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2012/10/02

 

見つめられると、

今でも幸せが手をすり抜けそう、

今だけは恋にならないと、

遠いあの夏に仕舞い込んだ、

雨の香りが好きと言っていた、

傘をささずに歩いた海辺、

言葉にすることさえ、

手にすることさえ、

愛おし過ぎる遠いあの日、

揺れる心は手に取るように感じていたはずなのに、

言葉にすると消えて行きそうで、

2人で足跡を残したあの海辺、

雨の香りが好きだと言っていた、

蒼い空に夢を探し、

風を求めて彷徨った海原、

どこまでも交わることの無かった2人の足跡、

ただ遠いあの夏に仕舞い込んだ、

森の中から雨が上がり、

静かに森を見つめていると、

優しい雨の香りが森の中に目を覚まし、

仕舞い込んだ想い出を届けてくれる、

どこまでも風と一緒に飛べると夢見ていた、

君のハングライダーが雨を避けるように、

今でも翼を休めている、

きっとあの先に求める何かがあると信じ、

どこまでも風と一緒に海を旅した僕のディンギーが、

森の雨に打たれて、

静かに眠っている、

どこまでも交わることの無かった2人の足跡は、

あの日からずっと続いている、

赤く色ずき始めた落ち葉は、

あの夏の夕日、

いつか仕舞い込んだ2人の遠い想い出を届けてくれる、

あの夏の雨の香りを思い出す、

どこまでも、

どこまでも、

想い出を旅して、

遠い昔に仕舞い込んだ、

雨の香りの忘れ物を。

2012/10/02 01:40 | watanabe | No Comments