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2012/12/21

先週末、急に理学部長から呼び出しの電話がかかります。

“調査行くよ~”

訳が分からないまま、理学部長宅へ。

 

現在、ゴロンタロ大学の校舎を増築する計画があること。

すでに2つの場所を仮押さえであること。

2013年着工・2015年完成予定で、予算はUSD : 350,000,000であること。

様々な情報を教えてもらいました。

この上で、どちらの場所が地質学的に建設に向いているかを調査してほしい、とのことでした。

『えぇー、今からー』とか『一緒に行くって言ったって、理学部長の専門は数学じゃーん』とか『そもそも候補地選ぶ時に言ってよー』とか、こういう叫びはそっと心の奥底に…。

1人では不安なのでもう1人の地質の先生も巻き込んで、いざ出発です。

 

候補地①・Bone Bolango

街から離れているにも関わらず、道路はすでにしっかりと整備されていました。

この場所は現在の校舎からも比較的近く、車で15分程。

建設予定地にはまだ現地の方の家があり、生活していらっしゃいました。

川を探して岩石チェックを行います。

もう1人の地質の先生と“あーでもない、こーでもない”と議論します。

同行した理学部長にも説明します。

大まかな岩石は火成岩の一種である花崗岩でした。

 

候補地②・Haya-Haya

この場所は空港の近くにある、土地です。

空港が近くにあるので、市内までの道路は完全に舗装済です。

しかし、現在の校舎から45分ほどと、ちょっと遠いのですね。

この場所は少しでも雨が降ると水没すると有名な場所。

調査前夜が大雨だったため、まだ少し水たまりなどが…

ここの岩石は堆積岩の一種である石灰岩一色。

近くにはゴロンタロ州を東西に真っ二つにする断層も走っている。

 

私たちの結論は出た。

石灰岩も年代が古ければ強度も強い。

しかし、Haya-Hayaの石灰岩は年代が若すぎる上に大変やわらかかったのだ。

2か所で選ぶなら、断然Bone Bolangoである。

 

しかしまぁ、ボーリング調査することなく、この“調査と言う名の観察”だけで校舎建築場所を決めてしまうのは、非常に怖い。

川に下りてもせいぜい2~3mの地層や構造が分かるだけである。

実は今週の月曜日にゴロンタロから150kmほど離れた場所でM6.1の地震が起きた。

津波が発生したり死傷者が出たわけではなかったが、ゴロンタロも長時間揺れ続けた。

何と、7月に完成したばかりの新校舎の事務所にヒビが!

建築過程を知っているわけでもないし、全工程を見ていたわけでもない。

しかし、非常に不安な作り方であることは知っている。

日本のように基盤工事(というのか?)徹底的にはやらない。

だからこそ、場所が選べるのであれば断層から遠い場所を選択する。

 

さて、この調査がなぜこんなにも急だったか。

さる20日、場所を決定するにあたっての会議がゴロンタロ州政府の関係者と行われるというのだ。

調査結果を報告し、私たちの結論を提示する。

もちろんこの会議の前にゴロンタロ大学学長にも報告し、了解を得ていた。

発表と同時に浴びせられる罵声の数々…

“ふざけんなー”

“日本人連れてきたからってなんだー”

“2008年に仮押さえのサインしといて今更地質学的に無理とか意味不明ー”

“俺たち(政府方)もHaya-Hayaに移動予定だったのにー”

“じゃ、1つの学部だけでいいからこっちにも建ててくれー”

同席していたゴロンタロ大学学長もなだめようとしますが、一向に収拾できません。

学長が呆れてしまい、“ここは日本人パワーだ”と意味の分からないフリと同時にマイクを渡されます。

上記の2つ目の罵声に、少々居心地の悪さを覚えつつも発言します。

“ぜひ、思い出してほしい。2004年にスマトラ、2011年に日本を襲った津波を。原因は地震であった。犠牲者は津波だけでなく地震によっても出た。大学と言う場所は勉強する場所である。この意味は、ゴロンタロ大学が生徒や教師など大勢の人の命を預かっている、ということにもなる。Bone Bolangoにも地質的に不安な要素はたくさんある。政治的な考えを捨てて、ぜひ考えてほしい。どちらが最善の場所なのでしょうか”

インドネシア語での発言にどこまで私の気持ちが伝わったかは分からない。

英語での発言ならばまだ意味は通じただろうが、相手が英語が出来るか分からなかったから、インドネシア語を使った。

正直、このような大きな建物を建築するのであれば、もっとちゃんとした調査をやってほしい。

しかし、予算的や技術的に難しいとなれば、残る道は1つ。

場所を決定するにあたっての、判断材料を与えて議論するに限る。

政治的な圧力には負けたくなかった、と言えばそうかもしれない。

ただ、日本同様インドネシアも地震大国であり、この脅威を常に頭に置いておかなければいけないのだ。

建設技術も、地震対策など少しでも取り入れることが出来ることは実践してほしいし、切にそう願っている。

 

と言うわけで、ゴロンタロ大学の校舎予定地はBone Bolangoに決定した。

2012/12/21 06:53 | sayaka | No Comments