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2012/07/12

地球の舳先から vol.246
イラン編 vol.6


(ヤズド、鳥葬の塔。小高い丘の上が、葬儀場。)

エスファハン最後の駆け足観光でなんとかモスクを見られたので、悔いなく一路ヤズドへ。
テヘラン~エスファハンが公称6時間のところ4.5時間で着いたので
3時間が公称のエスファハン~ヤズドは2時間強だろうと予想していたが、なぜか4時間半かかった。途中で、Naeinという街に寄ってトイレ休憩がてらモスクを見たり、メロンを食べたりしたからだろう。

ヤズドは「1日8時間働き、8時間遊び、8時間寝ろ」と教えたゾロアスター教の聖地。
一大観光地は、「鳥葬の塔(ダフメ)」と呼ばれるかつて教典に従って鳥に死体を食わせる「鳥葬」を行っていた場所だ。
敷地にはかつてのお墓や、葬儀までの諸々の施設が残っているということで
「遺跡」に行くつもりで向かったものの、警備員の一人すらおらず入場料もない。
狭い入り口から入ると左右に山筒型をした大きな塔というか城のような建物が目に入る。
コースなんてものはないので、なんとなく人の足跡がならした道を山登りよろしく登る。
着くとがらんどうな中に大きな穴。ここが死体を入れるスペースなのだろう。
まわりから見えないようにという配慮からか、石の壁は高く作られている。

 
(左:丘から臨む葬儀場の施設。 右:鳥葬の塔の中。)

一通り見学し穴から出ると、5人組のイラン人男性がスイカを抱えて登ってくるのが見えた。
「ゾロアスター教徒かな」
「まあ、そうでしょうな、こんなとこまでわざわざ来るんだから」
と、M氏と会話する。ゾロアスター教徒にとっては聖地なのだ。
またしても人の家に土足で上がり込んでいるような気まずさが勝ってしまう。
イラン人はじろじろと我々を見ながら、ついにM氏に話しかけ、2人は何事か盛り上がっていた。
M氏が「私たちは仏教徒だ」と堂々というのを聞いて思わずわたしは振り返る。
(いや、宗教色の強い国では、「無宗教」というと逆に同じ人間と見なされないくらい
 信じられないことだったりもするので仏教徒と言っておくのは得策なのも確かだ)
イラン人は「オー、ブディスト、ブディスト」的なことを言いながらM氏と固い握手を交わしている。
…なんなんだ。
「あなた方は?」「ムスリム。」という彼らの「当たり前ジャン」的な返答にわたしはズッコケる。

「スイカを食べろ」とその場で切ったスイカを2切れもらう。
一体テヘランから、何をしに来たんだ。鳥葬の塔(登るのはそれなりに体力も要る)に
グループで、スイカとナイフを持って登り、スイカを食べて帰っていった。
帰り際にもう一度、2切れのスイカをもらい、われわれは休憩がてら座り込んで食べた。

 
(ゾロアスター教寺院。別名「拝火教」の通り、中には、1500年間燃やし続け一度も絶えたことのない聖なる火がある。)

それから、コンパクトに観光地と市街中心部がまとまったヤズドの街を回る。
ゾロアスター教寺院や庭園、12エマーム霊廟、アレクサンダー大王の牢獄など、およそ「地球の歩き方」に載っている観光スポットをほぼ全制覇したあと、「ズールハーネ」なるものを見に行った。
ズールハーネは、なんというか闘技場とスポーツジムの中間のようなところ。
太鼓と歌でコーランを演奏する人のリズムで、こん棒や弓を振りまわしては
力自慢たちが集ってトレーニングをしているのだが、場所によっては見学もできる。
もちろん宗教的な要素がはじまりではあり、神のため、来るべき日に備えるという思想に基づき、英雄のスポーツと考えられているという。
これがまた興味深く、70代ともみえるおじいちゃんまでいたりする。

 
(左:ヤズド名物、風採り塔。涼しい空気を室内に送り込む。 右:アレクサンダー大王の牢獄)

 
(左:バザールも入っている広場。 右:ズールハーネで運動するおじさん達。)

この写真の広場の1階はバザールになっていて、スプライトを買ったらなぜかまけてくれた。
御礼を言うと、太ったウェイターは超ドヤ顔でウィンクをして去って行った。

ひと味変わったイラン体験をしたあと、久々のまともな食事にありつく。
このあたりには多い、ハンマーム(公衆浴場)を改装したレストラン。
だいたいこの日は、イラン人のポールも含めて皆熱射病にやられており、
ひとり早期回復したわたしは魚や肉団子や茄子の煮物といった料理を食べ続けた。

 
(ハンマームを改築した確かに温泉の中みたいなレストラン。)

その後、夜にふたたびマスジェデ・ジャーメを見に行く。
ヤズドのシンボルで、イランで最も高いメナーレ(塔)があり、イスラム建築の最高傑作にも数えられている。
サーサーン朝時代には国教だったゾロアスター教神殿の跡地に建てられたものらしい。
ブルーに浮かび上がった高い塔はまさに幻想的。
こうして、深夜2時に出発する夜行列車を待ちながら、ヤズドの夜は更けていった。

つづく

2012/07/12 12:00 | yuu | No Comments