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新しい年になって、速いものでもう10日を過ぎ…
時間の進む速度というものを
いつもより少しだけ速いと感じているのは
今年が10年越しになる個展を控えているからでしょうか.
今回は撮る側、撮られる側…その位置関係というか
「写真」というたったひとつのもので意識や気持ちが通い合ったとき
その作品がどうなっていくのか…その辺りを書き留めておきたいと思います.
こちらに掲載した作品は、2010年に渋谷ギャラリー・ルデコにて開催された
「白黒ショーVol.2」に参加させていただいたときの出展作で
そのとき各参加作家が個別の展示とは別に、統一サイズにした一点を
900mm×900mmのエリアに508cm×610cmのフレームを1点配置した
いわば「メイン」となる作品にこのカットを出展させていただきました.
(ちょっと解りづらい書き方になってしまいました…)
…というもののこの一枚、「白黒ショー」出展作とはちょっと違います
実はこの一枚は作品に使用したカットの別カットになっていて
トーンや黒の沈み具合など、細かな違いがあります…
実質的な出展作品はこちらになります
違いが解るでしょうか…空のトーンなどは冒頭の感じが好きなのですが
被写体さんの表情と、雰囲気などからすごく迷いつつ、下の方をセレクトしたわけです.
そして発表から3年が過ぎて、もうこの作品は公開済みの
完結した一枚になったと、僕自身思っていました.
ですが、この作品を被写体さんの方ですごく気に入ってもらえて
最近になってご自身のブログやネット上のスペースに
新規に公開していただけることになりました.
そしてそこでこの作品を観られた方々からの
新たな感想や声が、僕のところへも届くようになって
一度既に完結したはずのこの作品は、
撮った僕自身でさえ予想しなかったこと…
眠っていたフォルダから新たにトーンを整える作業を加えて
こうしてあらためての公開へと至ったのでした.
作品にはそれぞれ物語があるものだけれど、
この作品の物語には、まだ先があったということでしょうか.
僕自身としては、撮影した写真…今ではデータという形式ですが
それは撮られた側、データをお渡しした被写体さんにも
レタッチや加工、公開、二次使用など、何も制限はかけていません.
それは写真というものが絵画などとは違って「写した」ものであるからには
それが再び「写され」たり、また「写った人」自身の手によって
姿形を変えることはむしろ嬉しいことだと僕は思っています.
大切なことはそうした加工、変調などにしっかりと耐えうる作品であるかどうか
その器となる作品をしっかりさせておくことこそが
「この作品、こちらで公開したいですが…」
そんな想い、気持ちに応えられるものだと思うのです.
今回は被写体さんの方で、facebookやブログなどに
この作品を公開したいという気持ちがあって
そこから伝わってきたものたちが、
この作品にもう一度僕の手が入る余地を与えてくれたのだと思います.
そして被写体さんサイドの動きに呼応して
僕もまたこうしてリファインしたものを公開する…
撮る側、撮られる側…互いの意識が通い合いつつ
作品そのものもまた変化していくこと…
今回のことで僕は写真一枚…
それは必ずしも撮影した写真家が伝えたいものだけが
唯一、絶対ではなくて、撮られた立場からの視点や
伝えたいものもきっとあるのだと、教えてもらえたような気持ちです.
写された側からの創作、公開..そして反応…
なんだかすごく素敵なことだと思えますよね
そうしてその一枚はそれぞれにとって
特別で、大切な作品になっていくのだと思います.