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2011/02/17

過日、日本から2名の要人を招いてのミニ・ワークショップを國立中央大學にて開催した。お二方とも台湾は初めてとのことで、3泊という僅かな時間でいかに台湾を満喫して頂くか試行錯誤した。以下、その記録である。

到着日の日曜日は、台北を速攻案内。

  • 中華民國總統府;車で窓を開けて周回しながら撮影。私服警官や警固兵に睨まれたが、狙撃はされなかった。
  • 中正紀念公園;蒋介石記念館見学。憲兵交代式と国旗降納を偶然見る事ができた。両儀式ともに非常に複雑で美しくもあり感心した。
  • 晩飯は、台北市大安區忠孝東路の度小月で台南小吃のコースを楽しんだ。台北には2店あるが、この店の方が美味いと思う。
  • 龍山寺;長い線香を7本購入して、正式なお参りを実施した。 最後に正式な御御籤の方法を実施。小生は神様がお怒りになって引く事が許されなかったが、日本からの客人2名は無事に御御籤を引けた。御御籤を解釈する人がいて説明をうけるのだが、驚いたことに日本語で説明してくれた。お二方とも素晴らしい御御籤を引いた。

中正紀念公園中正紀念公園 度小月龍山寺

龍山寺夜市を散策し、珍珠奶茶(タピオカミルクティー)を楽しみ帰路に付いた。台北101は、遠目の夜景で見ただけで済ませた。帰路の高速入り口を誤り、淡水方面へ向ってしまい、30分ほどロス。台北の道路交通は複雑極まりない。

会議後の火曜日の午後は、珍道中とあいなった。小生が客人を案内すると、大抵何かハプニングが発生するのだが(一人旅でもそうだけど)、今回もハプニングが起こった。

台湾最大の陶器の街「鶯歌」へ向かった。鶯歌老街は観光客目当ての高級品が並んでいるので、結局我々は何も購入せずに散策しただけ。台湾小姐の提案で、場所は覚えていないが、近くにあるという友人のお茶屋さんに行く事になった。しかし、その友人に電話するも、泥酔していてろれつが回っていなくて何を言っているのか分からないらしい。小姐のあやふやな記憶で歩き回り、通りの店のおばさんに聞いたりしたが、結局路に迷いついには泥酔電話も繋がらなくなったので、タクシーを拾うことにした。檳榔(ビンラン=噛みタバコ)で口の回りを真っ赤にした運ちゃんのタクシーに乗車してしまった。タクシーで案内されたお目当ての店は、定休日で閉まっていた。どうりで泥酔している訳である。檳榔で歯が溶けてしまったタクシーの運ちゃんの怪しいろれつによると、運ちゃんの知り合いに有名な窯元がいるとのことで、そこに連れて行ってもらうことにした。ドキドキ。。。

観光客はまず来ないだろう細い路地から山へ登り、窯元のお宅に案内された。主人は留守だったが、お弟子さん(息子さん)と思われる美形男子が案内してくれた。なんとそこは、世界で一番薄い幻の陶器(厚さ2mm)を作り出す世界的に有名な先生の窯元だったのだ。上海万博に台湾から唯一出品された作品もずらりと並んでいた。

窯元 窯元窯元茶壺
明かりにかざすと透けるが、実用的な茶壺。

http://www.youtube.com/watch?v=aqjEFx9UY7I

World thinest ceramic bowl

http://youtu.be/aqjEFx9UY7I

この厚さ2mmの陶器は、100個に3個しか成功しないそうだ。一番小さいものでも60万円。大きなものは、5つでポルシェが買える値段とのこと。勿論我々に買える代物ではないので、実用的な茶壺(急須)を吟味した。上海万博に台湾から唯一出品された陶器の茶壺が8000台湾元(~24000円)、筋状の模様が入った花柄のひんの良い白い茶壺が3000元台湾元(~9000円)で販売できるとのこと(筋を入れる技術は難しいらしい)。大きさも形も、書かれている中国の詩も一つ一つ違う、世界に一つの茶壺。我々3名は、通常は値切ることができないと言われたモノを値切り、失礼ながら3000元の白い茶壺を3個で8000元で購入した。この茶壺は、使えばつかうほど光沢が出てくるそうだ。

