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「音が外れる」「音を外す」という言葉に比べて、「音が当たる」という言葉は、聞かれる機会は少ないように思います。
正しい音を出して当然ですから、正しい音が出たことを取り立てて表現する必要はないわけです。
しかし、トランペット(他の金管楽器も含みますが)吹きの間では、「音が当たる」という言葉は、時々登場します。
なぜかというと…。
言い訳がましいですが、トランペットはそもそも音を外しやすい楽器であり、また、高い音になればなるほど「当てる」ことが難しくなっていく楽器だから、なんですね。
高い音をばしばし当てると、「音が当たってるねぇ〜」と言われたりするんです。
ところでなぜ、音を外しやすいか、ということを改めて説明させていただきますね。
これまでも何回か説明させていただいてきましたが、トランペットにおける運指のパターンは8通り。しかし、音は1オクターブのなかに13音あります(ドからドまで半音階で数えると)。
仮に3オクターブの音域が出せるとするなら、37種類の音程を、8種類の運指だけで演奏することになります(って、前回お話させていただいたとおり、3番だけ単独で押すという運指はほとんど使われないので、実際使われる運指は7種類です)。
同じ運指で数種類もの音を出せるのが、トランペットの特徴というわけです。
例をあげますね。
3つのピストンを何も押さない状態(オープン)で出せる音は、低いほうの音から
ド、ソ、ド、ミ、ソ、シ♭、ド…、という具合です。
この例で言うと、低いドの音と、その上のソの音は、まだ間違う率は低いです(ない話しでもないんですけどね)。
しかし、高いほうのシ♭とドなどは、結構間違いやすいですね。音が近いですから。
ただ、ミスとしての被害の大きさは、状況によっても変わってきます。
ドを出そうとしてシ♭が出てしまうケースで考えると。
その瞬間の曲のコードが、C7だったとしたら、シ♭はまさにセブンスの音にあたるので(コードの構成音の1つであるので)、ちょっとカッコ良い音が出ちゃった、くらいの被害ですみます。ソロを吹いているときだったら、むしろカッコいいフレーズになる可能性もあります。
ところが、その瞬間のコードがAm7だったとしたら…。
Am7の構成音は、ラ、ド、ミ、ソ…。
そこでシ♭を出してしまったら…。大事件です…。
ミストーンを出してしまうプレッシャーと常に闘いながら演奏しているトランペッターは、その意味では勇者です。阪急ブレーブスです。
さて、この例でも分かるとおり、高い音になるほど、同じ運指で出せる音と音との間隔が狭くなっていくので、高い音ほど、「当てる」こと自体が難しくなっていく、というわけなんですね。
ちなみに、トランペットにおいては、高い音を出せること自体、すなわち、テクニックです。
初心者で出せる音域は、大体1オクターブ半くらい。1、2年練習して2オクターブくらい出せるようになる感じでしょうか。そこからさらに音域を広げていくのには、相当な訓練が必要だと思います。人にもよるんですが…。簡単に(簡単そうに)音域が広がっていく人も、希にはいますけど…(唇や歯並びが、生まれもってトランペッター向きだった場合)。
プロなら3オクターブくらい出せると思います。
ぼくも元気があれば、3オクターブ出せなくもないです。しかし、演奏の本番で使える音域、と考えると、今のところはまだ2オクターブ半くらいでしょうか(多少、話しを盛って…)。
高い音をびゅんびゅん出せて、ばしばし当てられる人は『ハイノート・ヒッター』と呼ばれます。
ハイノート・ヒッター…。
甘美な響きです…。憧れます。強そうです。天才打者っぽいです。
というわけで、トランペットって、一か八か、みたいなところがある楽器なんですよね。
ぼくの人生を象徴しているようでもあります(負けが込んでますが…)。
そんなこんなで、ぼくは今日もラッパを吹いて暮らしています。