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このコラム記事は、
私、三増巳也が、
こまの曲芸の仕事に必ず必要な、
曲独楽の材料である木と、
小道具に加工する素材の
和紙、竹などの手工業の結晶である
和傘や煙管、竹竿、蒸籠などを探して歩いた、
東京の浅草、浅草橋、蔵前、
埼玉県の小鹿野町、
神奈川県の小田原市穴部、真鶴町、
そして愛媛県の内子町へ、
東京生まれの芸人の私が、
経験して考える事です!
私が一番最近聞いて頂きたい事だから
何回か続けて書きたいと思います。
まず、その壱として、
ト ざぁい とぉざあ~い
さてさて、毎度の事ながら、
一番目立つ事柄に隠れた多くの大事な芯の部分というのは、
取り上げられる機会は
日常の普通の場面では
ほとんどありませんし
何か大問題が持ち上がった時に
あぶりだされて気が付くというものですね…
だから
わかってはいるのだけれど
そういう大切な芯にあたることが
大きな問題を解決することの陰に
また隠れてしまって
やがて
また見えなくなっちゃう…
もしかしたら
災害が結構多かった日本の歴史って
そのくりかえしだったのではないでしょうか…
今は 江戸以前から積み上げてきた風土を活かした技術や
手作業で繰り返し作られてきた生活の品が
本当に見られなくなってきました
どこの地方でも同じ問題を抱えている様子ですが
職業として成り立たなくなったそういう物事を
趣味の愛好家が支えているというのが
日本の姿になりつつあるんじゃないでしょうか
稲ワラとかイグサ、コウゾ、ミツマタ、麻、麦ワラなど
かつては循環が決まっていたのに
今ではその流れが完全に切れています
こういう農業や山林の土地利用の文化が無くなると
曲独楽のように
それを活かしてやってきた事が消滅していくのです
私が 結婚するので 東京から愛媛の内子大瀬に移住してから
曲独楽を 始められた
やなぎ南玉お兄さんが
そういう曲独楽の持つ問題点を一つ
あぶりだしてくれました
曲独楽の材料は木だけなのか…ということです
最近 アクリルなどの加工に高い技術を持つ会社の
木田工業さんに依頼して
透明な着色アクリルを使用した曲独楽を製作して
寄席で公開されました
さっそく木田工業さんの担当の方に
メールを送って
その挑戦に 感動したことをお伝えしましたら
お返事を頂きました
木材との素材の違いに ご苦労されて 完成していく様子が
ブログで公開されています
きっかけ
http://www.kida-k.com/topics/detail.php?aid=478&d=2011
製作
http://www.kida-k.com/topics/detail.php?aid=483&d=2011
完成
http://www.kida-k.com/topics/detail.php?aid=484&d=2012
これは 2011年から2012年の3月までの出来事でした
私がこのことを知ったのは
2011年の夏頃だったので
まだ こちらに来てから 南玉お兄さんと話もしていないのに
先にコラム記事で取り上げられなかったのですが
先日ようやく 国立演芸場の演芸資料展
「曲独楽の世界」展が始まったことで
国立の展示側のご担当の方と南玉お兄さんに連絡ができたので…
そうです
曲独楽の素材を変えちゃったら いいじゃないの
ってことなのですが
これがこの その壱の本題なのです
曲独楽を作る側の 原材料である 木の
調達が 1990年頃のバブル崩壊を境に
どんどん困難になっていた事は
ほとんど 一般の人からは 見ることのできない問題でした
曲独楽師だけが悩んでいたわけではないけれど
「目に一番付きやすい」存在である芸人の
大衆芸でさえも 「伝統芸」の仲間入りをしないと
維持ができなくなったこと
それをダイレクトに 感じたのは
まさにそのとき入門した
私が その流れの中にあったからなのでした
通常 曲独楽だけではなく 木を材料として物を作るとき
木工の経験のある方は 詳しいと思いますが
私の聞きかじりで御免なさいね
数年に渡って 乾燥管理をした木材を使用して 製作作業に入りますから
(最近は 機械乾燥で数ヶ月程度が普通かな)
東京の地価が高い地域で相応の倉庫を持っていて
しかも 製作作業には 大量の木屑とろくろの大音量が出ますので
その対策が出来ていなくては 木工は出来ないという事です
友人で キャリア30年 今も木工アトリエを 新宿に構えているOさんも
経済的負担の大きさが年々多くなる事
たまらずに後輩数人と共同のアトリエにし 頑張って踏みとどまっていますが
この状況は これからも 変わらないと 木工の方はみなさんおっしゃいます
木を使う場合でも その背景にまでは 普通は心が向かないものなのです
木の利用を 適切にすることで
里山の荒廃を防ぎ 現地の人の流出を抑え
国産材を辛抱強く支援してくれる 都市部の人を少しでも増やしていかないと
日本の地方の山間部の環境は 荒れていきます
私は 芸を持って
(東京では 寄席を中心に大変可愛がって頂いて 大感謝なのですが)
やはり そういう 地方の山林を支えている人の
黙して語らない 自分の山への愛情や
庭を愛するように 目の前の木や川などの 土地を
心地よく 自然体に管理し続けてきた 我慢強さに
本当の意味で 敬意を表したいと
曲独楽を精一杯 抱えて 東京から
この愛媛県 内子町の大瀬という山間部に移住しました
今まで
当事者の私でさえも何となくしか 感じられなかった 資源活用の 日本の里山の知恵
その恩恵に 日本の大衆芸も
例外なく あずかっているのだという
強い強い思想のようなものが これからは必要なのだという事
曲独楽の消滅の危機をひしひしと感じながら
それを言葉にして 訴えてきた三増 紋也師
私は その事を ここで活字にして みなさんに見ていただき
広く考えていただきたいのです
無くなっていいものもあるとは 思います
伝統に固執しすぎたら 大衆芸は つまらないとも考えます
しかしながら
曲独楽の木材利用の伝統は
日本の里山の資源活用の文化であり
地方の中山間部の 暮らしの風景の一つでもあり
山の人の心の投影であること
その点は 間違ってはいないのじゃないでしょうか
そして
曲独楽は コマの現象から考えると 地球の自転を投影した遊びであり
木材の堅牢さ 自由さ 軽さ その魅力の集大成でもあり
日本刀などを代表とした 鉄利用の日本文化の 小さな結晶でもあり
手工芸品の技術の博覧会のような存在の芸だと
私は考えます
南玉お兄さんが考えてくれた 曲独楽の素材をアクリルにしてみる
という冒険を元にしたコラムになりました
曲独楽の目線を変えて 曲独楽の魅力を高める活動も
こんな風にこれから まだまだ紹介していきます
では また (・o^)