お茶を頂きたいという更に我が侭な我々の要望に、親切にも一軒の茶屋を紹介して電話予約して頂いた。待っていたタクシーの檳榔オヤジは、満足げに我々を茶屋へ案内してくれた。茶屋に到着すると、さっき我々が購入した茶器が売っているではないか!ボラレタあなと値段を見ると、何と6500元(~2万円)。8000元の茶壺は17000元(~5万円)、我々が購入した価格の2倍以上だった。どうやら我々は、元価を更に値引きして本物を買ってしまったらしい。満足満足。そして、お茶を入れてくれた美女は、茶壺に美しい詩を書いていた女性本人であった。彼女は、さっき我々が購入したものと同じ茶壺でお茶をいれてくれた。1年使ったというその茶壺の表面は、本当に光沢がでて輝いていた。台湾の高山茶各種を試飲して購入。

既に日は暮れてしまい、急いで完全予約制の山奥の隠れ家へ向うことにした。しかし、お茶騒動の一件でディナーに30分以上遅刻することになってしまい、先方に遅れる旨の電話を入れた。しかし、この遅刻が、次の素敵な出会いへと繋がるとは。。。

璞真山居璞真山居璞真山居

璞真山居は、台北縣三峽の山奥にひっそりと佇むまさに隠れ家。既に時間をオーバーしていたので、すぐ近くの大板根森林温泉には帰路に寄る事にした。璞真山居は、全てここで採れた野菜や魚などの有機栽培、天然素材を使った料理を出してくれる。連日連夜の中華料理で疲れた客人達の胃の調子を考えて、1年前の蛍のシーズンに来たこの店を思いついた。足下には墨の匂いが香ばしい火鉢を用意してくれた。台湾風・精進料理と表現すべきか。その味は、我々日本人にはホッとするようなお袋の味である。山芋や各種山菜キノコ、20年間塩漬けした大根「老菜脯」(台湾では有名な幻の珍味)や、山で採れた蜂蜜を酢で割った飲み物など、全てにこだわりをもった11品を堪能した。我々以外には、1組の客しかいなかった。さて、お茶を頂いて帰るというときに、突然僧侶達が店内にやってきた。その中の一人が我々が日本人だとしり、片言の日本語で話しかけて来た。どうも高野山関係の方々らしい。いっしょにお茶を楽しもうと店主の待つ茶室に誘われた。一人は、シンガポールから来た流暢な英語を話す修行僧で、重鎮らしきは身分の高い台湾の密宗僧侶だということを後で知った。店主が入れたお茶は、幻の「桂花茶」だった。そして、店主から六杯のお茶を以下の蘊蓄とともに頂いた。

茶 茶璞真山居

とても50歳過ぎには見えない ご主人。

一碗喉吻潤(一碗喉吻うるおう)

兩碗破孤悶(兩碗孤悶を破す)

三碗搜枯腸(三碗枯腸をさぐる)、唯有文字五千卷(唯だ有り文字五千卷)

四碗發輕汗(四碗輕汗を發す)、平生不平事(平生不平の事)、盡向毛孔散(盡く毛孔に向かって散る)

五碗肌骨輕(五碗肌骨清し)

六碗通仙靈(六碗仙靈に通ず);七碗喫不得也(七碗吃するを得ざるなり)、唯覺兩腋習習清風生(唯だ覺ゆ兩腋習習として清風の生ずるを)!

後日調べたとことろ、中国・唐代中期の詩人、盧仝(ろ・どう) の「盧仝集」1巻からの引用だと分かった。夜の12時近くまで、お茶と茶器、書と墨絵を語る高尚な会となった。今回は、宇宙を語ることは控えておいた。今回の予想外の出会いは、自分の中で進展しそうな何かを感じた。

2011/02/17 09:30 | abe | No Comments