが動画がありません(笑)
個人的には、今まで見たハンド・トゥ・ハンドの中で最も衝撃的だったパフォーマンスです。
2003年か2004年くらいの大道芸ワールドカップin静岡のグランプリだったかな。
普通パフォーマンスを見ると、「うおおお!!」という驚きの声が上がるものですが、
彼らの場合は違う。観客席から「うわっ……」という若干引いた声が漏れます(笑)
おそるべき軟体の体を持つ彼らは、
ハンド・トゥ・ハンドを、「ものすごく無理な体勢」でやろうとするんですよ。
言葉だけではイメージできないと思いますが、
股の間から頭を覗かせますね?
そのまま頭が股の間を通って(ともするとそのまま前転してしまいそうですが)股の間から両手を出して、突き上げた腕の上で
もう片方の人に倒立をしてもらったりするんですね。
勿論、下の人の足は両足とも地面についていますよ。
どうですか?イメージできないでしょう?
実際に見てもらうしかありませんね(笑)
見たことのある人は「ああ、あの人らね」と思いだしてもらえるとは思いますが、
見たことのない人は、実際の「モノ」を見ないとならないでしょう(笑)
最近静岡ではまったく見かけなくなってしまったのですが、まだ現役でやられていらっしゃるんでしょうか。
●日本 伊藤佑介(けん玉)
日本の誇るけん玉パフォーマーと言えばこの人、伊藤さん。
ジャグリングの要素も凄く取り入れてある、非常に独創的なけん玉パフォーマンスであると思います。
彼の場合、凄いのはパフォーマンスだけではなく、おしゃべりやちょっとナルシストなキャラクターも良かったりするので、
是非ともテレビ出演をする際には、彼に自由におしゃべりをしてもらってやってほしいなぁと思います。
●アメリカ グレッグ・ケネディ(ジャグリング)
以前にもこの人のパフォーマンスは取り上げたことがありますが、
一味も二味も違った、独創的なジャグリングの世界を見せる人。
計算されつくした軌道のパフォーマンスが魅力です。
●日本 WORLD ORDER(ダンス)
まあ……もう有名なので説明不要な感じもするんですが、
K-1格闘家であった須藤元気氏を中心として集まった音楽&ダンスユニットです。
生で彼らのパフォーマンスを正面から見たいなぁ……。
●アメリカ トム・マリカ(マジック?)
すごい技の数々の間には抱腹絶倒のパフォーマンスを(笑)
パフォーマンスのジャンルとしてはマジック……だと思うんですが(^^;
本当に体に悪そうなパフォーマンスです。
●日本 おこたんぺ(マニュピレーション)
この方もこのブログで何度も紹介していますが、
まさに「止まって見える」コンタクトジャグリングとマニュピレーションの世界を披露する方。
いつも紹介する時は、「日本で一番かっこいいジャグラー」として友達に紹介しています。
●ドイツ ゲット・ザ・シュー(ジャグリング)
何故か靴を奪い合って戦いを繰り広げる二人組のパフォーマンス。
息の合い方が尋常じゃないです。
生で見た時は本気で感動しましたよ。適当に投げている筈のクラブが手元に収まる収まる。
●日本 仙丸(太神楽)
昨年リカルド、今年マディールとバランス芸が話題になっているKAMIWAZAですが、
超絶バランス芸のパフォーマーが日本にもいるんですよ!!!
世界各国でパフォーマンスをしている方なので
なかなか普段日本でお目にかかることはないのですが……
アクロバットのサブリミット、三味線パフォーマーのセ三味ストリートとのコラボパフォーマンスの「うんぷてんぷ」も
コアな大道芸ファンの中では有名かもしれません。
どうよ!! どうよ!!!
彼らが出る番組とか楽しみで楽しみでしかたないんですけど!!!!(とテンションを上げる夜中2時……)