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2012/09/22

※今日は一般向けではなくかなりジャグラー向けの内容です。
Junk Stage記事の方向性とは違う記事になりますがご容赦を。

昨夜、JJF(日本最大級のジャグリングの祭典)のチャンピオンシップの結果発表が行われまして、
JJFチャンピオンシップを目指している人にとっては、悲喜交々(こもごも)な夜だったのではないでしょうか。

今年残念だった人も、これからJJFに向けて仕上げをしなくてはならない人たちも、
今一度、観客にどう自分の演技が期待されているのかということを見返してみてください。

また、観客として客席で声援を送る僕も、
「どういう演技が『よし』とされるのか」ということをまた見直してみたいと思います。

僕が勝手に思っていることですが、
ジャグリングのコンテストの出場者は、大きくわけると3つに分けられます。

アイディア系……「独創性」を重視したジャグリング。
アーティスト系……「芸術性」を重視したジャグリング。
アスリート系……「技術力・難易度」を重視したジャグリング。

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<アイディア系のジャグラーの勝負どころ>
・「その手があったか!」という会場にいる多くのジャグラーの盲点をつく技、演出を行えること。
・「こいつあほやろ!!」と思わせるようなネタを仕込んでおき、全ての演技の終了後、終了後に強烈なインパクトを残せること。

JJFにおいては「希少性」という評価ポイントがあるのですが、その項目を意識した点数の取り方です。
ただ、希少な技は技術点に繋がり、ネタは演出点に繋がるため、他のジャグリングのコンテストでも大いに評価されるスタイルです。

しかし、ただ単純に「他の人がやっていない技をやる」だけではこの得点には結びつきません。
いくら新しい表現方法を用いたとしても、その「技」や「演出」がジャグラーの想像の範疇を超えていないのでは、たいした評価にはならないでしょう。
テーマは「期待を上回る裏切り」です。とにかく、会場中のジャグラーを、「やられた!!!」という気持ちにさせ、
推理小説やパズルゲームのように、客席にいるジャグラーとの知恵比べに勝つこと。これがアイディア系ジャグラーの勝利条件です。

全編「見たこともない技のみ」で構成するのは既に開拓しつくされたと思われるジャグリングの畑ではかなり厳しいと思いますが、
逆に、もしそのようなことが可能ならば、観客を大爆笑の渦に巻き込んだ後にきっちり入賞、ということになるでしょう。

<アーティスト系ジャグラーの勝負どころ>
・その人の世界観にどっぷりとはまり込める音楽、衣装、動きを作りこんでおくこと。
・ミスによる演技の中断がないこと。

「演出点」を重視した点の取り方です。JJFでは「演出点」は「エンターティメント性」と「構成力」のカテゴリがありますが、
これら二つの採点については、定義があいまいな気がしますので、
演者の雰囲気とか動きの綺麗さとか、そのあたりが評価されるものと考えていただければと思います。
あとは、演技者自身に対する評価という感じでしょうか。

アーティスト系ジャグラーは、一挙手一投足に気を使い、全ての動きが繋がっているように動かきますが、
この動きが綺麗でなければこのカテゴリで点数を得ることは難しいですね。
JJFでいうと、制限時間である6分間の間に世界観を作りこむことは非常に困難であると考えられますが、上手いジャグラーだとその間にちゃんと観客を引き込むことが出来ます。

ミスが出ると演技が崩れてしまいますから、演技中に行う技の難易度もやや抑え気味に作られることが多く、
それ故、一つのミスが致命傷になってしまいがちです。
逆に、ミスが少なければ当然技術点カテゴリの「完成度」も高くなります。

ジャグリングを極めてしまっている人がこの域に到達してしまうことが多いのですが、勝つためには
観客を「おおっ!」「さすが!!」と言わせることが出来るようなサプライズが数個必要になってくるでしょう。
それが技術的に難易度の高い技なのか、ジャグラーの盲点を突くアイディア系の技なのかは場合に依りますが、
これができると、総合的に得点が高くなるため、
このカテゴリに分類されるジャグラーは大会では上位に食い込むことが多くなると思っています。

<アスリート系ジャグラーの勝負どころ>
・大技の数の多さ。そしてそれを成功させること。
・ルーティンの構成はしっかりしておくこと。

アイディア系のジャグラーが「知力で勝負」ならば、こちらは「真っ向から勝負」です。
超高難易度の技をガッシンガッシン決めて行き、観客席のジャグラーどもを力任せにねじ伏せる、
それがアスリート系ジャグラーです。

多分日本においてはたいていのジャグラーがこのカテゴリに分類されると思いますが、
それゆえに、ルーチン中に組み込まれる「大技」のレベルは他のジャグラーを圧倒している必要があると思います。
JJFクラスの大会になると、中途半端なレベルの技では通じません。

「技術点」と呼ばれるカテゴリは、JJFでは「難易度」と「完成度」のカテゴリがあります。
「難易度」は成功させた技の高度さ。「完成度」は失敗が少ないことが評価の対象になります。

それをわかった上で敢えて言いますが、アスリート系ジャグラーは失敗を恐れる必要はありません。

そりゃあもちろん失敗は少ないに越したことはないのですが、
アスリート系のジャグラーは「まあ、あのスタイルならあのドロップ数は許されるよね~」という風に言われることが多いので、失敗したとしても気にする必要はありません。
それより、観客はあなたが失敗したその技が成功しているところを見たいのです。

ここで、「演出などいらない」と書きたいところではあるのですが、最低限の演出への意識は必要です。
とはいっても、アーティスト系のジャグラーのように動きを綺麗にする、というわけではなくて、演技中に含まれる技の順番に意味を持たせることが重要になってきます。
例えばですが、ルーチンが単調では「次に大技が来る」ということを観客がわかってしまいますから、
最初はリズムよくやったとしても、後半戦は「いつ大技が飛び出てくるかわからない」ような風にするとか、
「怒涛のごとく大技を連発する」パートが必要でしょう。
演技を止めて拍手をもらうのか、それとも特に技を止めずに演技の最中に拍手をもらうのかなどの緩急のつけかたというものもあります。
ここら辺のセンスのよさもアスリート系ジャグラーの腕の見せ所です。

特にキャラクター付けを行わない、「中立のキャラクター」でパフォーマンスをやる人が多いと思うのですが、
演技中のキャラクター付けなんかも成功していたとしたら、さらに「エンターティメント性」まで得点が上がります。
(僕に言わせると、「中立」は「中立」で、味があると思いますし、むしろガンガン系のジャグリングは中立のキャラクターで行われるべきと思いますが。審査員には「何故中立のキャラクターを選んだのか?」というところまで汲み取ってもらえるとありがたいんですけれど、ルール的にはそういうことはしないんでしょうねぇ。)

失敗が多くなってしまうと、やはり上位入賞は難しくなってしまうのですが、
終わった後に「俺はあいつが入賞すると思ったんだよな~」という感想を多く持たれる、
「真の勝者」になるジャグラーが一番多いのがこのタイプのジャグラーです。
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こう書いてみると気づくのですが、
演出寄りのパフォーマーには「大技」「完成度」といった技術点を、
技術寄りのパフォーマーには「構成」「キャラクター」といった演出点を期待してしまう、ということこそが
まさに「総合力で強いジャグラーが入賞する」というところなのかなぁと思います。

今回JJFの予選に通過できなかった人は、
自分の求められている期待がどのようなものかを見返し、
さらにもう一皮むけてまた別のコンテストを目指していただきたいと思っております。

2012/09/22 01:03 | ryuhan | No Comments