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2012/09/27

台風の前はいつもカラッとしてて気持ちがよいものですね。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

先日、アメリカからの来客がありました。ちょっと前に私がfacebookにアップした秋刀魚の七輪炭火焼の写真を見て、わざわざアメリカ西海岸から遊びにきてくれたのです。

・・・というのは冗談ですが、半分ホント。アメリカからマレーシアに帰省する途中下車をわざわざ計画してくれたのです。七輪炭火の秋刀魚のために・・・。あきれるくらい食いしん坊な人たちです・・・。

彼ら、ビリー&ビビアンとは、エジプトのダハブを旅行中に知り合い、いっしょにスノーケリングをしました。彼らはイタリアのオーガニック農家に修行に来ているとかで、美味しいもの好きな私と意気投合。アメリカ系マレー人とのことで、私がホームステイしていたマレーシアの田舎の話をしたり、オーガニック食の話をしたり・・・短かったけど楽しい時間を共に過ごしました。それももう5年くらい前の話。ずっと連絡もとりあっていなかったのに、こんな形で再会できたのも、すべては秋刀魚が引き寄せてくれた縁です。

最寄り駅で待ち合わせしたのですが、3歳児の載ったベビーカーとバックパックという出で立ち。長期海外旅行をしているとは思えない身軽さです。コインロッカーに荷物を預けたら?とか、タクシーで行こうか?とか、いろいろ気を使ってみたのですが、「べつに、歩けるよ」。そのままの姿で10分歩いて我が家へ到着。すごい体力です。ビリーは52歳、ビビアンは47歳。とてもそんな歳に見えません。どこからこんなパワーが出て来るのでしょうか・・・。

自宅のテラスの七輪で、いろいろな野菜と秋刀魚を焼きます。七輪を囲みながら、その暖かい火を見つめながら、静かな時間が流れました。この5年を埋める話です。

彼らは私が出会った当時、WWOOFというボランティア・プログラムで、イタリアのオーガニック農家に滞在中でした。WWOOF(Worldwide Opportunities on Organic Farms)というのは、オーガニック・ファームで住み込み労働する代わりに、知識やノウハウを提供してもらうグローバルな仕組みです。日本にもあるようですね。http://www.wwoofjapan.com/main/

アメリカ西海岸で一生懸命働き、一財を成した後でしたから、その後の人生は故郷のマレーシアでオーガニック・ファームをやろうと考えていたのだそうです。ところが息子が生まれ、その子がひどいアレルギーで、とりあえず住み慣れた西海岸に戻って来たのだとか。

そして居を構えたのはカリフォルニア州のナパ。ナパといえば、ワインで有名なところ。気候が穏やかで、太陽がさんさんと降り注ぎ、食べ物がおいしいところなのだそうです。息子のアレルギーを治すため、そして育児を楽しむため、自分たちで畑をやり、農作物を作り、ほどほどに働き、のんびり生活をしたい・・・そんな希望を叶えるため、ナパという地を選んだのだとか。

ちなみに彼らは、様々なワイン農家で働いた結果、ワインを飲まなくなってしまったそうです(笑)。たとえオーガニックと謳っていても、あれやこれやと様々なものを人工的に入れる現場を経験し、結果的にじぶんでワインを作って友人に振る舞うことはあっても、じぶんで飲むのは「味見程度」になってしまったとか。なので、この晩はお酒は入らなかったのですが、ふしぎともの足りない感じはしません。

荷物の中からごそごそと取り出し、自家製のドライ・トマト、ドライ・アップルとミントティーを「今日の御礼に」とプレゼントしてくれました。ナパの太陽をいっぱいに浴び、エネルギーに満ちたものばかりです。

そして息子エリオのアレルギーは、ほとんど治ったようです。3歳の彼は、目に力があり、生き生きとしている。

こんどは私の話が始まります。オランダでの土地性アレルギーで体を壊し、家族を放ったらかしにして、生まれ育った地に帰ってきてしまった・・・という話を、まったくとがめることなく「当然」と受け止めてくれるのは、やはり同じようにアレルギーに苦しんだ経験からでしょうか。

そして話は美味しいものの話に戻り、秋刀魚はオメガ3の宝庫だから健康にすごくいいとか、冷蔵庫や冷凍庫の発明が食事を不味くしてしまったとか。オーガニックでなくとも旬のものがいちばんヘルシーであるとか、七輪炭火はもっとも理想的な調理法だとか。

英語で”Japanese Oven” とよばれる七輪は、マレーシアのお母さんがよく料理に使っているのだそうです。兵隊さんが戦時中に持ち込んだのでしょうか。

「アメリカ式にバーベキューやると、コンロの保温性が悪いから、箱一杯の炭を使っちゃうけど、七輪だとほんのわずかで長持ちするんだよね。世界で最もエコロジカルで、美味しい調理法だよ。」と、七輪の素晴らしさを既に知っていらっしゃる彼ら。

そうなんですよね。熱よりも遠赤外線で火を通すから、肉も魚も野菜も「半生」くらいでちょうどいい。七輪じたいの保温性が高いので、「赤々と燃える炎」ではなく、「仄かに暖かい遠赤外線」でじっくり時間をかけて調理することができる。つまり割と低い温度で食材に火を通すことができるんです。香りの視点から解説すると、熱に弱いフレーバー(芳香成分)を大量に失うことなく、火を通す事ができる。

ガスコンロ。電気オーブン。電子レンジ。IHヒーター。現代には、いろんな熱伝導の方法が存在します。それぞれが、違う科学の原理を応用していますので、同じものを調理してもできあがりの味が違ってきます。鍋の材質も、銅、アルミ、鉄、ステンレスなどから選べる時代です。組み合わせとしては無限大。便利な世の中になりました。しかし、それによって、美味しさが向上しているのかというと、疑問です。

小学校時代の飯ごうすいさんやキャンプを経験している方はどなたも、「炭火で炊いた白米ほど美味しいものはない・・・」ということをご存知のはず。よく考えてみると、おそらく戦前あたりまでは、それが当たり前の時代でした。そっちの方が贅沢のように、私には思えます。

ビリー達のマレーシアの実家では、お母さんが七輪を普段遣いしているようです。ふつうに台所に置いてあり、コンロとして常用してるんですね。素晴らしいです。私もそうしようかしら(笑)・・・。

とにかく、七輪炭火礼賛! 秋刀魚万歳! そんな晩になりました。地球を股にかける私達、またいつどこで会えるかはわかりませんが、きっとどこかで会える気がしています。この友情や絆を、なんと表現したらよいのか迷います。言葉も国も違っても、美味しいものを、美味しく料理して、その一瞬の時を共有する。ありがたいことに、わたしにはそういう気持ちのよい友人が、世界中にたくさんいるように思います。

彼らが去ったあともしばらく、彼らがナパから運んで来てくれたいい気が部屋を巡っていました。私も近い将来、彼らのような生活をしたいな! どこがいいかしら・・・

 





2012/09/27 02:38 | maki | No Comments