« | Home | »

2012/10/28

個人的には、ジャグリングを知らない人にこそ見てほしい、
1年に1回、ステージの上で行われるライバルと自分自身との闘いであるJJFのチャンピオンシップ。

大道芸やサーカスでは見ることのできない技の応酬。
無名のジャグラーたち(勿論ジャグラーの間では有名な人も出ますが)が、自分の限界ぎりぎりの技術を競い合う本当に燃える大会なのです。

本日は、youtubeに掲載されている動画から3本紹介させていただきます。

●男性部門準優勝文田さんによる、バウンスボールのパフォーマンス。

まずは、このさわやかさ!! そして完成度の高さ!!
技をやっている時の足が動かず、びしっと止まっているところとか、技の危なげなさが本当に素晴らしいです。
構成的に素晴らしいのが2:22~2:46の連続で技が変化していって、最終的に3つのボールを跳ねさせている間に一回転して5つのボールに戻すところですね。これが「溜めておいて」「大技で爆発させる」という構成上のテクニックです。
4:53~5:16のアグレッシブな3ボールの箇所もいいですね。単発でも充分に難しい技の数々をアグレッシブに長時間繰り出し、きっちりと最後に締める。最後、締めの技は首の後ろで跳ねたボールをキャッチしているのですが、これは、キャッチの瞬間はボールが見えていないでしょう。この技を大技の連続の最後に持ってくるその果敢さも素晴らしいです。
難易度のハイライトとしてはその直後、3:03~3:13の、
5つの跳ねている状態から上に向かって投げる→「97531」という技から間髪おかずに跳ねる状態に戻す(ジャグリング用語で「トランジッション」というやつ)の部分です。97531単発でも相当難しい筈ですが、直後に技を切り替える、というのは技が安定しているからこそできる代物。難しい技のトランジッションは、決めた後に「うお……」と盛りあがろうとしているところに、さらに驚きが加わるので本当に盛り上がるんですね。
(「97531」というのは、5つのボールが空中で交差をし、綺麗に投げると、5つのボールがまったく同じタイミングで放物線の頂点にくるという、難易度の高さもさることながら、非常に綺麗な技です。ボールが増えると名前も変わっていきますが、だいたい似たような技の名前になります。このことについて話すとまた長くなるのでまた今度……)
最後の7ボールを跳ねさせるのも、日本人ではなかなかいない、「フォースバウンス」という、床に強くたたきつけるタイプのジャグり方で、ただ単純に7つのボールをやるものとは比較のできない難しさです。

●チーム部門優勝、けんとかいとのクラブパッシングのパフォーマンス。

小学生&中学生のコンビですが、まず注目してほしいのは、彼らの足元です。
やっている時にびしっとしていて、ぶれないんですよ。彼らの演技がスタイリッシュに見えるのはまずこの部分だと思うんですね。
決めポーズもそうで、一つ一つがびしっ、びしっとしている。
プロになってくるとこの辺りも意識できるようになってくるんですが、ただ普通にジャグリングを趣味でやっているだけの人たちでは意識できない部分です。
2:55で兄、3:30で弟が5本のクラブを投げていますが、5つのクラブと言うのは今クラブをやっているジャグラーの「到達点」みたいな部分ですから、会場がざわつくのも無理はありません。しかも、彼らの凄いところは、それにさらに一技+αをしている部分。「普通の」クラブジャグラーでは到達できないところまで技術レベルが達しています。
4:53~の白いクラブが1本加わり、5:06あたりのところで、会場がざわついていますね。それでは、白いクラブを追ってみてください。
通常は、クラブパスと言うのは右手から相手の左手に渡るものなのですが、弟から兄にクラブが渡った直後に、兄から弟に渡るクラブが左手から右手に向かって投げられています。ようは「逆回転」の状態だったわけですね。しばらくその状態で続いていましたが、元に戻ります。6本ではお遊びでやることもあったりしますが、7本ではなかなか……(笑)(僕も言われて気づきましたよ……)客席がジャグラーのみのステージならではという感じの演出ですね。余裕を感じます(笑)
難易度のハイライトは5:38~の8クラブですね。最初のスタートは、自分の手元で回転させるクラブと相手に向かって投げるクラブを両方とも1回転で投げている……つまり、1回転というのは高さが低いですから、時間的余裕が少ない状態でスタートしています。その次に2回転に回転数をあげて高くなりますが、その時にお兄ちゃんがビハインド・ザ・バック(背中の後ろ)を3連発でやっています。
8本以上になると、クラブパスは本当に難しくなるのですが、それを軽々とやってしまうところにポテンシャルの高さを感じます。
クラブの本数をだんだん増やしていく4:44~の2曲目のルーチン以降、まったく床に落とすミス(ドロップ)がないところも、会場のボルテージを大きく上げる理由の一つになっていますね。

●男性部門優勝のやなぞーさんのパフォーマンス。

見ていて、「重力仕事しろ」と言いたくなるパフォーマンスです。
勿論、ボールに仕掛けがあるわけではなく、普通にジャグラーが使う、よく転がるボールです。
ためしに、手元にある何かのボールを、手首やひじの上で止めてみてください。普通の人では3秒も持たずに転がってしまうことでしょう。
ご存じのとおり、どんなボールでも、地面に落とせばある程度弾むものですから、空中に投げられたボールが肘の上や頭の上など、ありえないところでぴたりと止まるのは本当に物理的な法則を無視しているのではないかと思ってしまいます。
本人いわく、「失敗のリスクなんかないですよ」と言っていますが、それはやなぞーさんが、これらの技を呼吸をするようにできるようになっているからだけであって、常人では真似できるものではありません。
1:30~、頭にボールを乗せた状態で座る→寝る→寝た状態で一技 ここら辺の「そこでそれをやるかー!?」というのが日本人ジャグラーが好きな技なんですね(笑) 何も、寝た状態でこの技をやらんでも良かったと思うのですが、きっと思いついてしまったんでしょうね(笑) 思いついたらやらなければいけないというのがジャグラーの性(サガ)であります。
もう一つ、僕の好きなのが2:24~の技です。普通、こめかみからこめかみのロールと言うのは、おでこをつかって行うものなのですが、これを、おでこの側では無くて頭の後ろを転がして逆のこめかみ側に転がしています。当然ボールは見えていないでしょう。(っていうか、通常技をやっている時も見えているものなんでしょうか……)
あまりにも意のままにボールが動きますから、最後、3つのボールを終えて、床に3つのボールが落ちる時に、魔法が解けたような錯覚すら生まれます。
回転したり、スポーティーな技というものは無いのですが、これもまたジャグリングの一つの姿。優勝お見事でした!

2012/10/28 10:58 | ryuhan | No Comments