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意外と聞かれて困るのが、「ご専門は何ですか?」という問いだったりする。
法律や経済、あるいは、建築や機械といった学問分野と違って、
自分の専攻する「社会科学」というのは、酷く捉えどころがない。
というより、「社会科学」という学問自体が、学際的な領域を指し示すもので、
まるっと法学や経済学を含むものでもある。
そもそも、この世の学問(広義の科学)を大きく3つに分類すると、
「自然科学」、「人文科学」、そして「社会科学」に分けるのが通例のよう。
これらはそれぞれ、自然、人間、そして社会を対象とした学問ということになる。
つまり、専門が「社会科学」というのは、あまりにも広過ぎる分野を指しており、
「もう少し具体的には…?」と続けて聞かれることもしばしば。
ちなみに、「社会学(Sociology)」と「社会科学(Social Science)」は、
似て非なるモノ。
もっと言えば、「社会科学」の一分野で、社会現象やそのメカニズム、
あるいは、社会ネットワークや組織を扱う学問が「社会学」である。
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自分の、というか、ウチの研究室の研究対象は、「情報」なのだが、
これもまた酷く漠とした言葉である。
「情報」を扱う学問と聞いたとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、
「情報通信技術」に関する学問、つまり、「情報工学」のことではないだろうか。
おそらく、バリバリのエンジニアやプログラマの姿を想像して、
数学が得意な人の集まるド理系分野、と思っている人が少なくないように思う。
ただ、自分が属しているのは、どちらかというと文系寄り。
「情報」と人間社会との関わりや、その利活用といった内容の研究を行う、
「情報学」や「情報科学」と呼ばれる領域である。
ここで、また言葉の微妙なニュアンスの違いが出てくるわけだが、
先に述べたように、「社会学」と「社会科学」のケースでは、
「社会科学」の中に「社会学」が含まれるのだが、
それとは真逆で、「情報学」の中に「情報科学」が含まれる、
というのが、どうやら「情報」の分野では一般的のようだ。
実にややこしい。
さらに、「情報学」の中で、より社会科学的な分野を取り扱う学問体系としては、
「社会情報学」あるいは「情報社会学」という学問分野が存在する。
もはや、何がなんだか。
前者は、社会をキーとした「情報学」、後者は、情報をキーとした「社会学」、
という出自の違いを示しているのだが、結果的に、扱っている内容は酷似している。
が、学者という人種は、どうやらナワバリ意識が非常に強いようで、
なかなか、「じゃあ一緒にやりましょう」とはならないのが現状のようだ。
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最初に戻ると、自分の属しているのは、「社会科学」に分類される一分野、
であることはまず間違いない。
その中で、「情報」を扱う学問であることも疑う余地が無いのだが、
「社会情報学」と断言してしまえば、「情報社会学」と相容れず、
逆もまた然り、という、あちらを立てればこちらが立たず状態に陥っている。
結局、「ご専門は何ですか?」という問いに対しては、
「ブータンの情報化です」と、学問分野ではなく研究テーマを回答して、
ややお茶を濁したようになるわけで…
いい加減、依って立つところを定めた方がいいような気もしているのだが、
それすら揺らいでいる自分が、なんとも自分らしいような気もする。