« 考える音楽 | Home | ライターへの手紙。vol.14 こばやしさん/momo »
江戸時代の遊女にとって商売道具だった匂いと香り。以前、〜髪の毛編〜を書きましたが、今回は核心の、〜体臭編〜でございます。
みなさん、中国の伝説的な姫、楊貴妃のことはご存知ですか? 中国四大美女のひとりに数えられます。楊貴妃は香しい体臭を持っていたと言われ、長年に渡り玄宗皇帝に溺愛されました。
一説には「ワキガ症であった」とも言われる楊貴妃。お風呂に入ったらバスタブに彼女のニオイが残ったというのですから、中東系の血を引いた女性だったのではないかと言われています。
そして、「体身香」なる丸薬を飲用していたとも言われます。おそらく見かけは正露丸のようなものでしょう。いろいろなソースの情報を調べ、展覧会向けに調合したことがあります。
原材料:丁字、霍香、零陵香、青木香、甘松香、白芷、当帰、桂心、檳榔子、麝香、梅肉、蜂蜜
味ですか? 決して美味しいものではありませんよ。しかし、これを飲み続けると体臭が和らぐというので、オランダ人のパートナーに飲ませようと思いましたがちょっと怒られそうで止めました・・・ 笑。原材料のほとんどが漢方の生薬なので、薬効も期待できそう。このようなものを実際に遊女が使っていたかどうかは、文献からは見つけることができませんでしたが、きっとそうだったであろうと想像する事は難くありません。
私が見つけた江戸風俗の本には、お歯黒に使うフシノコ(五倍子粉)を水に溶いて腋につけ、消臭剤にしたとのことでした。これを実際にオランダの美術館でのある体験型展覧会で展示して、「ご自由にどうぞ」としましたところ、本気になってつけてるオランダ人が出て来たりして、かわいかったです。右端の粉です。
カラダのニオイをきれいにしたところで、こんどは体に魅惑的な香りを纏わせる作業です。
遊女聞香図 〜宮川長治〜
胸のあたりがふっくらしているでしょう? ここに香炉を入れて、ひっそりと香りを楽しんでいるのです。もちろん胸に香りを薫きしめながら。
そして、着物の裾にも香炉が見え隠れしています。こちらはそう、アソコに香りづけしているんです。
使われた香りは、たいていの場合、伽羅とか沈香でした。降り続く雨の森のような、木と土の深い香りがします。催淫性のある、助情的な・・・。以前、これを髪の毛に薫きしめたと書きましたが、同じものです。
現代はワシントン条約対象の希少な香木ですので、これを現代でやろうとしたらけっこうな贅沢になります。でも不可能ではないです。持ってますので、いちど試してみたいかたはご相談下さい 笑。
うっとりしている様が美しいですよね。大好きな絵です。