« 節分にかかせないのが鬼ですよ | Home | 人はなぜ死を恐れるのか その2「日本人のあの世観」 »
いま、中東がアツい。
何がって、残念ながら、アジア杯優勝の話ではない。
そう、エジプト政変の話だ。
いや、実際のところ、アジア杯で日本が大盛り上がりのその裏で、
中東各国は、その火消しに躍起になっていた。
正直言って、政治にはあまり関心が無いのだが、
この話、食い付きポイントは、インターネット発、という部分にある。
そもそものきっかけは、
エジプトと同じく北アフリカに位置する、チュニジアの政変。
1人の若者の焼身自殺が、革命の口火を切ったと言われている。
本来、イスラム教の戒律では、自殺はタブー中のタブーだ。
しかし、禁忌を犯してまで、生活の困窮を訴えた若者の姿が、
携帯メールなどを通じて国中に発信され、怒りの声が上がり始める。
やがて、Facebookをフックに、抗議デモの時間と場所が通知され、
火種は瞬く間に、独裁政権を呑み込んだ。
厳しく言論統制が敷かれた独裁国家の多い中東諸国では、
こうした革命の形態など、もちろん初めてのことであり、
それだけでも、近隣諸国は戦々恐々となっていたのだ。
………………………………………………………………………
そこへ来て、今回の一件は、エジプトへと飛び火した。
まだ現時点では、その決着を見ていないのだが、
どうやら、30年に渡るムバラク政権の打倒は時間の問題のようだ。
エジプトでも、やはり「ソーシャルネットワーク」が力を発揮した。
奇しくも、同タイトルの映画が絶賛上映中というのだから、
どうにも話が出来過ぎている気がしなくもない。
ちなみに、残念ながら筆者はまだ同映画を見ていない。
見ておいた方が良さそうな気はしているのだが、
どうにも、「全米大ヒット」な類の映画への拒絶意識が拭えない。
それはそうと、エジプト政府は、対抗策として、
まず、twitter、Facebookへのアクセスを遮断。
次いで、全てのインターネット接続を遮断するに至った。
あからさまな言論統制に打って出たわけだが、それも最早、後の祭り。
火の点いた群衆は、そう簡単には止まらない。
………………………………………………………………………
ここへ来て、続々とインターネット発の革命が起きつつあるわけだが、
さて、果たしてインターネットに、本当にそんなパワーがあるのか。
これまたタイムリーなことに、
1月25日発売の『クーリエ・ジャポン vol.076』に、
「“つぶやき”では革命は起こせない」という記事が載った。
発売時期から言って、中東の政変が起こる前に書かれた記事であろう。
あるいは、政変後に書いたのだとしたら、その勇気に感服したい。
いずれにせよ、そこに書かれていた論調はこうだ。
フェイスブック流の社会運動が成功するのは、
「多大なる犠牲を払ってもいいから、その運動に参加しよう」
というモチベーションを人々に与えるからではない。
むしろ、そうした大きな犠牲を払うのは嫌だという人に対し、
さほどのモチベーションがなくてもできることに取り組もう、
といったことを薦めるのだ。(Malcolm Gladwell)
たしかに、犠牲を払う人がいなければ、革命に火は点かない。
焼身自殺という、壮絶な死が無ければ、今回の革命は起きていない。
また、社会運動の成功には、
ヒエラルキー構造や、キング牧師のような指導者が不可欠だと指摘し、
インターネットを基盤としたネットワーク構造では弱い、
という論法にも一理ある。
ただ、この論は、旧来型の革命と、SNS型の革命、という
極端な二元論で物を語り過ぎだろう。
SNSはマッチ箱のようなもので、誰でも簡単に火を点けることができる。
これまでの社会運動のように、いきなり火炎瓶に火を点けるところから、
というやり方に比べて、はるかに敷居は低くなった。
まず、大きな犠牲とともに、革命の最初の産声が上がる。
SNSがそれに火を点け、徐々に広がり、各地でデモが発生。
そして、指導者として、ノーベル平和賞受賞者のエルバラダイ氏を擁立。
と、双方の型を取り入れた、ハイブリッド型の革命が完遂しつつある。
無論、まだまだ予断を許さない状況ではあるので、
あくまでも、2011年2月1日現在のコラムとしてお読みいただきたい。
………………………………………………………………………
さて、インターネットが登場して間もないころ、
しきりに、インターネットは民主主義的であると叫ばれた時期がある。
多対多の通信を可能にしたことや、
情報という力を民衆に与えたことなどが、その根拠に挙げられていた。
たしかに、今回のケースが示しているように、
言論統制を敷かれている国において、それは有効に働く面が大きい。
インターネットが巻き起こした民主化革命として、
長く世界中で記憶されていくことになるだろう。
だが、そのことは、インターネットが「革命」を促すキーとなっても、
「民主主義」を推進するアクセルになることを示してはいない。
果たして、インターネットは、民主主義にどう作用するのか。
あるいは、あくまでも中立的な技術であり続けるのか。
そのあたりの話を、次回、もう少し突っ込んで考えていきたい。
………………………………………………………………………
LINKs
Anger in Egypt │ Al Jazeera English
http://english.aljazeera.net/indepth/spotlight/anger-in-egypt/
#egyjp(日本語) │ twitter
http://search.twitter.com/search?q=%23egyjp